年齢が若いほど注意散漫になってしまうのは、実はモチベーションの問題という説
授業中や仕事中に、頭の中で関係ないことが思い浮かんできて集中できないことってありますよね。これは心理学の世界ではマインド・ワンダリングといって、集中を阻害する悪いやつだったりします。
それで本稿では、マインド・ワンダリングと年齢の関係について、若い人と高齢者のどちらの方が思考が注意散漫になりやすいのかを考えてみましょう。
まず、マインド・ワンダリングは脳が思考を制御できていない時に起きるもので、脳の実行機能を深く関係しています。脳の実行機能は高齢になると衰えてしまうものですから、高齢者の方がマインド・ワンダリングが多くなってしまうかもしれません。一方で、大人は仕事にある程度ちゃんと集中しているのに対し、若い人は授業に集中できずに他のことばかり考えている生徒も多いイメージもあります。
そこで本稿では
- マインド・ワンダリングは若い人と高齢の人のどちらで多いのか?
- その差は何が原因で生まれているのか?
について調べてくれた研究を見ていきましょう。
実験:年齢とマインド・ワンダリング
デューク大学の研究では、18〜35歳の若い人と、65歳以上の高齢者の合計480人を対象にマインドワンダリングの実験を行っています。この実験では参加者は、マインドワンダリング・クロック・タスクという非常に退屈なタスクを行います。どんなものかというと、20秒で一周する時計の針をずっと見て、時計の針が12時を差す度にボタンを押すというもの。作業自体も非常に簡単ですし、ボタンを押す感覚も20秒で決まっているので、大した集中力が必要ないわけですね。
それで480人は4つのグループに分けられていて
- 若い人+報酬なしのグループ
- 若い人+報酬ありのグループ
- 高齢者+報酬なしのグループ
- 高齢者+報酬ありのグループ
となっています。
報酬ありのグループでは、ボタンを押すのに成功するたびに賞金がもらえるようになっています。
そしてこの実験では
- ボタンの成功率
- タスクへのモチベーション
- タスク中にどれだけマインドワンダリングしたか
が測定されています。
結果:マインド・ワンダリングの多さ
早速実験の結果を見ていると、
- マインド・ワンダリングは報酬がないよりも、報酬があったときに少なくなった
- マインド・ワンダリングは若者よりも、高齢者の方が少なかった
- しかし、若者でもタスクに報酬をつければ、高齢者と同じようにマインドワンダリングが少なくなった
ということ
若者と高齢者どちらの方がマインド・ワンダリングが多いのか?その答えは若者ということです。しかし、報酬がもらえるとなると若者も頑張るようで、年齢の壁を超えてマインド・ワンダリングが高齢者を同じレベルまで減っています。
結果2:若者はなぜマインド・ワンダリングが多いのか?
それではなぜ若者の方がマインド・ワンダリングが多いのか、その答えはタスクのモチベーションの違いを見てみるとわかります。
- 高齢者+報酬なしのグループ:91.23
- 高齢者+報酬ありのグループ:92.03
- 若い人+報酬なしのグループ:78.95
- 若い人+報酬ありのグループ:87.50
高齢者と比べると、若者の方がタスクに乗り気でなく、モチベーションが低いんですね。モチベーションが低ければ、それだけタスクも退屈に感じて、マインド・ワンダリングも増えてしまいます。しかし、報酬をつけた若者の場合を見てください。この場合はモチベーションが高齢者の水準付近までグッと高まっています。これが報酬ありの若者が高齢者と同レベルまでのマインド・ワンダリングの低減を見せた理由なんですね。
つまり、若者がマインド・ワンダリングが多いのは、大人と違って自分が気が乗らないタスクにモチベーションを感じにくいから。報酬をつけるなりしてモチベーションを高められれば、若者もマインドワンダリングが減って集中力を発揮するということですね。
まとめ
本稿では「若者ほどマインドワンダリングが多いのは何故か?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- やっぱり若者ほどマインド・ワンダリングが多い
- その原因は若者の方がタスクへのモチベーションが低いから
- 報酬をつけてモチベーションを上げれば、若者もマインド・ワンダリングが減って集中力を発揮する
ということ。
確かに勉強が好きでない子供は授業中に注意散漫になっているイメージがありますが、自分の好きなことなら子供はすごい集中力を発揮するイメージもありますよね。若い人は良くも悪くも好き嫌いがはっきりしていて、それにモチベーションが左右されやすいのかもしれませんね。なので、集中できない若者がいるなら、まずはモチベーションから高めてあげるのが良いでしょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]