運動をよくする子供ほど、学業のパフォーマンスや認知機能が高いのか?
運動中は体を動かすことはもちろんですが、実は脳もフル稼働しているもの。転ばないように体のバランスを考えたり、次の行動を予測しながら動いたりと、無意識的に行っているかもしれませんが、実は結構高度な処理が脳の中では行われているんですね。
そのため、運動は体を鍛えるだけでなく、脳も鍛えてくれることが分かっています。授業の前に運動をすると学習効率が向上したり、運動するとBDNFという脳の成長に欠かせない成分が増えたりするんですね。運動をすると眠気も吹き飛んで体が覚醒するので、それも影響しているのでしょう。
そこで本稿では、運動の脳機能への効果として
- 子供(6〜12歳)は運動をすると、脳の注意力や実行能力、学業のパフォーマンスが向上するのか?
を調べてくれた研究を見てみましょう。
運動と脳機能
フローニンゲン大学の研究では、短期的あるいは長期的に運動を実践した場合に、子供の脳機能や学業成績が向上するのかを調べた研究31件をメタ分析でまとめています。これらの研究で調べられた効果としては
- 実行機能の向上
複雑な課題を行うために必要な考える能力の向上。具体的にはワーキングメモリや頭の柔軟性、衝動などの抑制能力、計画能力のこと - 注意力の向上
外部の余計な刺激や、頭の中の雑念に注意を奪われることなく、目の前のタスクに注意を維持する能力の向上 - 学業パフォーマンスの向上
数学や読み書き能力などの学業面の能力の工場
の3つが分析の対象となっています。
ちなみに運動のパターンとして
- 一時的な効果と長期的な効果の違い
運動の直後に得られる効果と、運動を習慣的に継続した場合の効果の違い。 - 運動の種類の違い
ジョギングなどのあまり頭を使わない有酸素運動と、頭もよく使う必要がある運動の2種類の違い。
の2つの違いも分析では考慮されています。
結果:運動後の一時的効果
まず最初に運動の直後に一時的に得られる効果を見てみると、
- 実行機能のうちの抑制能力が有意に高まっていた(g=0.28)
- 注意の選択能力が有意に高まっていた(g=0.43)
- 全体として学業パフォーマンスは向上していなかったが、スペリング能力だけは少し高まっていた(g=0.25)
- 運動の一時的効果は頭を使う運動よりも、有酸素運動の方が高かった(g=0.08 vs g=0.28)
ということ。
なので、ジョギングなどの有酸素運動をすれば、誘惑などを抑制して勉強に集中する力が一時的に向上するといった感じですね。ワーキングメモリだったり、学業のパフォーマンスだったりは、一回運動する程度ですぐに効果が得られるわけではないみたいです。
結果2:習慣的運動の効果
続いて、習慣的に運動を継続した場合に得られる効果を見てみると、
- ワーキングメモリが向上していた(g=0.36)
- 思考の柔軟性が向上していた(g=0.18)
- 学業パフォーマンスが向上していた(g=0.26)
- 運動の長期的な効果は有酸素運動よりも、頭を使う運動の方が高かった(g=0.29 vs g=0.53)
ということ。
単発的な運動ではワーキングメモリや学業パフォーマンスまでは向上していませんでしたが、習慣的に継続することできちんと効果が出始めています。長期的な効果は頭を使う運動の方が高いので、頭を使う運動を習慣として行いつつ、一時的に注意力を上げたいときは有酸素運動で脳をブーストするとかの使い分けもいいのかもしれませんね。
まとめ
本稿では「よく運動をする子供ほど、頭の良くなるのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 運動をすると、一時的に注意力が向上する
- 運動を継続していくと、実行能力や学業パフォーマンスも向上する
- 継続的な運動は頭をよく使うタイプの運動が良い
ということ。
グラウンドを走るのでなく、でこぼこした山道を走るようにするだけでも、運動で使う脳の負荷は高めることができます。なので、運動で脳を一緒に鍛えたい場合には、運動方法を少し工夫してみるといいかもしれません。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]