睡眠時間や睡眠の質は、遺伝の影響を何割くらい受けるのか?の研究
睡眠は様々な要因の影響を受けるもので、食事のタイミングや栄養、日中に浴びた日光の量、体温の変化、周囲のノイズなど気をつけなければいけないポイントはいくつもあります。しかし、こうした環境的な要因の以前に、睡眠は遺伝の影響を強く受けることもわかっています。人によって必要な睡眠時間が違ったり、朝に集中力が高まりやすい人もいれば、夜中に集中力が高まりやすい人がいたりと、生まれ持った遺伝子で生まれつき決まる部分も大きいんですね。
そこで本稿では、
- 睡眠時間と睡眠の質には、遺伝的要因と環境的要因がそれぞれ何%ずつ影響しているのか?
を調べてくれた研究を見ていきましょう。
睡眠と遺伝の影響
睡眠と遺伝の関係について調べてくれたのはオックスフォード大学らの研究で、この研究では
- 睡眠時間に関する23件の研究
- 睡眠の質に関する13件の研究
をそれぞれメタ分析でまとめてくれています。
これらの研究は睡眠への遺伝的な要因の影響力を調べるもので、遺伝子が同じ双子でどれだけ睡眠の時間や質が似ているのかなどを分析したものとなっています。合計のサンプル数も睡眠時間の研究では45,328人、睡眠の質の研究では39,020人と、大規模なデータとなっているので、信頼度も高めと言えるでしょう。
結果:遺伝の影響割合とは?
早速メタ分析の結果を見てみると、
- 睡眠時間の個人差の46%は遺伝的要因で決まり、残りの54%は環境的要因で決まっていた
- 睡眠の質の個人差の44%は遺伝的要因で決まり、残りの56%は環境的要因で決まっていた
ということ。
なので、人によって睡眠時間が長い人や短い人などがいますが、そうした違いの半分弱は遺伝的な要因で生まれつき決まっているということです。3時間睡眠でも十分なショートスリーパーの人がいたりもしますが、それは遺伝的なものが強くて、とても一般人には真似はできないものかもしれません。
もちろん、半分は環境的要因で決まっているので、寝る直前は食べないようにするなどの、環境面からの睡眠の改善も大切なものであることに変わりはないでしょう。生まれ持った自分の睡眠特性を理解して、自分でできる睡眠改善をすることがベストですね。
結果2:年齢別の遺伝の影響
続いて、年齢別で遺伝の影響力が変わるのかを調べた分析結果によると、
- 幼児期で17%
- 幼少期の前半で21%
- 幼少期の中盤で41%〜52%
- 青年期で69%
- 大人になると42〜35%
となっています。
小さくてよく眠る幼少期のことにはあまり遺伝的な違いもないみたいです。睡眠が特に乱れやすい青年期には、遺伝の影響も69%とピークを迎え、大人になると42%へと少し落ちついて行くようです。なので、青年期の人ほど睡眠を自分でコントロールするのが難しく感じるかもしれませんね。
まとめ
本稿では「睡眠時間と睡眠の質に遺伝的要因はどれだけ影響するのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 睡眠時間の46%は遺伝的要因で決まり、残りの54%は環境的要因で決まっている
- 睡眠の質の44%は遺伝的要因で決まり、残りの56%は環境的要因で決まっている
ということ。
生まれつき早起きが得意な人もいれば、夜遅くになるほど集中力がます人もいます。自分の生まれ持った特徴と、環境面の両方を考慮して、自分にぴったりの睡眠のリズムを整えていきましょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Heritability of sleep duration and quality: A systematic review and meta-analysis