注意のコントロールが上手い人ほど、共感能力も高いのか?
共感とは相手の立場に立って考えたり、相手の感情を感じ取ってあげること。共感能力が高い人ほど、他人に親切にできたり、グループの一体感を高めてくれるため、社会の中で生きていくためには大切な能力の一つです。ダニエル・ゴールマン博士が提唱するEQ(心の知能指数)の研究などからも共感能力の大切さが分かります。
しかし、世の中には共感能力が高くて他人を励ますのが上手い人もいれば、共感能力が低くて相手を傷つけることを言ってしまう人もいます。そこで本稿では
- 共感能力の高さに注意のコントロール能力がどう関係しているのか?
を調べてくれたオーストラリア国立大学の研究を見てみましょう。
2種類の共感能力と2種類の注意力
共感能力は相手の立場に立って相手の感情を察してあげる能力のことですが、これには2つの要素が関連しています。
- 認知的な共感
相手がどんな立場で、どのような考えを持っていて、どう感じているのかを理解してあげること - 感情的な共感
相手が感じている感情を自分も感じて共有してあげること
この違いは意外と重要で、相手の立場や考えは理解できるけど気持ちはよく分からないとか、相手の状況はよく分からないけど気持ちは理解できるとか、それぞれが別々に作用することがあるんですね。
次に、注意力とは特定の物事に注意を向ける能力のことで、これにも2つの種類があります。
- 注意の切り替え能力
一つのことから次のことへど素早く注意を切り替える能力 - 注意の集中力
周りの関係ない物事に阻害されずに、一つのものに注意を集中する能力
周りの状況の変化を見て柔軟に動かなければいけないときは、周りへの注意をサッと切り替える能力が大切になり、複雑な問題に取り組むときは注意を集中させることが大切になりわけですね。
それでオーストラリア国立大学の研究では、2種類の注意力が同じく2種類の共感能力にどのように関係しているのかを、299人を対象に測定しています。
結果1:注意の切り替えと共感能力
最初に注意の切り替え能力と共感能力の関係を見てみると
- 注意の切り替え能力が高い人ほど、認知的な共感能力が高かった(0.29)
- 注意の切り替え能力は、感情的な共感能力とは関係なかった(−0.13)
ということ。
注意の切り替え能力が高い人ほど、相手の考えや感情の理解する能力が高いということで、注意を切り替えが上手いと周りの人の状況をよく注意して見れているのかもしれませんね。
結果2:注意の集中力と共感能力
続いて注意の集中力と共感能力の関係を見てみると、
- 注意の集中力は、認知的な共感能力とは関係なかった(0.08)
- 注意の集中力が高い人ほど、感情的な共感能力が低い傾向があった(−0.26)
ということ。
残念なことに、一つの物事に集中するのが上手い人は、相手の感情に共感してあげる能力が低いという結果になっています。一つのことに集中するタイプの人は、周りの人にかまうよりも、自分の世界に没頭するのが好きなのかもしれませんね。
まとめ
本稿では「注意のコントロール能力と共感能力」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 注意を切り替える能力が高い人ほど、認知的な共感能力が高い
- 注意の集中力が高い人ほど、感情的な共感能力が低い
ということ。
相手に共感してあげるには、まずは相手の状況を注意して見てあげることが大切なのかもしれませんね。リーダーであったり、営業の人、サービス系の人など、共感能力が特に大切な仕事もあると思います。そういう人たちは、チームの状況であったり、顧客のことをまずはよく見てると良いでしょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]