有酸素運動や筋トレといった運動の種類の違いで、トレーニング効果はどう変わるのか?のメタ分析
運動には大きく2つの種類があって
- 有酸素運動系(ジョギングやサイクリング、ウォーキングなど)
- 筋トレ系 (ベンチプレス、スクワット、腕立て伏せなど)
で運動の効果も変わってきます。
もちろん運動の目的も人それぞれで
- 体重を減らしたい人
- 筋肉をつけてかっこいい体を作りたい人
- 持久力をつけたい人
- 健康な体でいたい人
など、目的の応じて適切な運動を選ぶ必要があります。
そこで本稿では、
- 肥満の人が運動を続ける場合に、運動の種類に応じてどのように効果は変わるのか?
についてまとめてくれた研究を見てみましょう。
運動の種類と効果
マーストリヒト大学の研究では、
- 有酸素運動
- 筋トレ
- 有酸素運動+筋トレ
- HIIT(高強度インターバルトレーニング)
の4種類の運動を続けた場合に、どのような運動の効果が得られるのかを分析しています。この研究では、運動の種類による効果の違いを検証した66件の研究をメタ分析でまとめてくれています。これらの研究の特徴としては、
- 合計のサンプル数は3954人
- BMIが25以上の太り気味の人、あるいはBMIが30以上の肥満者を対象にしている
- 運動の期間は2週間〜70週間(中央値は12週間)
という感じになっています。
結果:VO2Max
まず最初に持久力を表す指標であるVO2Max(最大酸素摂取量)のトレーニング効果を見てみると、次のようにどの運動方法でも効果はあることが確認されています。
- 有酸素運動(MD=4.08[ml/min/kg])
- 筋トレ(MD=4.52[ml/min/kg])
- 有酸素運動+筋トレ(MD=4.57[ml/min/kg])
- HIIT(MD=4.31[ml/min/kg])
それでは、どのトレーニングが一番効果が高いのかを、有酸素運動を基準に比較した分析結果で見てみると、
- 筋トレ (MD=−1.40)
→有酸素運動より効果が低い - 有酸素運動 + 筋トレ (MD=0.38)
→有意な差ではないので、有酸素運動のみと同じくらいの効果 - HIIT(MD=0.99)
→有酸素運動より効果が高く、一番VO2Maxのトレーニング効果が大きい
となっています。
HIITとは短時間で限界まで心拍数を追い込むようなトレーニング方法になります。通常の有酸素運動よりも、強度がずっと高いので、トレーニング効果も大きいのでしょう。
結果2:筋力の向上
次に筋力の向上効果を見てみると、
- 有酸素運動 (MD=0.26)
→有意な差ではなく、筋力の向上効果はなし - 筋トレ (MD=0.74)
→一番筋力の向上効果が高い - 有酸素運動+筋トレ (MD=0.62)
→有酸素運動を組み合わせでも筋トレすれば効果あり - HIIT (街頭の研究なし)
となっています。
やはり筋力をつけたければ、筋トレをする必要があるわけですね。マラソン選手には細い体の人が多いのを考えればわかるように、有酸素運動には筋力の向上効果はありません。むしろ有酸素運動は脂肪と一緒に筋肉も減ってしまう可能性があるので注意が必要です。脂肪を減らしつつ、筋肉を維持して太りにくい体にしたい場合は、有酸素運動+筋トレが一番効果的かもしれませんね。
結果3:運動機能の向上
体のバランス感覚や柔軟性、歩行速度といった、基本的な運動機能の向上については、
- 筋トレまたは、有酸素運動+筋トレで、運動機能が向上していた(MD=0.66)
ということ。ちなみに体重を落とすためには、有酸素運動が効果的で(HIITも効果大)、筋トレと組み合わせるとさらに効果アップということも他の研究で分かっています。
老化で体が弱くなるのを防ぎたい場合などは、スクワットなどの筋トレを行ってみるのも良いかもしれません。
まとめ
本稿では「運動の種類とトレーニング効果」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 持久力(VO2Max)を向上させるには、有酸素運動系(特にHIIT)が効果が高い
- 筋力を向上させるには筋トレが一番効果的
- 運動機能を向上させるには、筋トレまたは有酸素運動+筋トレが効果的
ということ。
目的別の運動方法の目安としては
- 痩せたい人
→有酸素運動で脂肪を燃やすつつ、少し筋トレもして筋力の低下を防ぐ - かっこいい体を作りたい人
→筋トレで筋肉を増やし、その後に有酸素運動で体重を絞り込む - 持久力をつけたい人
→HIITのようにできるだけ強度の高い有酸素運動をする - 健康な体でいたい人
→週に150分程度の有酸素運動を習慣にしつつ、できれば筋トレも少しやる
くらいが良いのではないでしょうか。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]