お金を少し意識するだけでも、裏切りやすくなってしまうのか?の研究
プライミングと言って、人の選択はその前のちょっとした先行刺激の影響を受けて変わることがあります。例えば、オンラインショッピングで商品を買う確率が背景の画像で変わったり、老化に関する言葉をみると無意識のうちに歩くスピードが遅くなったりとするんですね。
それで今回注目するのはお金のプライミング。そもそもお金に固執すると自己中心的になってしまうことがこれまでの研究により分かっています。お金を意識し出すと自分の利益ばかり考えて、周りの人を助けたり、利益を配分したりする行動が減ってしまうわけですね。そうするとお金をチラッと目にしたりするだけのプライミングでも、その後に自己中心的な行動が増えてしまう可能性が考えられるわけですね。
そこで本稿では、
- お金に関する言葉を目にするだけでも、他人を裏切る確率が高まってしまうのでは?
ということを実験してくれた研究を見てみましょう。
お金のプライイングと囚人のジレンマ
この研究では囚人のジレンマという心理学の有名な実験に、お金のプライミングを追加しています。
囚人のジレンマとは2人の囚人役の実験の参加者がいて、
- 二人とも協力して黙秘した場合
→ どちらも懲役2年ずつ - 一人が協力して黙秘したのに、もう一人が裏切って自白した場合
→ 黙秘した人の懲役が10年で、自白した人の懲役が0年 - 二人とも裏切って自白した場合
→ どちらも懲役5年ずつ
という条件で、協力と裏切りのどちらかを選択してもらう実験です。
全体最適で言えば二人で協力して2年ずつが一番懲役は少ないのですが、仲間が裏切ってしまうと10年もの懲役を課せられてしまうというジレンマになっているわけですね。
それでこの研究ではお金のプライミングを追加していて
- お金に関する単語を目にした後で囚人のジレンマを行った場合、お金のプライミングの影響で裏切りを選択する確率が高まるのか?
という点を分析しています。
結果:お金が裏ぎりを高めるのか?
早速結果を見てみると、
- お金のプライミング無しで囚人のジレンマを行った場合
80%の確率で協力が選ばれ、20%の確率で裏切りが選ばれた - お金のプライミング有りで囚人のジレンマを行った場合
66.7%の確率で協力が選ばれ、33.3%の確率で裏切りが選ばれた
ということ。
お金の関するプライミングを受けるだけで、無意識のうちに裏切りを選択する確率が13%ほど高まってしまっています。
今回の実験で使われたお金のプライミングは、お金に関するランダムに並んだアルファベットを適切に並び替えて、お金に関する単語を完成させるというもの。ちょっとしたお金のプライミングで自己中心的な選択の確率が増えてしまうので注意をしましょう。
まとめ
本稿では「お金のプライミングと裏切り」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- お金に関する言葉を目にするだけでも、無意識のうちに自己中心的になって、裏切りを選んでしまう可能性が高まってしまう
ということ。
現実世界で言えば、お金の報酬が良いという理由で集まった人たちは、自己中心的に行動しやすく、チームワークが低くなってしまう可能性があります。協力が必要な場面ではお金の話は控えた方が良いかもしれませんね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : The influence of personality and money priming on outcomes in the prisoner’s dilemma