マインドフルネスの訓練で、スポーツのフローは高まるのか?
スポーツ選手は自分の競技やその練習に集中することが大切です。しかし、試合への不安や、体の痛み、周囲の雑音、敗北による挫折など、スポーツ選手の気を逸らしてしまうものはたくさんあります。一流のスポーツ選手となると、卓越した集中力のイメージがありますが、実はスポーツ選手全体を見ると、うつや不安、摂食障害、薬物の依存などが普通の人と比べて多い傾向があるんですね。
そこで本稿では、
- マインドフルネスのトレーニングをすることで、スポーツ選手のフロー(集中力)を高めることができるのか?
を実験してくれた研究を見てみましょう。
マインドフルネスとフロー
フロー状態とは時間の感覚がなくなるくらい没頭する高い集中状態のこと。集中して作業をしていたらあっという間に時間が過ぎていたことってありますよね。
フローに入るためには、周囲のノイズや心の中の雑念に惑わされずに、目の前の活動に集中する必要があります。これに役立つのがマインドフルネスで、瞑想などで雑念を追い払って”今ここ”に集中する訓練をすれば、スポーツでもフローに入りやすくなることが期待できます。
マインドフルネスの訓練として有名なマインドフルネス・ストレス低減法が有名なのですが、実はこれをスポーツ向けに改良した方法も発明されています。この方法は全4回のセッションになっていて、大まかな内容としては
- 1回目
一粒のレーズンを集中して味わう訓練(30分)
呼吸に集中する訓練(15分)
体の各部位の感覚に順番に集中する訓練(30分) - 2回目
体の各部位の感覚に順番に集中する訓練(45分)
座り瞑想(15分)
ヨガ(45分) - 3回目
ヨガ(45分)
座り瞑想の応用(45分)
歩行瞑想(10分) - 4回目
座り瞑想(30分)
体の各部位の感覚に順番に集中する訓練(45分)
歩行瞑想(10分)
となっています。
マインドフルネスの訓練とスポーツのフロー
上記のマインドフルネス訓練の効果を確かめるために、中国の研究では21名の野球プレイヤーを集めて実験を行なっています。これらのプレイヤーは実際に訓練を実施して、訓練の前後の変化として
- スポーツへの不安は減ったか?
- スポーツのフローは向上したか?
- 摂食障害の傾向は改善したか?
- 睡眠の質は改善したか?
などを測定したんですね。
結果
早速スポーツ向けのマインドフルネス訓練の効果を見てみると、
- スポーツの競争への不安が低減していた
- スポーツのフローが向上していた
- 摂食障害の傾向が低下していた
- 体型や体重に関する心配も低下していた
- 睡眠の質も改善していた
という良い結果が得られています。
元々マインドフルネスは不安などのメンタル面の改善に良いことがわかっていました。今回の研究結果では、マインドフルネスの訓練はスポーツ選手にとっても役立つもので、競技への集中力を高めてくれることが確認できたわけですね。
しかも、マインドフルネスの訓練が終わってから1ヶ月後のフォローアップの結果を見てみると、
- 上記のマインドフルネスの効果は、訓練から1ヶ月経った後でも継続していた
ということも分かっています。
マインドフルネスの効果は長期的に続くようなので、興味がある人は一度ガッツリと取り組んでみるのも良いでしょう。
まとめ
本稿では「マインドフルネスでスポーツのフローは高まるのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 4回のマインドフルネスの訓練でスポーツのフローが高まった
- マインドフルネスの訓練には、競技への不安の低減や摂食障害の改善、睡眠の質の改善といった効果もあった
- マインドフルネスの効果は、訓練から1ヶ月経っても残っていた
ということ。
何かに集中したいけど、なかなか集中がキープできないという人は、マインドフルネスの訓練を実践してみましょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Mindfulness training enhances flow state and mental health among baseball players in Taiwan