チームのコミュニケーションが多いほどパフォーマンスは向上するのか?
多くの仕事は自分一人で行うのではなく、チームで分担しあって進めていくと思います。そのため、チーム内での情報共有であったり、仕事のやりとりのコミュニケーションが向上すれば、チームのパフォーマンスも上げることができます。
しかし、どんなコミュニケーションが良いコミュニケーションなのかはいまいち曖昧なところ。たくさんのコミュニケーションを取るチームがパフォーマンスが高いという研究結果もあれば、必要最低限のコミュニケーションしか取らない一人一人がプロフェッショナルなチームもパフォーマンスが高いということもあります。
そこで本稿では、
- どんなコミュニケーションがチームのパフォーマンスを高めるのかを、チームのタイプ・タスクのタイプ・コミュニケーションのタイプの三つ側面から分析
してくれたライス大学の研究を見ていきましょう。
コミュニケーションとチームのパフォーマンス
ライス大学の研究ではチームのコミュニケーションとパフォーマンスに関する150件もの研究をメタ分析でまとめています。それらを合わせると9,702チームのデータが含まれるということで、大規模なデータセットとなっています。
これらの研究で以下の三つのポイントがコミュニケーションに影響するポイントとして分析がされています。
ポイント1:どんなチームなのか?
- メンバーはお互いの知識のレベルを把握しているか?
- 情報のやり取りは面と向かって話すことが多いか?メールなどの電子機器が多いか?
- 上下関係に厳しいリーダーシップか?フランクにシェアするリーダーシップか?
ポイント2:どんなタスクか?
- タスクを進めるのにメンバー同士の関わり合いが必要か?
- タスクの種類はどんなものか?
(サービス業、マネジメント、交渉、問題解決など)
ポイント3:どんなコミュニケーションか?
- コミュニケーションの頻度と質のどちらが大切か?
- タスクに関するコミュニケーションと、人間関係を深めるコミュニケーションで違いがあるか?
- コミュニケーションの測定方法はどんなタイプか?
(情報共有の量を測定するとか、オープンで話しやすい環境かどうかを測定するとか)
結果:コミュニケーションとパフォーマンス
それではメタ分析の結果はどうなったのでしょうか?
分析結果のポイントを見てみると、
- コミュニケーションは大抵どんなタスクのどんなチームでもパフォーマンスに影響していた
- コミュニケーションは頻度よりも質の方がチームのパフォーマンスに強く影響していた
- お互いの知識レベルを把握しているチームほど、コミュニケーションがチームのパフォーマンスを強く向上していた
- 直接顔を合わせたコミュニケーションが多いチームほど、コミュニケーションがパフォーマンスに強く影響していた
ということ。
つまり、チームのパフォーマンスを向上するにはやっぱりコミュニケーションは大切で、コミュニケーションは量を増やすよりも質を上げる方が効果が高いということです。お互いの知識レベルが把握できると良いのも、相手のレベルに合わせて効果的にコミュニケーションが取れるようになったり、困った時に誰とコミュニケーションを取ればいいのかが分かるようになって無駄なコミュニケーションが減るからでしょう。
結果2:どんなタイプのコミュニケーションが良いのか?
続いてどんなコミュニケーションの測定の仕方をした研究で、高くパフォーマンスの向上が確認されていたのかというと、
- メンバーがチームにどれだけ情報を提供しているかを測定した研究が、一番パフォーマンスの向上効果が高かった
- メンバーが自分の知識や専門をチームに共有しているかを測定した研究が、次にパフォーマンスの向上効果が高かった
ということ。
つまり、単純にオープンな雰囲気のチームでコミュニケーションが良好というよりは、知識の共有がどれだけされているかが大切なポイントだと言えるでしょう。
まとめ
本稿では「チームのコミュニケーションが多いほどパフォーマンスの向上するのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 大抵どんなタスクのどんなチームでもコミュニケーションは大切
- コミュニケーションは量よりも質の方がパフォーマンスに強く影響する
- お互いの知識レベルを把握することと、メンバーからチームへの情報共有が増えることがパフォーマンスを向上に役立つ
- 直接顔を合わせたコミュニケーションが多いチームほど、コミュニケーションの影響力が強い
ということ。
「チームのみんなでコミュニケーションをよく取っていこう」は良く聞くフレーズですが、ただコミュニケーションの量を増やすだけでは、無駄なコミュニケーションが増えてパフォーマンスが低下してしまうことも考えられます。コミュニケーションは量よりも質が大切ということなので、自分の知識を共有してあげるような質の良いコミュニケーションを心がけましょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]