睡眠不足になるとネガティブな感情を抑えられなくなるという研究
睡眠不足になって頭がうまく働かなくなった経験をしたことは多くの人があるでしょう。徹夜で朝まで勉強をしていたら思考がうまく働かなくなったり、毎日の睡眠不足が蓄積して日中の集中力がガクッと落ちてしまったりとかですね。
睡眠は脳を休めて頭の中を整理する働きがあるので、睡眠不足になると脳の機能が低下してしまうわけです。しかし、脳の機能には複雑な計算能力や集中力などの他にも、記憶能力や自己コントロール能力など様々な機能が備わっています。そのため、睡眠不足の悪影響はもっと広い可能性もあるんですね。
そこで本稿では、
- 睡眠不足になると、感情の抑制能力も低下してしまうのか?
について調べてくれた研究を見てみましょう。
睡眠不足と感情の抑制
ヨーク大学の研究では、
- 十分な睡眠をとるグループ(30人)
- 一晩徹夜して睡眠不足のグループ(30人)
を対象にして、思考や感情の抑制能力の実験をしています。
この実験では2つのタスクが行われていて、
- ①思考の集中・抑制タスク
人の顔の画像が順番にスクリーンに表示されていく。顔が赤色の枠で囲われている場合には、顔に意識を集中して、その顔のことだけを考えるようにする。顔が緑色の枠で囲われている場合には、顔に意識は集中するのものの、思考を無にして顔に関して思い浮かぶ思考をできるだけ抑制する。この思考の集中・抑制の2つの状態で、どれだけ邪魔な思考が入り込んでしまうのかが測定され、睡眠不足の状況が思考の阻害をどれだけ増やしてしまうのかが分析される
- ②画像の感情評価タスク
ネガティブな感情を与える画像と、感情的に中立的な画像の2種類が次々と映し出されるので、それぞれの画像がどれだけネガティブなものかを1〜9点で評価するタスク。睡眠不足の状態とそうでない状態で、どれだけネガティブな感じ方が変わるのかが分析される。
となっています。
結果:思考の集中・抑制タスク
思考の集中・抑制タスクから結果を見てみると、次のグラフが得られています。
このグラフは縦軸が思考が邪魔された割合で、横軸がタスクの実践ブロック数になっています。そして2つの折れ線グラフは、赤色が睡眠をとったグループ、青色が睡眠不足のグループとなっています、このグラフから分かるのは
- どちらのグループも回数を重ねるにつれて、段々と思考の阻害が減って、うまく思考をコントロールできるようになっている
- 睡眠をとったグループと比較して、睡眠不足グループでは思考の阻害が約50%ほど増えてしまっている
ということ。
つまり、睡眠不足の悪影響の一つとして、集中しなきゃいけないのに嫌なことを思い出してしまうなど、思考が散漫になってしまうことがあると分かったわけですね。
結果2:画像の感情評価タスク
続いて画像の感情評価タスクの結果を見てみると、
- 感情の抑制がうまくできている人ほど、画像の評価はよりポジティブであった
- 睡眠不足の人は、感情の抑制が下手になっていて、睡眠をとったグループの人よりも画像をネガティブに感じていた
ということ。
悲しい画像などネガティブな画像を見たときには、当然ネガティブな感情が生まれてしまうもの。このときにネガティブな感情をちゃんと抑制できるかどうかで、その経験のネガティブさの感じ方が変わるわけですね。
睡眠不足になると感情の抑制が下手になってしまうので、>睡眠不足は新しく起こるネガティブな出来事をよりネガティブに感じるようにしてしまうという悪い効果も発見されたわけですね。
まとめ
本稿では「睡眠不足で感情のコントロールが下手になる」というお話をしました。
ポイントをまとめると、
- 睡眠不足になると、邪魔な思考が思い浮かぶ頻度が増えて、思考が散漫になってしまう
- 睡眠不足になると、感情の抑制が下手になって、ネガティブな出来事をよりネガティブに感じるようになってしまう
ということ。
睡眠不足は体の健康だけでなく、心の健康にとっても非常に悪いものです。ネガティブ感情は睡眠の質を低下し、睡眠不足はネガティブ感情を増やすという負のループがあるので、睡眠不足には十分注意しましょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Losing Control: Sleep Deprivation Impairs the Suppression of Unwanted Thoughts