時間感覚が正確な人ほど、短い時間でも良い判断ができるのか?の研究
良い選択には時間がかかるもので、十分に情報を集めて、それらの情報を吟味する必要があります。しかし、現実の判断では締め切りがあることが多く、十分な情報も揃わないままに選択を迫られることがあります。これは人生の色々な場面で出くわす問題で
- 仕事で締め切りまでに商品の構想をまとめなければいけない
- 車の運転では瞬間瞬間で適切な判断をしなければ事故ってしまう
- 学校のテストでは時間内に問題を解かなければいけない
- スポーツの試合で残り時間わずかで逆転のゴールを決めなければいけない
などなど、生きていればもっと時間があればと思うことも多いでしょう。
そして、時間制限があると当然ですが選択の質は低下してしまいます。テストで残り時間が少なくなってくると、時間のプレシャーで気持ちが焦って、正確さを捨ててスピードを上げますよね。しかし、時間のプレッシャーは人によって感じ方が違うもので、もう10分しか残っていないと思う人もいれば、まだ10分もあると思う人もいます。
そこで本稿では
- 時間感覚が正確な人ほど、制限時間が与えられた選択をうまくこなせるのか?
を調べてくれた研究を見てみましょう。
時間感覚と選択の精度
アムステルダム大学の研究では、2つのタスクを使って、時間感覚と制限時間下での選択のうまさを測定しています。
一つ目が時間再現タスクで、時計などを一切見ずに自分の感覚で1.5秒でボタンを押すタスクになっています。重要なのは1.5秒からどれだけズレたのかの誤差で、時間感覚がどれだけ正確かが測られています。
2つ目の知覚判断タスクで、画面に映された2つの円を見て、短い時間の中でどちらが多く光ったのかを判断するタスクになっています。このタスクは250回行うのですが、判断の制限時間は短くて1.5秒、長くて5秒と変えられています。こちらのタスクでは短い時間制限の中でどれだけ正確に判断ができるのかが測られたわけですね。
結果:時間感覚が正確だと判断も上手いのか?
実験の結果を見てみると、まず最初に
- 判断の時間が短くなるほど、精度は落ちていた
- この判断の精度の低下は、時間感覚に関係なく見られた
ということ。
つまり、当然なことですが時間が短くなるほど判断の精度は落ちてしまうということ。これは時間感覚が良い人であっても避けられない現象のようです。
それでは時間感覚が役に立たないのかというと、そうではなくて
- 時間感覚が良い人は、短い時間の中でもより慎重に選択をする傾向があった
- 時間感覚が良い人は、時間感覚が悪い人よりも全体的に判断の精度が高かった
ということ。
時間感覚が良い人でも時間が短くなる事による精度の低下は避けられませんが、それでも時間感覚が悪い人よりは良い選択ができているということ。時間感覚が良い人の特徴として、短い時間内でも慎重に選択をしているので、時間のプレッシャーで焦りにくく、限られた時間を有効に使って判断しているのでしょう。
まとめ
本稿では「時間感覚と判断の精度」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 判断に使える時間が短いほど、判断の精度は低下してしまうのはしょうがない
- それでも時間感覚が良い人は、限られた時間内で慎重に選択して、判断の精度が良い傾向がある
ということ。
時間のプレッシャーに焦ると、頭がうまく回らなくなったり、スピード重視で判断が適当になってしまうことがあります。そんな中でも良い判断をするには、冷静さを忘れずに限られた時間内でできるだけ慎重に判断をするようにしましょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Caution in decision-making under time pressure is mediated by timing ability