ギャンブラーの誤謬とホットハンドの誤謬。確率に関する思い込みに関する研究
人は機械のように常に冷静で正確ではないので、確率を正しく解釈するのが苦手です
例えば、「90%の確率で成功する」と「10%の確率で失敗する」はどちらも同じ成功確率ではありますが、人の感じ方としては90%で成功と言われた方がずっと良い選択肢のように見えます。他にも確率を見誤ってしまう有名な例がギャンブラーの誤謬とホットハンドの誤謬。両者の内容は後ほど詳しく説明しますが、本稿ではなぜ相反するこれら二つの誤謬が生まれてしまうのか?について見ていきましょう。
ギャンブラーの誤謬とホットハンドの誤謬
ギャンブラーの誤謬
ギャンブラーの誤謬とは、ある一方に確率が傾いていたら、次はもう一方が出る確率が高まると考えてしまう間違いです。例えば、表と裏がそれぞれ50%の確率で出るコイントスをしたときに、もし表が3回連続で出たら、次は流石に裏が出るだろうと考えてしまうことですね。どれだけ表が連続で出ようが、確率は常に50%のはずですよね。
ホットハンドの誤謬
ホットハンドの誤謬とは、一回成功すると、その次も連続で成功しやすいと考えてしまう間違いです。例えば、バスケットボールでシュートを成功した選手は、続けて2回目のシュートも成功しやすいと考えてしまうこと。これは一見本当に思えるかもしれませんが、実際に検証した研究では、1回目のシュートを成功させた選手は次のシュートはむしろ外れやすいという結果になっています。2回連続でシュートが決まると印象に強く残りますし、その選手がホットな状態になっているように思えるため、このような勘違いをしてしまうわけですね。
ギャンブラーの誤謬とホットハンドの誤謬の矛盾
ギャンブラーの誤謬は連続で成功しているほど次の失敗の確率を高く感じることで、逆にホットハンドの誤謬は連続で成功するほど次の成功の確率を高く感じることです。つまり、両者は相反するもので、なぜ人は相反する二つの誤謬を起こしてしまうのかがよく分かっていないんですね。
この点を分析してくれたのがロンドン市立大学の研究で、
- 確率で扱っている内容によって、ギャンブラーの誤謬が起きてしまうか、ホットハンドの誤謬が起きてしまうかが変わるのでは?
ということを実験してくれています。
実験:どんな確率が二つの誤謬を起こすのか?
ロンドン市立大学の研究では、
- 機械的な確率の場合には、ギャンブラーの誤謬が起こりやすい
(サイコロやルーレット、課金ガチャなど) - 人の能力が関係する確率では、ホットハンドの誤謬が起こりやすい
(バスケットのシュート、ゴルフのパターなど)
という切り口で二つの誤謬を切り分けて考えています。人は成功するとその波に乗ってホット状態になるという、まあ分かりやすい切り口ですね。
それでこれを確かめるために、
- 機械的な確率として、ルーレットで赤と青のどちらが出るかの予測
- 人の能力の確率として、ルーレットの赤・青の予測が当たるかどうかの自信度
の二つを測定しています。ルーレットは機械的な確率なので、赤ばかりでれば次は青が出やすいと間違いやすい。自分がする赤・青の予測の的中確率は、連続して当たるほど自分は波に乗っていると感じて、次も当たりやすいと思いやすいというわけですね。
結果:
実験の結果を見てみると、
- 機械的なルーレットの確率は、赤・青の一方が連続して続くほど、もう一方が出る確率が高いと予測していた
(一方が5回連続していたら、もう一方が出る確率は60%くらいだと予測していた) - 自分の予測の自信では、連続して予測が当たるほど自信は高まって、次に当たる確率が高いと感じていた
ということ。つまり、想定通りに機械的な確率ではギャンブラーの誤謬、人間の能力的な確率ではホットハンドの誤謬が出たわけですね。
ちなみに、自分の予測の自信ではもう一つ面白いことも分かっていて、
- 自分の予測が連続で失敗するほど、自信は低下して次に予測が当たる可能性も低く感じていた
ということ。人の能力的な確率では、ホットハンドと真逆で、失敗するほど次も失敗しやすいという思い込みもあるようです。ギャンブルなどで連続で負けたときに、もうダメだと泥沼にハマったような気持ちになってしまうのがまさにこの効果ですね。
まとめ
本稿では「ギャンブラーの誤謬とホットハンドの誤謬」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- ギャンブラーの誤謬では、一方に確率が偏ると、もう一方が出やすく感じてしまう
- ホットハンドの誤謬では、連続して成功すると、次も続けて成功しやすいと感じてしまう
- ルーレットのような機械的な確率ではギャンブラーの誤謬が起きやすく、シュートの成功確率のような人間の能力に関する確率ではホットハンドの誤謬が起きやすい
ということ。
スマホのゲームアプリでよくあるガチャ機能で、連続して当たらなかったんだからもう一回やれば当たるはずだと感じてしまうは、まさにギャンブラーの誤謬ですね。確率の解釈を間違えると泥沼にハマってしまうこともあるので、二つの誤謬には注意していきましょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : The hot hand fallacy and the gambler’s fallacy: Two faces of subjective randomness?