【感情のコントロール】ネガティブ感情の区別が上手い人ほど、睡眠の質も向上する
ネガティブな感情にも色々と種類があって、不安、怒り、落ち込み、悲しみ、焦りなど、細かな感情描写まであげればキリがないものです。そして、人によってネガティブな感情の捉え方には、分解能の違いがあることが分かっています。つまり、「自分は今まさに不安を感じているんだ」と特定の感情を細かく区別できる人もいれば、「不安もあるし、落ち込んでもいるし、漠然とモヤモヤしてる」みたいに自分が感じている感情の種類を細かく分解できない人もいるんですね。
心理学の研究では、ネガティブな感情をうまく区別できる人ほど、ネガティブ感情に上手く対処できることが分かっています。失敗して落ち込んだときに過度の飲酒をしてしまうなどの、現実逃避が少ないんですね。
そこで本稿では、感情の分解能のもう一つの効果として
- ネガティブな感情をうまく区別できる人ほど、睡眠の質も高いのでは?
ということを調べてくれた研究を見ていきましょう。
感情の分解能と睡眠の質
睡眠の質は照明や寝具、食事のタイミング、運動など様々な要因に影響されますが、ネガティブな感情によっても変化することが知られています。不安や落ち込みなどのネガティブな感情があると、なかなか寝付けなくなったりと、睡眠の質を低下してしまうことがあるんですね。
そこでコブレンツ・ランダウ大学の研究では、ネガティブ感情の分解能に注目していて
- ネガティブ感情の分解能が高い人は、自分の感情を細かく区別することができる
→嫌なことがあった日でも、自分のネガティブな感情をうまく分解して対処できる
→夜寝る前にネガティブ感情でいっぱいになることが少なく、睡眠の質も良い
という効果があることに期待しています。
この研究では、実際にこの説が正しいのかを確かめるために、313人を対象に分析を行っています。これら参加者を3週間にわたって1日2回の測定が行われていて
- 毎日のストレスの変化
- 感情の分解能の高さ
- 睡眠の質の変化
- 夕方の冷静さの変化
が記録されています。
これらのデータから、ネガティブ感情が高まった日に睡眠の質が落ちてしまうのか?、その落ち具体に感情の分解能がどのように影響するのか?を分析したんですね。
結果:ストレスが強い日は睡眠の質が低下してしまうのか?
早速結果を見てみると、まず最初に全体的な傾向として
- ストレスの高い日のは、夕方の冷静さが損なわれてしまっていた(中程度の効果)
- 夕方の冷静さが損なわれた日には、睡眠の質が低下していた(小さな効果)
- しかし、ストレスの高い日にどれだけ冷静さが失われるのかには、個人差が大きかった
ということ。
やはりストレスが多い人は結果として睡眠の質が低下してしまうことが分かっています。しかし、人によってストレスの影響度に差があるようで、どんな人がストレスの影響を受けやすいのかが気になるところです。
結果2:感情の分解能が高い人はストレスに強いのか?
続いて、感情の分解能の効果を見てみると、
- 感情の分解能が低い人は、ストレスの多い日に夕方の冷静さの低下が激しかった(傾き−0.261)
- 感情の分解能が高い人は、ストレスの多い日でも夕方の冷静さの低下が緩やかだった(傾き−.189)
ということ。
さらに同じ人の中でも感情の分解能自体が日々変動することもわかっていて、
- 感情の分解能が低い日には、夕方の冷静さの低下が激しかった(傾き−0.258)
- 感情の分解能が高い日には、冷静さの低下が少なかった(傾き−0.143)
という結果も得られています。
つまり、ネガティブな感情を細かく分解できれば、ストレスが強い日でも悪影響が抑えられて、その日の睡眠の質の向上につながるということですね。
まとめ
本稿では「ネガティブ感情の分解能と睡眠の質」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- ネガティブな感情の種類を細かく分解できる人ほど、強いストレスへの対処がうまく、その日の睡眠の質も低下しづらい
ということ。
同じ人でも日によって感情の分解能は変動するということで、ストレスに強くなるためには、感情の分解能を高く維持することが大切なのかもしれませんね。そのためには、自分が感じている感情について、15分ほどかけてひたすら書き出してみる筆記開示のテクニックも活用できるでしょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]