レジリエンスを高めるのに、実はストレスが必要だという研究
レジリエンスとは、逆境や困難にぶつかっても、心が折れることなくそれを乗り越えていく強さのことです。人生は山があれば谷もあるもので、常に良い状態が続くことはありません。なので、レジリエンスを高めておくことは、困難を乗り越えて、不幸な状況から素早く立ち直るためにも大切なことなんですね。
それでは、どうすればレジリエンスは高められるのでしょうか?実はレジリエンスが高い人には、「過去に大きな困難を乗り越えた経験」がある人が多いという特徴があります。つまり、筋肉を鍛えるときには体に負荷をかける必要があるように、レジリエンスという心の力を鍛えるのにも困難やストレスが必要だと考えられるんですね。
そこで本稿では、
- ストレスは本当にレジリエンスを鍛えてくれるのか?
- ストレスにもレジリエンスに良いストレスと、悪いストレスの2種類があるのでは?
を調べてくれたマッコーリー大学の研究(*1)を参考に、ストレスを活用してレジリエンスを高める方法について学んでいきましょう。
2種類のストレスと3ヶ月後のレジリエンス
マッコーリ大学の研究では、ストレスを次の2種類に分類しています。
- 挑戦ストレス
乗り越えることで自分の成長につながるタイプのストレス。仕事で言えば、仕事の負荷や求められるスキルの難易度、仕事の期限などのこと。これらのストレスは、適度な量であればモチベーションやパフォーマンスを高めるのにも効果を発揮する。
- 阻害ストレス
自分の成長を阻害してしまうタイプのストレス。仕事で言えば、求められている仕事の不明確さ、相反する指示、組織の無駄なルールなど。これらのストレスは、モチベーションやパフォーマンスを低下する効果しかない。
挑戦ストレスはレジリエンスを高めてくれるけど、阻害ストレスはレジリエンスを低下してしまうと考えられるわけですね。
そこでこの研究では、実験によりこの説を検証していて、ある時点に測定した挑戦ストレス・邪魔ストレスが、その3ヶ月後にレジリエンスが高めてくれるのか?あるいは低下してしまうのか?を検証しています。さらに、3ヶ月後のレジリエンスの変化の効果として、心理的疲労感や不安、うつ、緊張感といった心の負担に強くなっているのかまで測定しています。
結果:2つのストレスとレジリエンスの変化
早速結果を見てみると、まず挑戦ストレスを感じていた人の変化としては、
- 挑戦ストレスの3ヶ月後に、レジリエンスが高まっていた(.18)
- 挑戦ストレスは3ヶ月後の心の負担を直接は減らしてくれなかったが、レジリエンスを高めることで間接的に心の負担を減らしてくれていた
ということ。つまり、挑戦ストレスはレジリエンスを鍛えて、心を強くしてくれる効果があるということです。
一方で阻害ストレスの効果を見てみると、
- 阻害ストレスの3ヶ月度には、レジリエンスは低下してしまっていた(−.28)
- 阻害ストレスは3ヶ月後の心の負担を直接高める効果もあったし、レジリエンスと低下させることで間接的にも心の負担も高めていて、ダブルで心の負担を増やす効果があった
ということ。阻害ストレスは心を弱くしてしまい、さらに心の負担まで大きくしてしまう悪者だと理解して大丈夫でしょう。
つまり、この研究の結論としては、レジリエンスを鍛えるのには、挑戦ストレスを増やして、阻害ストレスは減らすことが大切だということ。単純に心にストレスをかければいいわけではなく、きちんと成長につながるストレスをかけなければいけないわけですね。
まとめ
本稿では「レジリエンスを高めるのにはストレスも必要」という話をしました。
ポイントをまとめると、
- レジリエンスを鍛えるには、心にある程度の負荷(ストレス)をかける必要がある
- ただし、ストレスの種類が大切で、挑戦ストレスはレジリエンスを高めるが、阻害ストレスはレジリエンスを低下してしまう
ということです。
ストレスはゼロと聞くと幸せそうに思えますが、実は適度な挑戦ストレスがあって成長を実感できる方が、ずっと現実的で本当の幸せなのかもしれませんね。ストレスは種類が大切ということでしたが、挑戦ストレスも過剰になってしまうと心が塞がってしまうでしょう。モチベーションに感じるくらいの適度なストレスを目指すと良いのではないでしょうか。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Building Resilience Through Exposure to Stressors: The Effects of Challenges Versus Hindrances