クリティカル・シンキングはIQの高さ以上に、人生を良くしてくれるという研究
「あの人は頭がいいね」というとき、頭の良さには様々なニュアンスが含まれます。勉強ができる人は頭がいいですし、仕事の問題を解決できる人も頭がいいです。記憶力が高い人も頭が良ければ、買い物上手な人も頭がいいです。
IQという知能指数を図る指標もありますが、これは図形の展開やパターン認識といった知能テストを元にした頭の良さで、実生活の頭の良さとは少し違う感じがあることも否めません。人間の知能は多面的なので、単純に一つのモノサシで測ることができないわけですね。
そこで本稿では、
- クリティカル・シンキングができる人は、実生活面の知能も高いのでは?
ということを調べてくれたカリフォルニア州立大学らの研究を見てみましょう。
クリティカル・シンキングとは何か?
クリティカル・シンキングとは、日本語では批判的思考とも言います。
批判的思考とは情報を鵜呑みにするのでなく、
- その情報が本当に正しいのかを疑う
- その情報の根拠を検討する
- その情報の他の解釈を検討する
- 一方の情報に偏ることなく、反論なども調べて正しい判断をする
といった感じで情報を疑う思考のことです。簡単に言えば、情報の根拠を吟味して正しい判断をできる思考のことですね。
最近では情報社会となり、インターネットやテレビニュースなどで様々な情報が手軽に入手できるようになりました。クリティカル・シンキングがあれば、どの情報が正しくて、自分がどう判断するべきかと、偽の情報に騙されることなく判断できるわけですね。また、お金の判断にしろ、転職などの人生の判断にしろ、きちんと情報を吟味して判断することができれば、人生の質も向上していくものでしょう。
クリティカル・シンキングと生活知能
そこでカリフォルニア州立大学の研究では244人を対象にして
- クリティカル・シンキングが高い人ほど、人生の失敗が少ないのか?
ということを分析しています。
この研究では人生の失敗として様々な項目が取り上げられています。その中のいくつかを取り上げてみると
- 新しい服を買ったけど、結局着なかったことがある
- 目覚ましをかけ忘れて遅刻したことがある
- 仕事を1週間以内に辞めたことがある
- 交通事故を起こしてしまったことがある
- 間違った電車やバスに乗ってしまったことがある
- 1000ドル以上のクレジットカードの負債がある
- 食べ過ぎたり、不健康なものをよく食べてしまう
- ギャンブルで1万円以上失ったことがある
- 離婚したことがある
といった感じで、人生の中で起こりうる様々な失敗が含まれています。
ちなみにIQの効果も測定するために、この研究ではクリティカル・シンキングとIQの両方が測定されています。
結果:クリティカル・シンキングと人生の失敗
早速分析の結果を見てみると、
- クリティカル・シンキングが高い人は、人生の失敗が少ない傾向があった(β=−0.323)
- IQが高い人も、人生の失敗は少ない傾向があった(β=−0.158)
ということ。クリティカル・シンキングとIQの両方とも、より失敗の少ない人生のつながっていて、これらが生活面の知能と関係していることがわかります。しかし、数値を比較してみれば分かるように、IQよりもクリティカル・シンキングの方が、人生の失敗の軽減に役立っているという結果になっています。
なので、知能テストのような現実離れしたIQを身につけるよりも、論理的に情報を分析して正しい判断をする思考能力を身につける方が、人生にとっては大きなプラスとなるということですね。
まとめ
本稿では「クリティカル・シンキングと人生の質」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- クリティカル・シンキングが高い人は、IQが高い人以上に、判断の失敗が少ない良い人生を送っている
ということ。
クリティカル・シンキングは仕事などでも役に立つスキルなので、人生の失敗を防ぐだけでなく、キャリアアップなど人生の成功にもつながるものでしょう。IQは遺伝的な要因の影響を受ける部分もありますが、クリティカル・シンキングはきちんとトレーニングすれば身につけることができるとも言われていますので、人生の質を高めたい人はしっかりと情報を分析するトレーニングをしていきましょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]