社交能力が低い人ほど、孤独感は感じやすいものなのか?
豊かな人間関係は人生にとって大切な要素の一つで、孤独感は人生の幸福感を低下してしまいます。人間は他の人と協力して生きてきたものですから、孤独感を感じることは将来の不安や劣等感につながってしまうわけですね。
さらに孤独感の悪影響はメンタル面にとどまらず、肥満や血管の病気などの肉体的な健康の低下も見られ、孤独感が強い人ほど寿命が短いことまで分かっています。
それではどのような人が孤独を感じやすいのかというと、まず始めにコミュニケーションが苦手な人が思いつくでしょう。コミュニケーションが苦手だと、職場にうまく馴染めなかったり、友達を作るのが苦手だったりで、一人でいる時間も多くなってしまうものです。
しかし、孤独な人は、実は相手の気持ちを読み取ったりするのが得意で、意外とコミュニケーション能力は低くないという研究結果もあったりします。孤独感はコミュニケーション能力が低いから起きてしまうのか、それとも自分はコミュニケーション能力が低いと思い込んでしまうから起きてしまうの、がいまいちよくわからないんですね。
そこで本稿では、
- 社交能力と孤独感の関係を、自己評価・メタ評価・他者評価の3つの視点で測ったらどうなるのか?
を調べてくれたラドバウド大学らの研究を見てみましょう。
社交能力と孤独感
この研究では1342人の中学生を対象に、社交能力と孤独感の測定をしています。社交能力とは
- 他人を助けるいいやつか?
- 友達を作るのが上手いか?
- 協調性がある人か?
の3つのポイントで評価がされています。
そして評価の方法も3つがあって
- 自己評価
自分で自分の社交能力を評価する - メタ評価
他人が自分のことをどう思っているかの視点で評価する - 他者評価
同じクラスメイトに評価してもらう
で測定します。
そして、研究の結果としては
- 各評価は孤独感とどう関係しているのか?
- これらの3つの評価でギャップがある場合に孤独感はどうなるのか?
が分析されています。
結果:3つの評価と孤独感
早速結果を見てみると、
- 社交能力の自己評価が低い人は、孤独感を感じやすかった(b=−1.98)
- 社交能力のメタ評価が低い人も、孤独感を感じやすかった(b=−1.13)
- 社交能力の他者評価が低い人も、孤独感を感じやすかった(b=−0.92)
ということ。
どの評価方法でも、社交能力が低いと評価される人ほど、孤独感は強く感じやすいという結果になっています。ただし、自己評価が一番回帰係数が低くなっているので、一番影響力が強そうな感じはします。
結果2:評価のギャップと孤独感
続いて、3つの評価のギャップの影響を見てみると、
- 自己評価・メタ評価・他者評価で社交能力が低いことで一致した人は、孤独感は強く感じていた
- 自己評価が高かろうが低かろうが、他者評価とギャップがある人も孤独感を強く感じていた
ということ。
つまり、孤独感を感じやすい人は
- 実際に社交能力が低い人(本当に社交が苦手なタイプ)
- 実は社交能力が高いのに、自己評価が低い人(社交が苦手の思い込みタイプ)
- 社交能力が低いのに、なぜか自己評価は高い人(ナルシストタイプ)
の3タイプがあり得るわけですね。
まとめ
本稿では「社交能力が低い人ほど、孤独感を感じやすいのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 社交能力の自己評価も他者評価も低い人は、孤独感を感じやすい
- 社交能力の自己評価と他者評価でギャップがある人は、自己評価が高かろうが低かろうが、孤独感を感じやすい
ということ。
苦手意識を持ってしまうと、コミュニケーションのプレッシャーを感じてしまって、他者から見た社交能力も低くなってしまうかもしれませんね。難しい問題ですが、苦手意識を克服するには、少しずつ場数を踏むのが良いのかもしれませんね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]