有酸素運動で脳の海馬は鍛えられるのか?
ボケを防止するため、学習効率を上げるためなど、脳トレで脳を鍛えている人もいるのではないでしょうか?
しかし、残念なことに脳トレはそのゲーム自体のうまさは上達するものの、なかなかそれらのトレーニングが全般的な脳の能力までは向上してくれないことがわかっています。
それでは脳を鍛えるのにはどうすればいいのか?
なんと、運動をすれば良いということが知られています。これは「脳を鍛えるには運動しかない」という本でも書かれていること。この本はとても良い本なので、興味がある人は一度読むことをオススメします。
そこで本稿では、脳と運動の関係について
- 有酸素運動をすると、脳の海馬は大きくなるのか?
について調べてくれたウェスタンシドニー大学らの研究を見てみましょう。
有酸素運動と海馬
海馬といえば脳の中で記憶に関わる部位として有名です。なので、海馬が鍛えられれば、勉強した内容を長く記憶できたり、昨日何を食べたっけ?みたいな物忘れも減らせる可能性があるわけですね。
そこで、ウェスタンシドニー大学の研究では、有酸素運動と海馬のボリュームの関係を調べた研究14件を集めてメタ分析でまとめています。これらの研究で行われた有酸素運動はウォーキングやエアロバイクといったもので、実践もしやすいものとなっています。ちなみに、データの規模としては14件の研究を合わせて737人分のデータということです。
結果:有酸素運動で海馬は大きくなるのか?
早速、メタ分析の結果を見てみると、
- 海馬全体のボリュームとしては、有酸素運動をしても有意には向上していなかった
(効果量g=0.120) - 海馬の部位を左右に分けてみると、左側の海馬のボリュームは有酸素運動で向上していた
(効果量g=0.265)
ということ。
有酸素運動により海馬の左側の部位のボリュームが確かに向上するという結果になっています。やはり運動をすれば脳を鍛えられるというのは本当のようですね。
結果2:高齢者の場合とどうか?
続いて、高齢者に絞って分析した結果を見てみると、
- 有酸素運動をする高齢者は、有酸素運動をしない高齢者よりも、海馬のボリュームが右側も左側も大きい傾向があった
(右側の効果量g=0.237、左側の効果量g=0.355) - 高齢者の場合には、海馬が大きくなっているわけではなく、加齢によって海馬が小さくなるのが防がれていた
ということ。
年齢をとると脳は萎縮してボケてしまうわけですが、有酸素運動をすればそれを防ぐことができるわけですね。なので、記憶力を上げたい学生でも、ボケを防止したい高齢者でも、有酸素運動は脳を鍛えるのに役に立ってくれるでしょう。
まとめ
本稿では「有酸素運動で海馬は大きくなるのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 有酸素運動をすると海馬の左側が鍛えられる
- 高齢者の場合には、海馬が増えるのでなく、加齢で海馬が縮小するのが防げる
ということ。
学生時代には体育の授業や部活動で運動する機会も多いのであまり問題はないでしょう。大人になって、特に高齢になったときに体が弱いと、有酸素運動もしにくくなってしまうので、普段から有酸素運動で脳も体も鍛えておきましょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]