未完了の仕事を抱えすぎると、フローが減ってしまうぞという研究
忙しくて未完了の仕事が山積みになってしまうと、早く仕事をこなさなければというプレッシャーを感じたり、思うように仕事が進められないストレスを感じたりと、メンタル面で悪い効果が出てしまいます。そして、ツァイガルニク効果という現象があって、未完了の中途半端な状態になっている仕事は、他の仕事をしていても心の中で気になってしまって、集中を阻害してしまうことが知られています。
そこで本稿では、
- 未完了の仕事を多く抱えてしまうと、フロー体験も減ってしまうのではないか?
ということを調べてくれたルール大学の研究を見てみましょう。
未完了の仕事とフロー
フローとは極限の集中状態のことで、時間があっという間に過ぎたと感じくらい一つのことに没頭することを言います。フローを発揮できれば、当然パフォーマンスが向上できますので、仕事や勉強、スポーツなど様々な場面でフロー体験は重要になります。
しかし、フローのような極限の集中状態は、メールの着信音が聞こえただけで失われてしまったり、頭の中で気になることがモヤモヤしているだけで阻害されてしまいます。そのため、未完了の仕事が多いと、それが頭の中で気になってしまって、フロー体験も減ってしまう可能性があるわけですね。
そこでルール大学の研究では、社会人85人と学生64人を対象に、未完了の仕事の量とフローの関係の測定を行っています。測定は三つのタイミングで行っていて
- 仕事が終わった直後に、仕事中のフローを測定
- 夜寝る前に、仕事の後のプライベートの時間のフローを測定
- 翌日起きた時に、幸福感を測定
という感じになっています。
未完了の仕事は、仕事後のプライベートの時間でも気になってしまう可能性があるので、その点もしっかりと測定がされています。さらに、フローで一つの活動に没頭することは幸福感の向上にもつながることが分かっているため、未完了の仕事と幸福感の影響まで分析対象となっています。
結果1:未完了の仕事とフロー体験
早速、未完了の仕事とフローの関係の分析結果を見てみると、
- 未完了の仕事が多いほど、仕事中のフローは減ってしまっていた(−0.40)
- 未完了の仕事が多いほど、仕事後のプライベートの時間のフローも減ってしまっていた(−0.27)
ということ。
やはり未完了の仕事を多く抱えてしまうほど、集中力は散漫になって、フロー体験は減ってしまうようです。しかも、未完了の仕事はプライベートの時間のフローまで減らしてしまうので、休日も仕事のことが気になってしまうような人は注意が必要かもしれません。
さらに、もう少し深く分析した結果から面白いことも分かっていて
- 未完了の仕事は少量〜中量の場合には悪い影響はあまりなかった
- 未完了の仕事が多量になってしまうとフローがガクッと低下した
ということ。もともとフローは簡単な仕事では起きにくく、挑戦しがいのある適度なストレスの仕事で起きやすくなっています。そのため、少量〜中量程度の未完了の仕事は適度なストレスの範囲内で問題にならないようですね。
結論をまとめると、未完了の仕事を多く抱えすぎるとフローがガクッと低下してしまうので注意!ということですね。
結果2:未完了の仕事と幸福感
次に未完了の仕事と幸福感の関係を見てみると、
- 未完了の仕事がフローを減らした結果、ポジティブな感情が減り(−0.21)、ネガティブな感情が増えて(−0.21)、幸福感は低下していた
- 未完了の仕事はフローを介さない直接の効果としても、ネガティブな感情を増やして(−0.30)、幸福感を低下していた
ということ。
未完了の仕事を抱えすぎることは幸福感にとっても良くない結果になっています。特に未完了の仕事はネガティブな感情を増やしてしまうようなので、仕事漬けでメンタルが悪化しないように注意しましょう。
まとめ
本稿では「未完了の仕事とフロー」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 未完了の仕事を多く抱えすぎると、仕事中のフローも、プライベートの時間のフローも低下してしまう
- 未完了の仕事が増えると、幸福感まで低下してしまう
ということ。
未完了の仕事の悪い影響の対処法としては
- 仕事を細かいサブタスクに分割して、一つ一つ完了させるようにする
- メールの通知などの集中の阻害要因を排除する
- 集中時間をあらかじめスケジュールしておく
- 中途半端な状態で仕事が途切れないように、仕事の開始タイミングに気をつける
ということを気をつけてみると良いでしょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Thieves of Flow: How Unfinished Tasks at Work are Related to Flow Experience and Wellbeing