失敗から学ぶを取り入れれば、勉強の学習効率はもっと上がるのか?
「失敗は成功のもと」と言われるように、失敗の経験から学ぶことは正しい道を知るための手段でもあります。
これは勉強でも通じるもので、スラスラと解ける簡単な問題を繰り返してもなかなか実力は伸びず、頑張って困難な問題に挑んだけど解けなかったという失敗の経験の方が学びは大きいでしょう。そこで本稿では、
- 小さな失敗を繰り返して学べば、学習効果はより大きくなるのでは?
ということを調べてくれたスイスの研究を見てみましょう。
失敗と学習
失敗の経験が学習効果を上げるという説は以前から研究がされていて、
- 内容の説明をした後で、問題を解いてもらう方法
- いきなり問題を解かせて失敗させた後で、内容を説明する方法
の2つの方法の学習効果が実験されています。
前者が教科書で内容を一通り学んだ後で、練習問題を解くという一般的な方法。一方で後者は、内容を教える前から自分自身で考えさせるという、生徒からしてみれば結構大変な学習方法ですね。
それではどちらの学習方法が良いのかというと、両者にあまり明確な差はなく、いまいちよく分からないというのが現状の研究結果ということ。そこでスイスの研究では、これまでの研究では一つの失敗に15分〜60分かけていることを問題視していて、
- 2〜3分の細かい失敗を多く経験するようにすれば、説明が後でも学習効果が高まるのでは?
ということを実験しています。
実験:失敗しない方法と細かい失敗の方法
この実験では、85名の生徒を対象に、数学の勉強を次の2つの方法で教えています。
- 説明(例題+練習)→問題(2〜3分)の順で6セットの勉強を繰り返すグループ
- 問題(2〜3分)→説明(例題+練習)の順で6セットの勉強を繰り返すグループ
の学習効果を比較しています。学習効果としては、勉強した内容のテストが行われていて、
- 翌日のテストの点数
- 1週間後のテストの点数
の2種類が測定されています。
さらに、これらのテストに中身には
- 例題と同じ形式の問題
例題で学んだ内容をそのまま解くだけの問題 - コンセプトの問題
例題で学んだ内容についてその概念を説明させる問題 - 転移の問題
例題で学んだ内容を他の形式の問題に適応させる応用問題
の3種類が含まれています。
結果:
実験の結果を見てみると、
- 先に問題を解かせて細かく失敗した人は、例題と同じ形式の問題の学習効果が高かった
- コンセプトの問題は両グループで差がなかった
- 転移の問題は両グループで差がなかった
ということ。
なので、先に例題や練習問題で解き方を教えてもらって、そのままその方法を使った問題を解くよりは、説明なしで問題を解いて失敗した方がその問題自体の学習効果は上がるということ。
残念ながらコンセプトの問題や学んだ内容を転移させる応用問題では学習効果は高まらないようです。今回の実験では2〜3分の細かい失敗を6回繰り返すようにデザインしているので、あまり大きな失敗もなく、深い内容の学習効果までは高まらないようですね。
まとめ
本稿では「失敗の繰り返しは学習効果を高めるのか」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 説明の前に2〜3分自力で問題に挑戦して失敗すると、その問題の学習効果が向上する
- この方法でもコンセプトの学習や知識を応用するタイプの問題の学習効果は向上しない
ということ。
先に説明をしてもらったほうが効率的に学べそうですが、意外と自分で悩むことが学習効果を高めたりするんですね。世の中には事前に正解が分からない問題も多いので、そうした場面でも失敗覚悟で挑戦して知識を高めていきましょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Micro productive failure and the acquisition of algebraic procedural knowledge