他人の成功談と失敗談、より多くを学べるのはどちらなのか?の研究
自分で直接経験して学ぶことは何よりも大切なことですが、より早く多くのことを学ぶには他人の経験を見て学ぶことも必要です。試験に受かった先輩の話を聞いたり、成功者が書いた本を読んだりすることは、大きな学びとなって成功への近道になりますよね。
そして、他人の経験から学ぶには、成功談から学ぶ方法と、失敗談から学ぶ方法の2種類があります。失敗は成功のもとというように、成功者も陰でたくさんの失敗をしていることもありますから、ただ成功部分だけを切り取っても正しい学びができるかもわかりません。
そこで本稿では、
- 他人の成功談と失敗談は、どちらの方が学びが大きいのか?
を調べてくれた研究を見てみましょう。
学ぶなら成功談か失敗談か?
シンガポール・マネジメント大学の研究では、50人を対象に成功談と失敗談の学びを比較する実験を行っています。この研究では、仕事のマネジメントに関する成功談・失敗談として、マーケットの分析、リーダーシップ、対立の解消などのストーリーを用意しています。
そして、参加者は成功談で学ぶグループと、失敗談で学ぶグループに別れていて、
- 成功談から学ぶグループ
5つの成功談を読んでマネジメントを学ぶグループ。成功談では、主人公のマネージャーがこういう行動をしたら、こういう成功が得られたという形式のストーリーになっている
- 失敗談から学ぶグループ
5つの失敗談を読んでマネジメントを学ぶグループ。失敗談では、主人公が正しい行動を起こすのに失敗して、その後悲惨な結果になってというストーリーになっている。
となっています。
各参加者は成功談・失敗談を一つ読むたびに、
- この主人公はどういう行動をしたのか?
- この物語からどういうことを学んだか?
という質問にも答えるようになっています。
そして最後には、
- 自分がマネージャーになったとして、様々な課題をどう解決するのか?
のマネジメント能力のテストが行われています。
結果:成功弾と失敗談の学び
早速結果を見てみると、
- 成功談で学んだ人よりも、失敗談で学んだ人の方が、学びの転移が起きてより多くのことを学んでいた(b=1.47, p<0.01)
- さらに、失敗を学びだと考えて、積極的に失敗のリスクを取るタイプの人ほど、失敗談を読んだときの学びもより大きかった
ということ。
面白いことに成功談よりも失敗談の方が学びが大きくなっています。さらに失敗をどう捉えるかの認識も大切で、失敗は学びのもとと考える人ほど、他人の失敗談も自分の知識として活かせていたんですね。失敗は学びと分かっていても、できればしたくないのが心情でしょう。なので、まずは他人の失敗から多く学ぶクセをつけると良いのかもしれませんね。
結果2:なぜ失敗談の方が学びが大きいのか?
この研究では失敗談の方が学びが大きい理由についても深堀していて、その結果を見てみると、
- 成功談がサクッと読まれがちなのに対し、失敗談の方はより入念に読まれていた
ということ。
成功談では行動→成功という関係が明確になっているので、あまり考えなくてもスッと頭に入ってきます。一方で失敗談の場合には、失敗の原因を行動を行わなかったとして、失敗は回避できたとしても、成功までできたかは不明確です。そのため、代わりにどんな行動をすれば良かったのか?など考えやすく、学びの幅も広がりやすいということなんですね。
本屋に行けば7つの成功の法則みたいな安っぽい成功談も溢れていますが、こうした本では本当の深い学びはできないのでしょう。
まとめ
本稿では「成功談と失敗談はどちらが学びが大きいか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 成功談よりも失敗談の方が学びが大きい
- これは失敗談の方が、代わりの行動などを深く考えるから
- 失敗を学びのもとと考える人ほど、失敗談からの学びも大きくなる
ということ。
成功談は得意気になってに揚々と話せますが、失敗談は恥ずかしくてあまり他人には話したくないでしょう。しかし、失敗談の方が学びも大きいことを考えると、みんなで失敗を共有できる方が学びにとっては良いみたいですね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Learning from others’ failures: The effectiveness of failure stories for managerial learning