ストレスがかかるとリスクを取りやすくなってしまうのか?の研究
人の判断や選択はそのときの心理状態に左右されて変わるものです。例えば、将来どうなるか分からず不安な時には安全な選択を取りやすかったり、興味津々で好奇心が高まっているときは多少危険な選択も受け入れやすかったりということがあるんですね。
その中でも今回注目するのは”ストレスとリスクのある選択”について。高いストレスを感じているときほど危険な運転をしてしまうなど、ストレスがリスクの高い選択を増やす可能性があるんですね。
そこで本稿では、
- 社会的ストレスが高まると、人はリスクを取りやすくなるのか?
について実験してくれた研究を見ていきましょう。
実験:社会的ストレスとリスクの選択
この研究では、87人の学生を集めて、
- ストレスを与えるグループ
- ストレスを与えないグループ
の2つのグループ分けをしています。ストレスを与えるグループにどのような種類のストレスを与えたのかというと、
- 実験の最後には一人ずつプレゼンをしてもらって、その内容が録画されて専門家に評価されます
と伝えて、プレゼンをするプレッシャーや、専門から自分の能力を評価されるストレスを与えたんですね。
そして各グループでは、どれだけリスクを取るのかを測るためにバルーンゲームを行っています。このゲームでは、画面に風船が映し出されていて、風船にポンプを押して風船に空気を送るたびにお金がもらえる仕組みになっています。ただし、風船が割れてしまった場合には、もらえるお金は0になってしまうので、リスクをとってどこまでポンプを押すかが勝負になるわけですね。
そしてこの研究では各個人の社交不安の程度も測定しています。ストレスはその人の性格や考え方の影響を受けるもので、プレゼンしろと言われたときに高い不安を感じるか、あまり不安を感じないのかは人によって変わってきます。そのため、プレゼンや他人から評価されるような社交面での不安をどれだけ感じやすいのか測定して、社会的ストレスの影響に個人差が出るのかも分析したんですね。
結果:社交不安が高い人のリスク選択
まず最初に社交不安が高い人の結果を見てみると、
- 社交不安が高い人は、プレゼンのストレスをより強く感じていた
- 社交不安が高い人は、ストレスをかけられても、リスクの低い選択をしやすい傾向があった
- 社交不安が高い人は、ストレスをかけられると、選択のスピードが遅くなっていて、慎重に選択している傾向があった
となっています。
社交不安が高い人は、社交ストレスを感じても、やけになったりすることがなく、逆により慎重になる傾向があるということですね。
結果2:社交不安が低い人のリスク選択
次に社交不安が低い人の結果を見てみると、
- 社交不安が低い人は、ストレスをかけられると、リスクを取りやすくなる傾向があった
- 結果としてリスクを取ることでゲームで獲得する金額は増えていた
- 選択のスピードはストレスなしの場合と変わらなかった
ということ。
やはり社交不安の個人差がストレス時の行動に影響するようで、社交不安が低い人はストレスが高いときにリスクを取りやすくなるということ。今回の実験では、リスクをとって風船の爆発のギリギリを攻めることで、より大きな金額の獲得に役立っています。
まとめ
本稿では「ストレスとリスクの選択」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 高いストレスを感じているときには、リスクを取りやすくなってしまうことがある
- ただし、これにはストレスの種類とその人の性格や考え方の違いも影響するもの
- 社交ストレスの場合には、社交不安が高い人は慎重でリスクを取りにくく、社交不安が低い人はストレスによりリスクを取りやすくなってしまう
ということ。
ストレスでリスクの高い選択をして失敗した経験があるのであれば、そのときにどんなタイプのストレスを感じていたのかを思い出せば、自分の弱点が特定できるかもしれませんね。リスクは取るべきときに適切に取ることが大切なので、変なリスクは取らない様には注意しましょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]