大きな災難を経験した人は、後の人生でリスクを取りやすくなるのか?の研究
大きな成功をする人は、その道中で多くの困難や大失敗を経験しているものです。過去の経験はその人の後々の判断や思考を変えるもので、死にかけた経験をした人がもっと人生を大切にしようと考えを改めた話はよく聞きますよね。
そこで本稿は、
- 過去に大きな災難を経験した人は、後々の人生でリスクを取りやすくなるのか?それとも取りにくくなるのか?
を分析してくれた研究成果を見てみましょう。
災難の経験とリスク・テイキング
災害の経験が後々リスキーな行動を増やしてしまうのかついては、どちらの可能性も考えられます。例えば、ものすごい災害を経験して深刻な被害を受けた場合は、警戒心が高まってリスキーな行動は減るかもしれません。一方で、災害を経験したけど被害も少なく乗り越えられた場合には、リスクを乗り越える自信がついてリスキーな行動が増えるかもしれません。
そこで、シンガポールマネージメント大学の研究では、1992年〜2012年にS&P1500に入っていた企業のCEO1,508名を対象にして、
- 過去に災難を経験したCEOほど、会社の経営判断がリスキーな傾向があるのか?
を分析しています。
過去の災難としては、ハリケーンなどの災害の被害に遭ったとかに加えて、経済危機の経験なども測定がされています。災難の経験具合によって、CEOは次の3つのグループに分類がされていて
- 災害の経験がないCEO
- 災害の経験があるが被害が深刻でないCEO
- 災害の経験があり深刻な被害を受けたCEO
となっています。これらの3つのグループで会社の経営状況やCEOの判断のリスクがどのように変わるのかを分析したわけですね。
結果1:深刻な被害でない災害経験のCEO
早速結果を見てみると、まず災害の経験があるが深刻でないCEOの場合は、災害の経験がない人と比べて
- 資金の借り入れによるレバレッジが3.3%高かった
- 他の企業を買収しようとすることが6.1%多かった
- 会社の株価の変動が3.73%大きかった
- S&Pが評価する会社の信用格付けで低い評価を得ることが7.1%多かった
ということ。
どの指標を見ても深刻な被害でない災害を経験したCEOはリスクを取りやすい傾向を示しています。深刻な被害もないため、災害を乗り越えた経験が自信を強めて、リスキーな行動を取りやすくしているのかもしれませんね。
結果2:深刻な被害の災害経験のCEO
一方で、深刻な被疑の災害を経験したCEOは、災害の経験がない人と比べて
- 資金の借り入れによるレバレッジが3.5%低かった
(災害の経験があるが深刻でないCEOと比べて6.5%低かった) - 他の企業を買収しようとすることが8.1%少なかった
(災害の経験があるが深刻でないCEOと比べて14.2%低かった) - 会社の株価の変動が3.61%小さかった
(災害の経験があるが深刻でないCEOと比べて7%低かった) - S&Pが評価する会社の信用格付けで低い評価を得ることが8.8%少なかった
(災害の経験があるが深刻でないCEOと比べて15.9%低かった)
ということ。
深刻な被害の災害を経験したCEOでは、逆にリスクを取りにくく保守的になっていることが分かります。やはり、災害から深刻な被害を受けた場合には、リスクを取ることを恐れるようになり、安全を取りやすくなるようです。
まとめ
本稿では「大きな災難の経験とリスクの取りやすさ」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 大きな災難を経験しても、深刻な被害がなければ、後々リスキーな行動を取りやすくなる
- 大きな災難を軽減して、深刻な被害を受けた場合には、後々安全な行動を取りやすくなる
ということ。
この関係はグラフにすると逆U字型になっていて、災難を経験するほどリスクは取りやすくなっていくけど、災難の経験がある程度深刻になってくると、それ以上は逆にリスキーな行動が減っていくということですね。あまりリスクが取れなくて石橋を叩いて渡るタイプの人は、深刻な被害のない範囲で少しずつリスクを取る経験を積むと良いかもしれませんね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]