固定観念に捉われずに自由な発想をするためのジェネリックパーツ・テクニック
本稿では、
- 自由な発想力を鍛えるためのジェネリックパーツ・テクニックはどれだけ役に立つのか?
を調べてくれた研究を見ていきたいと思います。
イノベーションと機能的固着の壁
どんなイノベーションも、その起こし方には共通する2つのステップがあって
- これまで違う問題の新しい側面に気づく
- 発見した新しい側面をベースに解決策を見つける
だと言われています。
例えば、
- 昔は家に置いてある固定電話しかなかった
→持ち歩ける電話があれば便利という新しい視点が携帯電話を生んだ
- 携帯電話はボタン操作で、ボタンがあることが当たり前だった
→ボタンは不要という新しい発想がスマホを生んだ
といった感じ。
今となってはスマホは常識ですが、昔の人から見ればスマホなんて発想はできなかったわけです。これまでの常識を超えた視点が、イノベーションを起こすわけですね。
イノベーションの壁
イノベーションを発想するのは難しいもので、どうしても機能的固着という壁にぶつかることになります。機能的固着とは、これまでの常識に固執してしまうことで、物の機能を固定的に考えてしまって、新しい活用方法が発想出来ないことを言います。
機能的固着をもう少しイメージしやすくするために、2つのリング実験という心理学の実験を見てみましょう。この実験では
- 2つの鋼のリング
- ロウソク
- マッチ
が渡されて、鋼のリング同士をくっつけるように言われます。
パッと思い浮かぶ方法は、ロウソクをマッチで溶かして、溶かしたロウでリング同士をくっつけるという方法。しかし、この方法ではロウの強度が足りずに、リングはうまくくっつきません。
それでは正解が何かというと、「ロウソクをバラバラに分解して、ロウソクの芯の系でリング同士を結びつける」というもの。この発想をするには、ロウソクという本来の機能から抜け出して、芯の糸という新しい機能に視点を向けなければいけません。これが機能的固着を脱却するということです。
ジェネリックパーツ・テクニックと機能的固着の脱却
先程の正解をパッと思い浮かんが人は少ないのではないでしょうか。どうしても一番目立つロウの機能を軸に解決策を考えてしまうものですよね。
それではどうすればロウソクの他の機能に目が行くようになるのか?
実はジェネリックパーツ・テクニックという方法が、機能的固着を脱却するのに役立つことが分かっています。どんな方法かというと
- 対象となるものを、サイズや形状、材料などの細かい性質に分解していく手法
ということ。
これだけでは分かりにくいので、先程のろうそくの例で実践したグラフで見てみましょう。
グラフの矢印の流れを見ればわかるように、一番上のロウソクから始めて、それを構成するパーツや、材質・形状へと機能を分解していってます。こうすることで、ロウソクの中にある様々な可能性に気づくことができて、新しい活用方法を発想しやすくなるわけですね。
実験:ジェネリックパーツ・テクニックで機能的固着は減るのか?
それでは本当にジェネリックパーツ・テクニックで機能的固着は減るのでしょうか。
マサチューセッツ大学の研究では、この点を確かめるために
- ジェネリックパーツ・テクニックを教えた人
- ジェネリックパーツ・テクニックを教えなかった人
の2つのグループで、先程のロウソクとリングの問題のような発想力テストの成績がどれだけ変わるのかを測定しています。
結果:
実験の結果を見てみると、ジェネリックパーツ・テクニックを使った人に見られた効果として
- 問題の正解数が67.4%多かった
- 物の機能をより多くリストアップしていた(4.28個 vs 1.87個)
- キーとなる抽象的な特徴をより多く発見していた(75% vs 27%)
との結果が得られています。
3つのどの結果からも、ジェネリックパーツテクニックを行うことで、機能的固着を脱却して新しい機能の発想が得られていることがわかります。なので、新しい視点で問題を考えたいときには、ジェネリックパーツ・テクニックを使って、問題やその構成要素を細かく分割してみると良いでしょう。
まとめ
本稿では「機能的固着とジェネリックパーツ・テクニック」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- イノベーションを起こすには、新しい発想の壁となる機能的固着を脱却しなければいけない
- それにはジェネリックパーツ・テクニックで、対象物を細かい機能や性質に分解したグラフを描くと良い
ということ。
冒頭にも述べたとおり、イノベーションは①これまでにない視点の発掘、②その視点をもとにした問題解決策の構築の2ステップでできています。なので、ジェネリックパーツ・テクニックを使って問題を細かく分割した後で、それらの新しい視点からどんな解決方法ができるのかを考えていくと良いでしょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Innovation Relies on the Obscure : A Key to Overcoming the Classic Problem of Functional Fixedness