運動は週末にまとめて行なっても健康効果は損なわれないのか?
運動を習慣にしたいと思っても、なかなか身に付かない人も多いでしょう。その原因の一つは時間の問題で、平日は仕事が忙しくて運動をする時間が取れない、あるいは時間があっても仕事で疲れているとやる気が起きない、というのが運動の大きな壁となります。
実際、人が働く時間は年々増えていて、1969年から1987年の労働時間の変化を測定した研究では、年間で約1ヶ月分も働く時間が増えていると言われています。うーん、会社が競い合えば世の中はどんどん便利になるものの、仕事は増えて自由時間は減ってしまうという皮肉ですね。
そこで本稿では、平日時間が取れない人の運動方法として
- 週末にまとめて運動するのは、週3日以上に分散した運動に匹敵する健康効果があるのか?
を調べてくれた研究を見てみましょう。
週末ウォーリアーの健康効果!
ハーバード大学らの研究では、週の運動のタイプを次の4つに分類して、それぞれの死亡リスクについて分析を行っています。
- 座りっぱなしタイプ
週に500kcal以下の運動しかしない人 - 運動不足タイプ
週に500〜1000kcal相当の運動をこなす人 - 週末ウォーリアータイプ
週の2日以内で1000kcal以上の運動をこなす人 - 習慣運動タイプ
週に3日以上運動して、合計の運動量も1000kcalを超えている人
週の推奨運動量は1000kcal以上なので、それを週末にまとめてこなすか、三日以上に分散してこなすかで、健康効果に差が出るのかを測定したわけですね。ちなみに、週1000kcalの運動とは、早歩きで合計150分程度の運動量となっています。
運動以外の健康リスクの配慮
そして、人によって運動以外の健康リスクとして
- 喫煙している
- 飲酒が多い
- 赤身肉を多く食べる
- 野菜の摂取量が少ない
- ビタミン・ミネラルをサプリでとっている
- 親が若くして亡くなっている
の6つのリスクを考慮して、
- 健康リスクが一つもない人
- 健康リスクが一つ以上ある人
で運動の効果が違うのかも分析がされています。
結果:健康リスクがない人の運動の効果
それでは研究の結果を見てみると、まず健康リスクが一つもない人は、
- 座りっぱなしタイプの人の死亡リスクを基準(100%)とする
- 運動不足タイプの人で、死亡リスクは56%(有意に効果あり)
- 週末ウォーリアータイプの人で、死亡リスクは41%(有意に効果あり)
- 習慣運動タイプの人で、死亡リスクは58%(有意に効果あり)
となっています。
喫煙などの健康リスクがなければ、1000kcal以下の運動量でも死亡リスクは大きく減少しています。さらに、週末にまとめて運動しても、週3日以上に分散しても、どちらでも死亡リスクは低下しています。これらの3つのグループの死亡リスクに統計的に優位な差はないので、どのグループも同じように死亡リスクが低下していたということになります。
結果2:健康リスクが高い人の運動の効果
次に健康リスクを一つ以上持っている人の結果を見てみると、
- 座りっぱなしタイプの人の死亡リスクを基準(100%)とする
- 運動不足タイプの人で、死亡リスクは84%(有意差なし)
- 週末ウォーリアータイプの人で、死亡リスクは102%(有意差なし)
- 習慣運動タイプの人で、死亡リスクは61%(有意に効果あり)
ということ。
健康リスクが高い人は、運動が不十分だったり、週末にまとめて運動するだけでは、健康効果はそこまで得られないようです。飲酒や喫煙、ジャンクフードなどの悪い生活習慣を持っている人は、習慣的に運動することを心がけた方が良いでしょう。
まとめ
本稿では「週末にまとめて運動で健康効果は損なわれないのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 健康リスクが低い生活習慣の人は、週末にまとめて運動でも健康効果がバッチリ得られる
- 健康リスクが高い生活習慣の人は、週3日以上にわけて習慣的に運動しないと健康効果が得られない
ということ。
健康的な生活習慣に自信がない人は、運動は習慣的に行って方が良さそうですね。推奨の運動量は早歩きで150分程度のものなので、エスカレータを使わずに階段を使うとか、座りっぱなしにならないように少し立って仕事するとか、日常的な工夫で運動量を増やすのも良いでしょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]