強みを活かすほど、仕事は天職だと思えるようになるという研究
「今の仕事が自分にとっての天職だ」と思えることは、何よりも仕事にとってのモチベーションになります。
仕事は人生の多くの時間を費やすことですから、意味の感じられない仕事を給料のために我慢して行うよりも、大きな意義を感じられる仕事に人生を捧げる方が、ずっと幸福感にとっても大切なことです。
しかし、天職が何かは人によって違うもので、天職とは「その人の価値観や能力にピッタリとあった仕事」とも言い換えることができます。
そこで本稿では、
- 仕事で自分の強みを活かせば、仕事を天職だと思えるようになるのか?
について調べてくれたチューリッヒ大学の研究を見てみましょう。
強みの活用と天職
チューリッヒ大学の研究では、152名の参加者を集めて、仕事で強みを活用する実験を行っています。
この実験では、参加者はVIA-ISという240問の質問からなる強みの診断テストを受けます。その結果としては
- 審美眼、勇敢さ、創造性、好奇心、公平さ、寛容さ、感謝、誠実さ、希望、慎み深さ、ユーモア、柔軟性、親切心、リーダーシップ、愛情、向学心、対局感、忍耐力、思慮深さ、自制心、社会的知能、スピリチュアリティ、チームワーク、熱意
の24項目の強みが、ランキング形式で自分に合ったものがどれか判定されるようになっています。
(VIA-IS 強みテストで検索すれば実施できるので興味がある人はやってみてください)
そしてこの実験では、参加者は自分の強みを理解した後で次の2つのグループに分けられます。
- 強みの活用グループ
4週間の間、自分の上位4つの強みを仕事で活用するように、新しい行動のトレーニングを行うグループ
- 強みの認識グループ
自分が強みを発揮して成功した体験4つを書き出して、4週間の間、その体験を読んで思い出すトレーニングを行うグループ
そして、各グループでは、
- 自分の仕事への転職感
- 人生の満足感
の変化が測定されていて、①実験の開始前、②4週間のトレーニング後、③トレーニングから3ヶ月経過後、④トレーニングから6ヶ月経過後までフォローアップがされています。
結果:強みの活用で転職感は高まるのか?
早速実験の結果を見てみると、まず天職感の変化として次のグラフが得られています。
上のグラフが強みの活用グループ、下のグラフが強みの認識グループの結果となっています。このグラフから見てわかることは、
- 強みの活用グループでは、トレーニング期間に天職感がグッと向上して、6ヶ月後でもそれを維持したままであった
- 強みの認識グループでは、トレーニングをしても天職感は変わらず、ずっと初期値のままだった
ということ。
ちなみにトレーニングから6ヶ月後の時点での効果量はd=0.46ということで、効果量としてもそこそこの値が得られています。
結果2:人生の満足感はどうか?
続いて、人生の満足感の結果としては、次のグラフが得られています。
こちらも上のグラフが強みの活用グループで、したのグラフが強みの認識グループとなっています。このグラフから分かるのは、
- 人生の満足感も、強みの活用トレーニングにより、徐々に向上していった
ということ。
トレーニング期間にグッと向上した天職感と比べると、少し上昇傾向は鈍くなっていますが、6ヶ月後のフォローアップまでかけて徐々に人生の満足感は高まっています。
まとめ
本稿では「強みの活用で仕事が天職だと思えるようになるのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 仕事で強みを活かすように行動すると、仕事がより天職だと思えるようになっていく
- 仕事で強みを活かすことは、最終的には人生の満足感まで徐々に高めてくれる
ということ。
今回の実験では、強みの活用方法にもいくつかのステップがあって
- ①自分が毎日行っている仕事をリストアップする
- ②自分がこれらの仕事で強みを活かしているときを考える
- ③強み診断で分かった上位4つの強みの新しい活用方法を、If-Thenプランニング形式で具体的な行動に落とし込む
という手順になっています。If-Thenプランニングとは「もし〜だったら、〜をする」という形式で、どのタイミングでどの行動をするのかを明確にする方法です。例えば、親切心を活かすなら「仕事で困っている人を見かけたら、自分から声をかけるようにする」とか、創造性を活かすなら「仕事で何か問題があったときは、解決のアイデアを5個以上だす」みたいな感じです。
If-Thenプラニングは行動の実行力を上げる方法として効果が高いので、強みを活かすときには是非活用するようにしましょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]