セルフ・ハンディキャッピングは学校の成績をどれだけ低下させているのか?
セルフ・ハンディキャッピングとは、負けたときの言い訳をするために、事前に自分にハンデをつけてしまうこと。
例えば、スポーツの試合で、本気で練習して、本気で試合に挑んで負けてしまった場合、「自分の実力が足りなかった」という結果を受け入れるしかありません。本来はこの結果は次の成長のための糧となる良いものなのですが、「自分には実力がない」とか「自分には才能がない」という現実を思い知らされるのは、やはり辛いものです。
そのため、これを避けるために行ってしまうのがセルフ・ハンデキャッピング。練習をサボったり、試合を本気で挑まなければ、負けたのは実力のせいでなく、そのハンデのせいにできます。試験勉強をほとんどせずに、「俺、一晩しか勉強してないから」と言い訳するのも、セルフ・ハンディキャッピングの一つですね。
本稿では、この現象について、
- セルフ・ハンデキャッピングって、実際に学校の成績にどれだけ悪い影響を与えているのか?
を調べてくれた研究を見てみましょう。
セルフ・ハンディキャッピングと学校の成績
ギーセン大学らの研究では、セルフ・ハンディキャッピングと学業の成績の関係について調べてくれた32件の研究結果をメタ分析でまとめています。これらの研究では、合計で25,550人もの学生が対象になっていて、これらのデータからセルフ・ハンディキャッピングがどれだけ学業成績の低下につながっているのかを分析してくれだんですね。
そして、セルフ・ハンディキャッピングの悪影響を受けやすい人の傾向も分析していて
- 学校の種類(小学生、中学生、高校生、大学生)
- 性別(男性、女性)
- 地域(アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアなど)
- 目標の持ち方(結果重視、成長重視)
などが考慮されています。
結果:セルフ・ハンディキャッピングの成績低下
早速結果を見てみると、
- セルフ・ハンディキャッピングは学業の成績を低下していて、その効果量はr=−0.23だった
ということ。
確かにセルフ・ハンディキャッピングが成績にとって悪いものだという結果が得られています。これは全体を平均した場合の結果なので、続いて特に学業成績の低下が大きかった人の特徴を見ていきましょう。
結果2:学校の種類とセルフ・ハンディキャッピング
学校の種類別でセルフ・ハンディキャッピングの学業成績の大きさを見てみると、
- 小学校ではr=−0.29の成績低下
- 中学校ではr=−0.34の成績低下
- 高校ではr=−0.23の成績低下
- 大学ではr=−0.18の成績低下
ということ。
この結果からわかるのは、年齢が低いほどセルフ・ハンデキャッピングで成績が落ち込みやすいということ。中学生で一番学業成績の低下が大きく、大学まで行くと効果量の大きさは0.18まで低下しています。
結果3:目標の持ち方
次に目標の持ち方による結果として
- 成長重視の目標を持つ人は、セルフハンデキャッピングの悪影響を受けにくかった
ということが分かっています。
目標の持ち方には結果重視と成長重視があもとの。結果重視の人は良い結果を得ることを優先していて、失敗する可能性がある難しい課題に挑むよりも、自分のできる範囲で良い点を稼ごうとする傾向があります。一方で成長重視の人は、結果よりも成長することを優先していて、失敗してもいいから困難な課題に挑戦する傾向があります。
セルフ・ハンディキャッピングは失敗を恐れて自らハンデを作ってしまうものなの。そのため、失敗してもいいから挑戦する成長重視の人はこうした影響を受けにくいのでしょう。
結果4:その他
その他の要因の影響を見てみると、
- 性別は男性の方がセルフハンデキャッピングの悪影響を受けやすいかった
- アメリカやヨーロッパなどの地域による差はなく、どの地域でもセルフハンディキャピングは悪影響を持っていた
ということです。
男性の方が競争的な思考が強いので、セルフハンデキャッピングの影響を受けやすいのかもしれませんね。
まとめ
本稿では「セルフ・ハンディキャッピングと学校の成績」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- セルフ・ハンディキャッピングは学校の成績を確かに低下してしまっている(r=−0.23)
- 特にセルフ・ハンディキャッピングの悪影響受けやすいのは、①小学生〜中学生、②成長よりも結果を重視する人、③男性
ということ。
セルフ・ハンディキャッピングは、学業だけでなく、スポーツや仕事でも起きてしまいます。自分の本当の実力を知ることは、成長にとって必要なことなので、ハンデをつけて言い訳をするのはやめて、失敗を受け入れていきましょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Academic Self-Handicapping and Achievement: A Meta-Analysis