時間の単位を変えるだけで、将来のための行動が増えるかもしれないという研究
過去・現在・未来とあって、人はどうしても現在を重視してしまいがちです。
例えば、
勉強した方が将来楽になるけど、勉強は大変だから今はゲームがしたい。
老後のために貯金しないといけないけど、欲しいものができるとすぐ買っちゃう。
とかですね。
それではなぜ現在を重視してしまうのかというと、人は現在の物事の価値と未来の物事の価値を比べるときに、その未来が遠くなる程、未来の物事の価値を甘く見積もってしまうからなんですね。
これは仕事の場面でもよくある話で、例えば他の人から「今この仕事を手伝ってくれないか」と頼まれたときに、今は忙しいからと断ることは比較的簡単です。一方で、「来月までにこの仕事をやってくれないか」と頼まれると、「じゃあ今度やっておくよ」とついつい受けてしまう人が増えると思います。でも結局は未来も忙しいままなので引き受けてしまったことを後悔することがあるわけです。
なので、こうした未来の価値の見積もりの低下を防いで、現在の段階から将来を見据えた行動を取るために大切なのは、未来をより近く感じることなんです。
そして、ミシガン大学らの研究によると、「日・月・年」といった時間の単位を変えるだけでも、未来の感じ方が大きく変わるという面白い効果が確認されたんですね。
本稿ではこの研究を参考に、先延ばしせずに未来のための行動を増やす思考について学んでいきましょう!
時間の単位で未来の感じ方が変わる!
実験1:未来の予測と時間の単位
まず最初にミシガン大学の研究で実験したのは、物事がいつ起こるのかがわからない状態で、その物事がいつ起こるのかを予想するときに頭の中で考える時間の単位(日・月・年)を変えると、予測する日にちに差は出るのかです。
どのように実験したのかというと、参加者は次の3つシナリオを読んでもって、物事がいつ起こるのかを推測してもらいます。
ジョンは友達の誕生日パーティであげるプレゼントを選んでいます。
それではこのパーティはいつだと思いますか?
ダンは中間試験の勉強をしています。
それでは中間試験はいつだと思いますか?
マークは結婚のために貯金をしています。
それではマークはいつ結婚すると思いますか?
このときに参加者は2つのグループに分けられます。
- 細かい単位で推測するグループ
シナリオ1・2では「何日後」、シナリオ3では「何ヶ月後」という単位で推測するグループ - 大きな単位で推測するグループ
シナリオ1・2では「何ヶ月後」、シナリオ3では「何年後」という単位で推測するグループ
そして結果がどうだったのかというと
細かい単位グループの推測 | 大きな単位グループの推測 | |
シナリオ1 | 3.8日後 | 23.5日後 |
シナリオ2 | 5.4日後 | 18.2日後 |
シナリオ3 | 10.5日後 | 21.9日後 |
ということ。大きな単位グループの方がずっと大きな値になっていますね。つまり、物事がいつ起こるかを考えるときに、細かい時間の単位で考えるほどより近い未来に起こりそうだと感じられるということが分かったんですね。
実験2:時間の単位と未来の感じ方
そして次に実験したのが、いつ起こるのかが決まっている事に対して、時間の単位を変えることで未来の感じ方が変わるのかどうかです。
この実験でも2つのグループに分けて次のようなシナリオをいくつか読んでもらったんですね。
今あなたの子供が生まれました。
18年後にはこの子供は大学に入るでしょう。
いつからそのための貯金を始めますか?
今あなたの子供が生まれました。
6,570日後にはこの子供は大学に入るでしょう。
いつからそのための貯金を始めますか?
そしてこの2つのグループでどのような違いがあったのかというと
- 細かい時間の単位のシナリオを読んだ人の方が、約4倍も早い時期から未来への行動を開始すると答えた
- 細かい時間の単位のシナリオを読んだ人の方が、現在と未来のつながりを強く感じていた
という結果となっています。
つまり、細かい時間の単位で考える事で、遠い未来のことも現在とつながったより近い未来のことのように感じられるようになり、その結果として未来のための行動を早くから取れるようになったということですね。
この研究ではシナリオを読んで想像上の実験なので、実際の行動まで測定しているわけではありませんが、細かい単位で考えるだけで約4倍も早く行動したいと思えるようになるのは、結構大きいのではないでしょうか。
まとめ
本稿では「未来のための行動を増やすための時間の考え方」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 未来のための行動を増やすには、未来を現在とつながったより近いものと感じることが大切!
- より細かい時間の単位(時・日・月・年など)で考えるほど、未来は近く感じられて、未来のための行動を4倍も早く取れるようになる!
ということですね。
2ヶ月後に試験があると考えるのでなく、60日後に試験があると頭の中で考えるだけで、勉強を先延ばしにしてしまうことがグッと減る可能性があるということですね。これは簡単に使えるテクニックなので、私も実践してみたいと思いました。日めくりカレンダーみたいなものを作ってカウントダウンしていくのも目に付くのでいいかもしれませんね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1: When Does the Future Begin? Time Metrics Matter, Connecting Present and Future Selves