フィクションを読むだけで、少しオープンマインドになれるという研究
人は不確実な状況や急激な変化に抵抗を感じ、現状維持や確実な選択をする方が楽に感じるもの。この心理の背景にあるのは完結要求で、あれこれと考え悩むよりも、自分の知っている範囲の中で結論をつけたがる傾向があるんですね。
しかし、完結要求が強いと、新しい考えや懐疑的な洞察ができずに、レベルの低い考えで満足をしてしまいます。実際、対立する意見もきちんと考察する人は自分の考えの自信が低く、自分の考えに自信満々な人は思考の範囲が狭いだけという研究データもあります。
そこで本項では、この完結要求の思考停止から抜け出すために、
- 完結要求を軽減してオープンなマインドになるのに、フィクション(小説)が使えるのでは?
ということを調べてくれた研究を見てみましょう。
物語とオープンマインド
トロント大学の研究では、100名の大学生を対象にして
- エッセイグループ
科学的な根拠や事実に基づいて書かれたエッセイを読むグループ - フィクショングループ
現実ではない作り話(小説)を読むグループ
の2つのグループを作っています。
この実験のポイントは、エッセイやフィクションを読むことで完結要求が軽減されるのか?ということ。エッセイを読むときは、「それは違うだろ」など自分の考えを交えて判断することがあるので、完結要求の影響を受けやすくなります。一方、フィクションを読むときは、作り話と分かって楽しむように読むので、完結要求から自由になれるかもしれないんですね。
結果
実験の結果を見てみると、
- エッセイを読んだ人の完結要求のスコアはM=3.97であった
- フィクションを読んだ人の完結要求のスコアはM=3.79であった
ということ。
想定の通り、フィクションを読んだ人は完結要求が低下してオープンなマインドになっています。それでは具体的にどのように思考が変化したのかというと、
- 不確実な状況に対する不快感が軽減された
- ルールや決まり事などの固定的な考えを必要とする気持ちが低下した
ということなんですね。
結果2:普段の読書量
この研究では、普段の読書量がフィクションを読んだ時の効果にどのように影響するのかも調べています。その結果を見てみると、
- 普段からフィクションを多く読む人ほど、フィクションを読んだ後の完結要求の低下が大きかった
- 普段からエッセイを多く読む人でも、フィクションを読んだ後の完結要求の低下が大きかった
ということ。
つまり、フィクションだろうがエッセイだろうが、普段から文献をよく読む人はより大きな効果が得られるということです。ただし、どちらの場合でもに完結要求が低下するのはフィクションを読んだ後なので、オープンなマインドになりたいタイミングではエッセイでなくフィクションを読みましょう。
まとめ
本稿では「オープンマインドになるのにフィクションが使えるのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- フィクションを読んだ後では、完結要求が低下してオープンなマインドになる
- この効果は普段からフィクションやエッセイを多く読む人ほど強くなる
ということ。
事実やデータを突きつけられるよりも、架空の物語でも主人公の目線を想像する方が、その主人公の考え方などをすっと受け入れやすいのかもしれませんね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Opening the Closed Mind: The Effect of Exposure to Literature on the Need for Closure