【思考を磨く心理学】曖昧さを受け入れられない人ほど、間違った結論に飛びついてしまうという研究
今の世の中は不確かなことが多く、確かな結論を導き脱すことは難しいものです。一昔前までは当たり前と思われていた知識も、数年後にはすでに時代遅れとなり、古い知識が足枷となってしまうこともあります。つまり、新しい事実や世の中の変化に合わせて、結論を絶えずアップデートしていくことが必要になるわけですね。
しかし、人によっては、ニュースなどで少し情報を見聞きしただけで、それが絶対的な結論だと思ってしまったり、今までの知識を疑うことができずに、なかなか情報をアップデートできない人もいます。
本稿では、こうした間違った結論に飛びついてしまう人の心理として
- 結論が曖昧な状態であることに耐えられない人ほど、間違った結論にすぐ飛びついてしまうでは?
ということを確かめてくれた研究を見てみましょう。
心理実験:結論づけたがりの間違い
ロンドン大学の研究では、ビーズタスクという問題を用いて、結論を早く付けたがる人がどれだけ間違いやすいのかを実験しています。ビーズタスクとは、下図のように2つの容器に2種類の色のビーズが、それぞれ異なる割合で入っています。
このときに、どちらか一方の容器からビーズを取り出していきます。例えば、
黒→黒→黄→黒→黒→黒→黄→・・・
のような感じですね。このときに参加者はビーズを取り出すたびに、このビーズはどちらの容器から取り出されているのかを推測して、その推測がどれだけ自信があるかを0〜100%で答えていきます。
上記の例では、黒が多いので左側の容器であることが推測できます。しかし、この後に黄色がたくさん続けば、やっぱり左の容器だったと結論が変わっていきますよね。うまく情報がアップデートできる人は、ビーズを取り出すたびに、こうした結論の転換や推測の自信度の調整をうまく実施できます。一方で、古い情報に固執してしまう人は、少し黄色が増えただけでは、まだまだ黒が多い容器の方だと、これまでの推測の自信を弱めることがありません。
結果:
この研究では、
- 早く結論をつけたがるタイプの人(上位25%)
- 結論が曖昧のままで大丈夫な人(下位25%)
の両極端の人で、ビーズタスクの結果がどう変わるのかを比較しています。
その結果が次のグラフになっていて、横軸が取り出したビーズの数、縦軸が結論の確信度となっています。
(ビーズの順番は、黒→黒→黒→黄→黒→黒→黒→黒→黄→黒)
このグラフから分かるのは
- 早く結論をつけたがる人(グラフの太線)は、4個目と9個目で少数の黄色のビーズが出ても、ほとんど結論の確信度が低下せずに、それまでの結論を維持している
- 結論が曖昧のままで大丈夫な人(グラフの細線)は、4個目と9個目で少数の黄色のビーズが出ると、確信度がガクッと低下してそれまでの結論を疑っている
ということ。
つまり、早く結論をつけて安心したいと思っている人ほど、最初に飛びついた結論を疑うことなく信じ続けてしまうということです。そのため、「もしかしたら今の結論は間違っていて、将来覆るかもしれない」という曖昧さを受け入れることが、常に最新の結論へ到達するためのマインドとして大切なわけですね。
まとめ
本稿では「間違った結論に飛びついてしまう人はどんな人なのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 結論を早くつけたがる人ほど、最初に信じた結論をその後も疑うことなく信じ続けてしまう
- 常に最新の結論へアップデートするには、結論の曖昧さを受け入れるマインドが必要
ということ。
情報はこれが絶対正しいというものではなく、賛成派の意見もあれば、反対派の意見もあります。さらに、賛成と反対の両者の意見にも良い面と悪い面があったりします。つまり、情報は固定的なものではなく、多面的で常にアップデートして広がっていくものと思っていた方が良いのかもしれませんね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Need for Closure and jumping-to- conclusions in delusion-prone individuals