幸せはポジティブな感情でなく、自分に合った感情を感じることが大切なのでは?という研究
幸せとはポジティブな感情を多く感じて、ネガティブな感情が少ないことという考え方が主流です。しかし、幸せの定義は人それぞれで、物事を達成した達成感に強く幸せを感じる人や、家族との愛情に幸せを強く感じる人など様々です。もちろんこれには文化的な違いも影響していて、アメリカの文化では強いポジティブな感情を求める傾向強いが、アジア圏ではポジティブな感情でももっと静かな形の幸せを好むという傾向があったりします。
そして、古代ギリシャの遡っても、幸福とは単純なポジティブ感情ではないという考え方があって、それを唱えたのかアリストテレスです。アリストテレスの考えでは、幸福とは自分に合った感情を感じることで、怒りなどのネガティブな感情すらそれを本人が求めるのであれば幸福の一つだと言うんですね。
そこで本稿では、
- 自分が望む感情と実際に得られる感情のギャップが少ないほど幸福感は高まるのか?
を調べてくれたヘブライ大学らの研究を見ていきましょう。
自分が望む感情と幸福
ヘブライ大学の研究では、感情を次の4つの分類に分けて調査をしています。
- 自己超越感情(愛情、共感、信頼など)
- 保護感情(リラックス、安心、静けさなど)
- 負の自己増強感情(怒り、敵意、憎しみなど)
- 開放性感情(好奇心、情熱、興奮など)
これらの四つの感情は人によって好みが変わるので、
- それぞれの感情をどのくらい望むのか?
- 日々それらの感情をどのくらい感じているのか?
の二つを測定して、両者の差分から各感情の要求と経験のギャップを算出しています。同時に幸福感も測定しているので、このギャップが幸福感とどう関係しているのかを分析したわけですね。
また、4つの感情の好みの傾向は文化的な違いを大きく受けることが予測されるので、ブラジル、中国、ドイツ、ガーナ、イスラエル、ポーランド、シンガポール、アメリカの8カ国にわたって、総計2,324人のデータが取得されています。
結果:
早速調査の結果を見てみると、
- 国によってどの感情を強く望むのか、そしてどの感情を日々感じやすいのかが違っていた
- どの国でも各感情の自分が望む量と実際に経験する量のギャップが大きくなるほど幸福感は低下した
- また、このギャップが大きくなるほどうつ症状も増えていた
ということ。つまり、予想の通りに自分が望む感情を自分が望むように感じられるときに幸福感は高まるという結果が得られたわけですね。ちなみに、この結果は負の自己増強感情(怒り、敵意、憎しみなど)でも同じ。怒りや憎しみのネガティブな感情でも、自分がそれを望んでいれば幸福感を向上してくれていたんですね。
ちなみに、国によってどんな違いがあったのかというと、
- 先進国になるほど自己超越感情(愛情、共感、信頼など)が幸福感を大きく向上していた
ということ。自己超越感情は人間関係に深く関わる感情です。先進国になって生活に不便がなくなれば、社会的なつながりを充実させることが幸福感を上げるのに大切なようですね。
まとめ
本稿では「幸福感と感情の適性」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 幸せの形が人それぞれ違うように、人によって望む感情の種類も異なる
- 幸福とはポジティブな感情が多いことではなく、自分に合った感情を多く感じられること
- それがネガティブな感情であったとしても、自分が望むなら幸福感を向上してくれる
ということ。
筋トレできついとか辛いってネガティブな感情を感じるのに、それに達成感を感じて求めてしまう自分がいるのも、まさに今回の研究がいう幸福感なのでしょう。ということで、幸せを考えるときには、まずは自分らしさを軸に考えるようにしていきましょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : The Secret to Happiness: Feeling Good or Feeling Right?