幸福感を上げるには、自然で過ごす時間よりも、自然を感じるちょっとした体験が大切
自然には幸福感を上げる効果があることは、心理学の研究により分かっています。しかし、自然の何が幸福感を上げてくれるのかはイマイチ分かっていない部分もあって
- 自然で過ごす時間が増えると幸福感が向上するのか?
- 自然とのつながりを強く感じるようになると幸福感が向上するのか?
といったことのどちらの効果が強いのかははっきりしていません。。
そこで本稿では、
- 自然の5つの側面の内、どれが幸福感を向上しているのか?
を調べてくれたダービー大学の研究を見てみましょう。
自然の5つの側面と幸福感
ダービー大学の研究では、2096人を対象に、普段の自然との触れ合い方と幸福感のデータを取得しています。このときに自然の触れ合い方は次の5つの側面に分類されています。
- ①自然とのつながり
自分と自然にはどれだけ重なり合ってつながっている部分があるのか?を主観的に判断して1〜7点のスケールで回答
- ②自然で過ごす時間
1週間のうちに自然で1時間以上過ごす日が何日あるか
- ③自然を直接感じる経験
庭でゆっくり過ごすとか、鳥の鳴き声に耳と傾けるとか、花の匂いを嗅ぐとか、自然を直接感じるちょっとした経験をどれだけ頻繁にしているか
- ④自然の間接的な経験
テレビや写真などで自然を見たり、家族と自然や動物に関する話をしたりと、直接自然に触れないけど、間接的に自然に触れる機会がどれだけ多いか
- ⑤自然の知識
野草や鳥の知識が豊富だったり、自然に関する勉強や研究をしていたりと、自然に関する知識がどれだけ豊富か
以上、5つの自然の側面について、ダービー大学ではどれが幸福感の向上につながっているのかを分析してくれています。このときに、幸福感も4つに分類されていて
- どれだけ幸福だと感じているか?
- 自分の人生にどれだけ価値を感じているか?
- 不安やうつといった精神面の健康が損なわれていないか?
- 身体的に健康か?
となっています。
結果
早速結果を見てみると、
- 幸福感は、直接の自然の経験で一番大きく向上し、続いて自然とのつながりでも向上していた
- 人生の価値は、自然とのつながりで一番大きく向上し、続いても直接の自然の経験でも向上していた
- 精神的な健康は、自然とのつながりで一番大きく向上し、続いても直接の自然の経験でも向上していた
- 身体的な健康は、自然で過ごす時間で一番大きく向上し、続いて自然とのつながりでも向上していた
ということ。
5つの側面では、①自然とのつながりを強く感じることと、③自然を直接感じる経験を多くすることが特に幸福感にとってプラスである事がわかります。なので、単純に自然で多くの時間を過ごせばいいわけではなく、花の匂いを嗅ぐなどのちょっとした自然の経験を取り入れてみると良いでしょう。
ちなみに、直接の自然の経験として特に効果が高かったのは、
- 庭でリラックスする
- 野生の花の匂いを嗅ぐ
になっています。これらは自然の写真を撮るとか、野鳥の鳴き声を聞くとかよりも、大きな効果が得られているので、試してみると良いでしょう。
まとめ
本稿では「自然のどの側面が幸福感を向上するのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 自然で幸福感を向上するには、自然とのつながりを強く感じることと、ちょっとしたことでも自然を直接体験することが大切
- この2つと比べて、自然で過ごす時間や、テレビや会話を通じた間接的な自然の体験、自然の関する知識は幸福感の向上効果は弱めになっている
ということ。
自然の中にいる時間よりも、ちょっとした自然の体験が大切ということなので、自然で幸福感を向上させたいときは、ちゃんと自然に意識を向けて、自然を感じるようにしましょう。登山のような自然に直接関連したアクティビティに参加するのも良いですね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Moments, not minutes: The nature-wellbeing relationship