【読書の心理学】文学が好きな人は、人の感情を読み取るのが上手いのか?の研究
小説では登場人物の人間模様であったり、その人の心の中の心理が、様々な言葉で表現でされます。小説によっては、感情を直接的に表現するのでなく、含みを持たせた表現が使われたり、一つのストーリーを様々な登場人物の視点で描かれたりします。
つまり、小説を読むことは、単純な文章の読解力だけでなく。他人の視点に立って考えたり、他人を感情を読み取ったりする能力にも関連していると考えられるんですね。
本稿ではこの点について、
- 文学的な小説をよく読む人ほど、物事を複雑に考えたり。他人の気持ちを読み取るのが上手いのか?
を調べてくれた研究を見ていきましょう。
小説が気持ちの読み取り能力を高めるのか?
トレント大学らの研究では、493人を対象に
- 普段どんな作者の小説を読むのか?
- 物事の原因をどれだけ複雑に考えるか?
- 考え方がどれだけ自己中心的か?
(他人に気持ちになって考えることができていないか?) - 他人に気持ちや社会的な評判をどれだ正確に読み取れるか?
を測定しています。
このときに小説は2つの種類の分類されていて
- 文学的な小説
物語を描く視点が多面的であったり、含みを持たせた表現で気持ちの推測が必要だったりと、文学的に複雑度が高い小説 - 平易な小説
登場人物の感情が直接的に描かれていたり、キャラクターの設定がシンプルだったりと、文学的に複雑でないポピュラーな小説
となっています。文学的に複雑な小説ほど、他人の気持ちの推測能力がつきやすいと考えられるわけですね。
結果:文学的な小説の効果
早速結果を見てみると、まず文学的な小説をよく読む人の特徴として
- 物事を原因をより複雑に考える傾向があった
- 考えの自己中心バイアスが低かった
(他人の視点で考えることができる人だった) - 他人の気持ちを正確に読み取る能力が高かった
- 他人の社会的評判を正確に読み取る能力も高かった
ということ。
想定通りの結果で、普段から文学的に複雑な小説をよく読む人ほど、他人の気持ちを読み取るのか上手いという結果になっています。
結果2:平易な小説の効果
続いて、文学的に簡単で読みやすい小説をよく読む人の特徴としては
- 物事の原因を複雑に考える能力が低い傾向があった
- 自己中心バイアスは低下していなかった
- 他人の気持ちや社会的評判を読み取る能力も特に高まっていなかった
ということ。
なんと文学的に簡単な小説では、他人の気持ちを読み取る能力の向上効果がなくなっています。むしろ、簡単な小説を読むほど、物事をシンプルに考えてしまう傾向が強まっています。なので、共感能力を高めたい場合には、物語や登場人物の感情をより複雑に表現してる小説を読んだ方が良いでしょう。
まとめ
本稿では「文学が好きな人ほど、他人の気持ちを読み取るのが上手いのか?」についてお話ししました
ポイントをまとめると、
- 描写がより複雑な文学的な小説を読む人ほど、他人の視点に立ったり、他人の気持ちを読み取るのが上手い
- 簡単な小説を読む人は、物事をシンプルに考える傾向があって、他人の気持ちを読むのは特に上手くない
ということ。
物事を複雑に考える傾向には賛否があるので注意が必要です。というのも、物事を複雑に考えすぎて、他人の気持ちを気にしすぎると、メンタルが悪化してしまうことも確認されているんですね。なので、共感能力を高めるときには、行きすぎてメンタルが病まないように、自分の気持ちもケアするようにしましょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]