喜びを長続きさせたいのなら、不確実性が大切だという心理学の研究
人には2つの性質があって、それは
①喜びを求める性質
②不確実性を嫌う性質
です。
①の喜びを求める性質は、誰でも幸せにはなりたいものですからよくわかる性質でしょう。②の不確実性を嫌う性質は、未来に何が起こるか分からないというリスクを嫌って、より確実で安全な選択肢を選びがちということですね。
しかし、心理学の研究によると、この2つの性質はときには相反するものになってしまって、確実を求めることで喜びを減ってしまうということがあるみたいなんですね。
そこで本稿では、喜びを長続きさせるための不確実性の考え方について、研究(*1)を参考に考えていきたいと思います。
人は将来を予測したがる
人にはセンスメイキングという無意識に物事の原因を理解しようとする考えが働いています。つまり、人はこれまでにない未知の出来事に遭遇すると、それがなぜ起きたのかの原因と仕組みを理解したがるわけですね。こうすることで、その人は次にその未知の出来事が起こることを予測ができるようになって、より確実で安全な生活ができるようになるわけです。
しかし一方で、出来事に対する感情を考えてみると、未知の出来事に初めて遭遇したときは驚きなどの大きな感情が生まれるのに対して、その出来事を理解して予測できるようになるにつれて、当たり前になって感情も弱まってしまいます。これは不安などのネガティブな感情に対してはとても役に立つことなのですが、喜びといったポジティブな感情にも同じように作用してしまうんですね。毎日やっていることから得られる薄れてしまった喜びよりも、サプライズで予期していなかった喜びの方が大きいということですね。
そこでこの問題について調べてくれたのがバージニア大学とハーバード大学の研究(*1)です。この研究では不確実性がある方が喜びは長続きするということを実験により確かめてくれているんですね。
不確実性は本当に喜びを長続きさせるのか?
この研究では大きく3つの実験で不確実性と気分の向上の関係を調べています。
実験1:なんで1ドルくれるの?
一つ目の実験では、見ず知らずの人にメッセージカードと共に1ドルをプレゼントします。このときメッセージカードには2パターンがあります。
1つ目のメッセージカードには
”私たちは誰? 笑顔の社会コミュニティ”
”なぜプレゼントするの? 突然の親切を広めたいから”
というように、なぜ1ドルもらえたのかに疑問+回答のメッセージで明確に答えています。
2つ目のメッセージカードは
”笑顔の社会コミュニティ”
”突然の親切を推進”
と、最初の疑問文がなくなって、意味が伝わりにくくなっています。
つまり、1ドルをもらった原因がなぜなのかを明確に知ることができる人と、原因が不確実な人の2パターンを実験したわけですね。
そして5分後に気分を測定すると
- 原因が不確実な人の方が、もらったときの驚きが大きかった
- 原因が不確実な人の方が、気分の向上も大きかった
ということで、不確実性があると喜びも増すことがわかったんですね。
実験2:映画の続きは?
2つ目の実験では実話をもとにした映画を見てもらって、映画の後に主人公がどうなったのかのストーリーを2種類教えます。このときに確実グループの人にはどちらのストーリーが本物かを教えて、不確実グループの人には教えません。
このときに気分の向上にどのような違いがあったのかというと
- 実験の直後ではどちらのグループも気分の向上は同じだった
- 少し時間をおいて再び測定すると、確実グループの人のみ気分が低下していた。
つまり不確実なグループの方が気分の向上が長続きしていた!
ということなんですね。この実験でも同様に不確実でよくわからないことがあった方が喜びが長続きするという結果が得られています。
実験3:フィードバックは誰から?
3つ目の実験では男性3人・女性3人で興味のあることなどについて話し合ってもらいます。その後、それぞれの人に異性の3人とも友達になるならあなただと言っていたと言って、異性3人からのフィードバックを渡すんですね。
このとき
確実グループの人は各フィードバックを書いたのが誰かわかる
不確実グループの人はどのフィードバックを誰が書いたのかわからない
ようにします。
その結果として2つのグループで気分の向上に違いが出て
- フィードバックをもらった直後ではどちらも同じくらい気分が向上していた
- 不確実で誰のフィードバックかわからなかった人の方が、気分の向上は長続きした
ということで、こちらの実験でも不確実な方が気分の向上は長続きするということが確認されたんですね。
補足:どちらの方が嬉しいかの予測
この研究では、
確実なメッセージカード、不確実なメッセージカード
確実な映画の続き、不確実な映画の続き
確実なフィードバック、不確実なフィードバック
のどちらが気分の向上が大きいかを確かめていますが、それに加えて「どちらの方が喜びが大きそうですか」という想像上の予測もしてもらっています。
その結果としてわかったことは
- 人は確実なケースの方が気分の向上が大きいと予測しがち
ということなんですね。なんと実際の結果とは逆の方を予測してしまっているということです。不確実性を嫌う性質から偏った予測をしてしまっているのかもしれませんね。
まとめ
本稿では「不確実性と喜び」について紹介しました。
ポイントをまとめると
- 人は不確実な状況の方が喜びが長続きする!
- だけどやる前は確実な方が良いと思いがちだから注意しよう!
ということですね。
同じことをするのでなく未知のことに挑戦した方が喜びは大きいので、不確実性を嫌いすぎずに面白そうなことはどんどんやってみるのがいいみたいですね!
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1: The Pleasures of Uncertainty: Prolonging Positive Moods in Ways People Do Not Anticipate