女性の方がマルチタスクが上手いは本当なのか?を確かめた研究
「女性の方がマルチタスクが上手い」という話を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
子供の世話をしながら料理をしたり、掃除や洗濯といった家事を効率よくこなしたりするイメージがマルチタスクの上手さを連想させているのかもしれませんね。
しかし、この話はあくまでイメージに基づいたもので、実際にマルチタスクのパフォーマンスを測定したわけではありません。いくつかマルチタスクのパフォーマンスの男女差を比較した実験もあるのですが、それらの実験結果にはばらつきがあって、確かなことはまだわかっていないんですね。
そこで本稿では
- 普段の男女のマルチタスクにはどんな違いがあるのか?
- 男女でマルチタスクの上手さに差はあるのか?
について調べてくれた研究を見ていきましょう。
マルチタスクの男女差
この研究では60名の男性と69名の女性を対象に、パソコン上で様々なタスクをマルチタスクで行ってもらっています。
これらのタスクには、計算タスク、単語の記憶タスク、色の識別タスクなど、毛色の違うタスクがごちゃ混ぜになっています。一般的に一つのタスクに集中したときにパフォーマンスは高まり、異なる種類のタスクを同時に行ってしまうとパフォーマンスは低下してしまいます。そこで、男女でマルチタスクをしたときのパフォーマンス低下の大きさに差があるのかが測定されたんですね。
そして、マルチタスクの設計にも2種類が用意されていて
- 同時の行うマルチタスク
2つのタスクを同時に行うタイプのマルチタスク
現実世界で例えると、車の運転をしながら通話をするとか。 - 細かく切り替えるマルチタスク
複数のタスクを細かく切り替えて行うタイプのマルチタスク。
例えば、友達にメッセージの返送をしながら勉強をするとか。
となっています。
結果:マルチタスクは女性の方が得意なのか?
早速実験の結果を見てみると、
- 同時に行うタイプのマルチタスクは、男性の方がパフォーマンスの低下が小さかった
- 細かく切り替えるタイプのマルチタスクには、男女でパフォーマンスに差はなかった
ということ。
なんと、女性ではなく男性の方がマルチタスクが得意という結果になっています。しかし、差が出たのは同時に行うタイプのマルチタスクで、料理や洗濯、育児と細かく切り替えるようなマルチタスクには男女差はないということです。
結果2:なぜ男性の方がマルチタスクが得意なのか?
それでは気になるのが、男性の方がマルチタスクが得意な理由について。この研究ではそれを追うために、普段のマルチタスクの傾向の男女差について調べています。その結果を見てみると、
- 男性がゲームでマルチタスクを行うことが女性よりも多かった
- 女性は音楽やメッセージのやりとり、インターネットサーフィンでマルチタスクを行うことが男性よりも多かった
ということ。
しかし、この違いがマルチタスクのパフォーマンスに与える影響を分析して結果を見てみると、
- 普段のマルチタスクの傾向の違いは、男性がマルチタスクのパフォーマンスが高い原因とは言えなかった
ということ。
それでは、何が真の原因なのかを探ってみると、
- 男性が同時に行うタイプのマルチタスクのパフォーマンスが高いのは、単に男性の方が情報の処理能力が高い傾向があるからだった
ということ。
2つのタスクを同時に行うとなると、処理しなければいけない情報量も2倍になります。男性の場合には、情報の処理能力が高いため、タスクを同時に行ってもパフォーマンスの低下が少なく済んでいたんですね。
まとめ
本稿では「女性の方がマルチタスクが上手いは本当なのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 複数のタスクを同時に行うマルチタスクは男性の方がうまい
- 複数のタスクを細かく切り替えて行うマルチタスクには男女差はない
- 男性の方がマルチタスクが上手いのは、情報の処理能力が高いから
ということ。
うーん、よく聞くイメージと違って、男性の方が若干マルチタスクは上手いみたいです。この研究では普段どんなマルチタスクをしているかは、マルチタスクのパフォーマンスとは関係がありませんでした。なので女性が普段から多くマルチタスクをしていても、それ自体がマルチタスクのパフォーマンスを高めてくれるわけではないみたいです。マルチタスクのパフォーマンスを上げたければ、純粋に頭のパフォーマンスを上げるのが良いみたいですね。
[参考文献]
*1 : Gender differences in multitasking experience and performance