やり抜く力(Grit)が高い人がパフォーマンスが良いのは、普段の練習の質が良いから説
やり抜く力(Grit)は、長期的な目標の達成に向かって忍耐強く取り組み続ける力のこと。一流のスポーツ選手になる人、仕事で成功する人、学校で良い成績を取る人、やり抜く力は人生の様々な成功につながることが分かっています。
それでは、なぜやり抜く力を持つ人は、高いパフォーマンスを発揮できるのか?
やり抜く力が高い人は成功するまで諦めないので、その活動に費やしている時間や練習量が多いことは一つの理由として考えられるでしょう。この問いについて、ペンシルバニア大学らの研究では、
- やり抜く力が高い人は、きつい練習に挑むメンタルも持つので、練習の質も良いのでは?
という点について調べています。
やり抜く力と限界的練習
ペンシルバニア大学の研究では、全米スペリング大会の参加者を対象にして、
- パフォーマンスの高い選手は普段どんな練習をしているのか?
- パフォーマンスの高い選手はGritが高いのか?
といったことを調査しています。
スペリング大会は、英単語のスペルを間違えることなく答えられるかを競う子供向けの大会で、難解な英単語のスペルをたくさん記憶する必要があります。それでこの大会に向けた練習として、
- 限界的練習
自分の知らない単語にフォーカスして学習したり、自分がこれまでに学習した単語の復習を行ったりと、戦略的に自分の実力の限界を伸ばすことを目的とした練習方法
- クイズ的練習
コーチから問題を出してもらって答えたり、コンピュータに問題を主題してもらって答えるなど、クイズ形式の問題をこなす練習方法
- 娯楽的練習
本を読んで単語に触れるなど、直接的な勉強ではないが、楽しんで勉強できる練習方法
の3種類の練習に分類しています。
限界的練習が戦略的に自分の実力向上にフォーカスした練習なのに対して、他の2つでは、受け身でクイズを解くだけだったり、具体的に覚えたい単語にフォーカスせずに本を読むだけだったりと、あまり戦略的な練習とはなっていません。
結果: 上位の選手はどんな練習をしているのか?
それで、研究の結果を見てみると、
- クイズ的練習の割合や、娯楽的な練習の割合は、大会でのパフォーマンスには関係がなかった
- 唯一、限界的練習を多くしている人は、大会で高いパフォーマンスを発揮していた
ということ。
つまり、実力アップのためには練習の質も大切で、きちんと自分の実力向上に効果的な練習を行った人が、上位に入賞したわけですね。
しかし、限界的練習には弱点もあって
- 限界的練習は3つの練習方法の中で、練習の楽しさが一番低かった
- 限界的練習は3つの練習方法の中で、練習で必要な努力(大変さ)が一番高かった
ということ。
意図的に自分の限界に挑戦するわけですから、それだけ練習としては辛いものになってしまうんですね。例えば、数学でも基礎的な問題をたくさん解くのは簡単で楽しいですが、自分の実力を超えた応用問題に挑むのは大変なものですよね。実力を効果的に伸ばすためには、今の限界を超えるような練習に挑戦しなければいけないわけです。
結果2:やり抜く力(Grit)と限界的練習
限界的練習は辛くて大変なものですが、やり抜く力(Grit)の高い人なら進んで挑戦していけるかもしれません。
この点の分析結果を見てみると、
- やり抜く力が高い人ほど、練習の中で限界的練習が占める割合が高かった
- その結果として、大会でも高いパフォーマンスを発揮していた
ということ。
つまり、やり抜く力が高い人は、忍耐強く練習の量が多いだけでなく、限界的練習を多くしていて練習の質も良いということです。確かに、イチローのような一流のスポーツ選手をイメージしてみると、自分の実力をどう伸ばすかを常に意識していて、それに向かって練習を積み重ねているものですよね。
まとめ
本稿では「やり抜く力が高い人は、練習の質も良いのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 実力を伸ばすためには、自分の限界を引き伸ばすような限界的練習が必要になる
- 限界的練習は必要な努力量が多く、楽しくもないので、普通の人は敬遠しがち
- やり抜く力が高い人は、進んで限界的練習を行っているので、パフォーマンスも高い
ということ。
たくさんの時間をかけて練習をしたとしても、今できることを何回も反復しているだけなら、実力もあまり伸びないでしょう。なので、大変そうに思えても、今の自分にできることを超えた範囲に挑戦するようにしましょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]