音楽を聴くことで、頭のパフォーマンスを向上できるのか?の実験
クラシック音楽を聴くと頭が良くなるという話を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。この話はモーツァルト効果といって、実際の心理学の実験を発端に流行したものです。しかし、モーツァルト効果は再度実験しても効果が再現がしなかったりで、本当に確かな効果があるのかがいまいちはっきりしていません。
そこで本稿では、この問題について
- 音楽の種類やテンポの違いによっても、頭のパフォーマンスが向上効果は変わるのでは?
という点について実験してくれた研究を見てみましょう。
実験1:テンポの違いと頭のパフォーマンス
この研究では2つの実験で、音楽を聴いた後で頭のパフォーマンスが向上するのかを確かめています。
一つ目の実験では、
- モーツァルトのピアノ・ソナタ
メジャーキーでアップテンポな曲 - アルビノーニのアダージョ
マイナーキーでスローテンポな曲
のテンポが違う2種類の曲を聴いた後で、頭のパフォーマンスがどのように変わるのかを調べています。アップテンポの曲の方が脳の刺激が大きいので、頭のパフォーマンスの向上も大きいことが想定されます。
そして、頭のパフォーマンスとしては
- 空間把握能力を測るタスク
- ワーキングメモリ(作業記憶)を測るタスク
の2種類のタスクが行われて、それぞれのパフォーマンスへの効果が分析されています。
結果:
早速実験の結果を見てみると、
- アップテンポな曲では、脳の覚醒度の向上が大きく、空間把握能力のタスクのパフォーマンスが向上した
(ワーキングメモリのタスクのパフォーマンスは向上しなかった) - スローテンポな曲では、脳の覚醒度の向上が小さく、どちらのタスクもパフォーマンスは向上しなかった
ということ。
つまり、アップテンポな曲を聴いた時のみ、空間把握能力は向上するということ。曲の違いによる影響も受けるし、向上するのも脳機能の一部のみということで、音楽の効果は結構限定されたもののようです。モーツァルト効果が再現されないもの、こうした細かな違いが影響していたのかもしれませんね。
実験2:童謡とお絵描きのパフォーマンス
2つ目の実験では、5歳児を対象にして、曲のレパートリーを
- モーツァルトのピアノ・ソナタ
- アルビノーニのアダージョ
- 童謡(どんぐりころころなど)
の3種類の増やして実験を行なっています。
頭のパフォーマンスとしては、
- お絵描き
がタスクをして行われていて、技術的にどれだけ上手いか、クリティビティがどれだけ高いかなどが評価されています。
結果:
実験の結果を見てみると、
- 童謡を聴いた子供、特に童謡を一緒に歌った子供は、お絵描きにより長い時間を費やしていた
- 童謡を聴いた子供、特に童謡を一緒に歌った子供の絵は、クリエイティビティが高く、元気があって、上手な絵であると高く評価されていた
ということ。
子供に関してはクラシック音楽よりも、慣れ親しんだ童謡の方が効果が高いようです。クリエイティビティはポジティブな感情の時に高まるという研究結果もあるので、童謡を歌って楽しむことがクリエイティビティを高めたのかもれませんね。童謡は昔から子供の教育に良い影響を与えているみたいで嬉しいですね。
まとめ
本稿では「音楽で頭のパフォーマンスが向上するのか」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- アップテンポのクラシック音楽で空間把握能力は向上したが、ワーキングメモリは向上しなかった
- 子供は童謡を歌うと、お絵描きの上手さやクリエイティビティが向上した
ということ。
注意点としては、音楽は聴いた直後に一時的な効果しかないので、試験の直前など集中したい時に使うと良いでしょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Exposure to music and cognitive performance: tests of children and adults