睡眠の質が悪くて長時間寝る人ほど、脳の密度が低いという研究
睡眠は質と量の両方が大切で、どちらか一方が欠けても体には悪影響があります。そして、睡眠の量について多ければ多いほど良いわけではなく、睡眠時間が8時間を超えるような場合には、逆に体に悪いことも分かっています。つまり、睡眠の質が悪い場合には、その穴を睡眠時間を増やすことで補おうとするのはあまりよろしく無いわけですね。
そこで本稿では、
- 睡眠の質と量はそれぞれ脳の組織の密度にどう関係しているのか?
を調べてくれた研究を見てみましょう。
睡眠とスカスカな脳
この研究では1201人の若者を対象に、睡眠の質・量と脳の構造の測定を行っています。
この研究では脳のMRI画像を使って、平均拡散能(mean diffusivity: MD)という脳の中での水分子の拡散具合を測定しています。毛細血管やシナプス、軸索などの脳の細かな組織が密度高く詰まっている場合には、水分子は拡散しにくくなり、平均分解能は低くなります。逆に脳の密度が低い場合には、水分子は拡散しやすくなり、平均分解能が高くなります。こうした理屈で、平均分解能を測定すれば脳の密度が分かるわけですね。
そして、この研究では
- 普段の睡眠時間はどのくらいか?
- 普段熟睡できているか?
の睡眠の量と質も測定していて、これらが脳の密度とどう関係しているのかを分析しています。
結果:睡眠と脳の密度
早速実験の結果を見てみると、
- 睡眠時間が長いほど、脳の密度は低下していた
- 睡眠の質が良いほど、脳の密度は向上していた
ということ。
面白いことに睡眠の量と質で真逆の効果が得られています。この結果からすると、質の良い睡眠を短い時間とる場合に、脳の密度は高くなります。逆に、質の悪い睡眠をダラダラを長くとってしまうと、脳の密度は低下してスカスカになっているわけですね。
結果2:睡眠の悪影響
それでは、具体的にこうした睡眠の悪影響がどう出ていたのかを見てみると、
- 睡眠の時間が長くなるほど、忍耐力が低下していた
- 睡眠の時間が長くなるほど、協調性が低下していた
- 睡眠の時間が長くなるほど、自己超越が低下していた
- 睡眠の時間が長くなるほど、脳の実行機能が低下していた
さらには、
- 睡眠の質が良いと、緊張や不安が低下していた
- 睡眠の質が良いと、うつや落ち込みが低下していた
- 睡眠の質が良いと、怒りや敵対心が低下していた
- 睡眠の質が良いと、疲労感が低下していた
- 睡眠の質が良いと、混乱やと戸惑いが低下していた
- 睡眠の質が良いと、活力が向上していた
- 睡眠の質が良いと、忍耐力が向上していた
- 睡眠の質が良いと、協調性が向上していた
ということ。
睡眠時間が長くなるほど悪影響が大きいのに対し、睡眠の質は良い影響ばかりであることが分かります。睡眠時間は長すぎる人は、睡眠の質を改善することを目指すと良いでしょう。
まとめ
本稿では「睡眠の質・量と脳の密度」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 睡眠時間が長くなるほど、脳の密度は低下し、脳の実行機能の低下などの悪影響が色々出てしまう
- 睡眠の質が良いほど、脳の密度が向上し、ネガティブ感情への耐性や実行機能の向上など良い影響がたくさん得られる
ということ。
睡眠の質はブルーライトや寝る前の食事、寝る時の体温の変化など様々な要因が影響します。なので、寝る1時間くらい前からは、スマホなどをいじるのをやめてリラックスタイムにすると良いでしょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]