意志力がすり減ると計画を立てなくなっちゃう問題
大きな目標を達成するためには、達成までの計画を具体的に立てる必要があります。具体的な計画が無いと、目の前の誘惑に負けて行動を先延ばしにしてしまったり、目標まで後どのくらいかの進捗も分からなくなってしまいます。
しかし、具体的な計画が長期的な行動の実践力をあげてくれる一方で、その前に計画を立てること自体を先延ばしにしてしまうことがあります。例えば、毎朝今日やることのスケジュールを組めば1日を効率的に使えますが、それってなんだかめんどくさいという気持ちも心のどこかで感じてしまうことでしょう。計画を立てること自体が意外と頭を使う作業なので、楽をしたい気持ちがあると計画すら立てられずに、ダラっと終わってしまうわけです。
本稿ではこの点について
- 頭を使ったあとで意志力がすり減っているときほど、計画を立てることを避けてしまうのでは?
ということを調べてくれた研究を見てみましょう。
実験:意志力と計画
意志力とは、短期的な誘惑に負けずに、長期的な選択を選ぶ意志の強さのことを言います。意志力には諸説あるのですが、使えば使うほどすり減ってしまうものという考えがあります。つまり、頭を使う複雑なタスクを行って疲れたときには、意志力が低下して楽をしたいという気持ちが強まってしまうわけですね。
ノルウェー経済高等学院の研究では
- 意志力がすり減ってしまったときに、計画を立てることを避けて楽をとってしまうのか?
を4つの実験で確かめています。
これらの研究では、
- 特定の2つの文字を使ってはいけない制限で文章を書いてもらう
- 単語を逆さから書いて文章を書いてもらう
など、意志力をすり減らせる頭を使うタスクを行ってもらいます。
そして、タスクで疲れさせた後で
- 選択肢A:今後の計画を立てる
- 選択肢B:リラックスする
の2つの選択のどちらが良いかを聞いているんですね。
想定としては、難しいタスクを行った後では、計画を立てるのを避けて、リラックスを選びやすくなってしまうということです。
結果:意志力と計画能力
実験の結果を見てみると、
- 元々意志力が強い人ほど、計画をよく立てる傾向があった
- 難しいタスクで意志力がすり減った後では、リラックスすることを選ぶ確率が上がり、計画を立てにくくなった
ということ。
やはり意志力が低下してしまうと、計画を立てにくくなってしまうという結果になっています。例えば、仕事から帰宅したら勉強をしようと思っても、仕事で意志力がすり減っていると、その日の勉強が計画的に行えなくなってしまうわけです。下手すると明日やればいいやと勉強を先延ばしにしてしまう可能性もあるわけです。
実験:IKEAの買い物でも意志力はすり減る?
この実験では意図的に意思力をすり減らせるタスクを行わせる以外にも、現実の生活で意志力が低下したときに同じことが起きるのかも検証しています。具体的な内容としては
- 家具屋のIKEAで買い物する前とした後では、計画を立てる傾向が変わるのか?
を測定したんですね。IKEAの買い物は、どの商品が良いか?や、家具のサイズは大丈夫か?など、色々と頭を使って考えるので、現実生活の中で意志力がすり減るタスクの一つと考えられるんですね。
この実験でも、IKEAで買い物する前の客56人と、IKEAで買い物直後の客56人を対象に、
- 選択肢A:今後の計画を立てる
- 選択肢B:リラックスする
のどちらを行いたいかを選んでもらっています。
結果
その結果を見てみると、
- IKEAの買い物の後でも意志力はすり減って、計画を立てる確率が減り、リラックスを選ぶ確率が高くなった
ということ。
現実の生活では、買い物や部屋の掃除など、意外と小さなことでも少しずつ意志力はすり減ってしまうのかもしれません。なので、計画は朝のうちに立てるなど、意志力がすり減る前に立てておくのが良いでしょう。
まとめ
本稿では「意志力がすり減ると、計画を立てにくくなってしまうのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 計画を立てること自体が頭を使う大変な作業で、意志力が必要になる
- 頭を使うタスクで意志力がすり減ってしまうと、計画を立てるよりも楽を選ぶようになってしまう
- 意志力の低下は家具の買い物のような日常的なタスクでも起こる
ということ。
計画は抽象的で大きすぎると行動が起こしにくいので、毎日のやることレベルの具体性があることが大切です。しかし、計画を詳細に考えることは結構大変なので、この作業が意志力の低下で先延ばしになってしまう可能性があります。毎朝に1日のやることをスケジューリングしたり、具体的な行動レベルのTodoリストに分解しておくなど、意志力が低下する前に計画を立ててると良いでしょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]