幸せになる方法を研究からまとめた。お金・時間・習慣で変わること
このブログでは幸福に関する研究を87本紹介してきました。このサイトで一番多いテーマです。この記事では、その結論を「効果が大きい順」に並べ直しています。各項目から元記事に飛べます。
全体を貫く一文を先に置きます。
幸福度の約半分は遺伝で決まる。残りの半分を動かすのは「環境」ではなく「行動」。
幸福を意図的に高められるのかを調べた記事の結論です。そして重要なのは、収入や年齢といった状況的な要因は、あまり幸福に関係していないという点でした。変えられるのは行動のほうです。
1. 環境を変えても、幸福は続かない
環境の変化と行動の変化を比べた研究が、その理由を説明しています。
- 環境の変化による幸福感は快楽的な要素が強く、慣れるにつれて薄れていく
- 行動の変化による幸福感は、自分で意識して掴むものなので慣れることがなく、持続する
引っ越しや昇給や新しい車で上がった幸福感は、その環境が「普通」になった時点で消えます。一方で、運動や瞑想や家族と過ごす時間のような行動は、慣れて消えることがありません。
2. 収入は、ある線を超えると効かなくなる
収入と幸福の関係を調べた記事の結論は3つでした。
- 収入は生活に必要なラインまでは幸福度を上げてくれる
- そのライン以上の収入では幸福度は上がらない
- ただし、周りと比べて収入が低いと幸福度は下がる。かといって周りより高くても幸福にはならない
別の研究でも、幸福感に影響するのは他人と比較したときの相対的な収入でした。年収が十分高い人が、さらに年収の高い人が住むエリアに引っ越して劣等感を抱く、という話がまさにこれです。
そして収入の変化のインパクトを調べた研究によると、収入の減少は、収入の上昇の2倍のインパクトを幸福度に与えます。人はネガティブな出来事を強く感じるようにできています。
もうひとつ、意外に効くのがお金のコントロール感です。お金の問題を自分で対処できるという感覚は、貧乏であることよりも強く幸福感に影響していました。金額そのものより、扱えている感覚のほうが効くということです。
3. 額より「使い方」
収入を増やすより現実的なのが、使い方を変えることです。
- 自分の性格にフィットした使い方をする:このフィットの度合いは、収入の総額よりも大きく幸福感に影響する。フィットしない使い方だと逆に幸福感が下がることもある
- 人のために使う:相手との親しさが強いほど効果も大きい。家族か友人かといった関係の種類は関係なく、純粋に親しさが効く
- 物やお金に固執しない:人間関係や仕事より所有を優先する人ほど、幸福感は大きく低下する
4. お金より時間
お金と時間のどちらを優先するかを調べた研究では、時間を優先する人のほうが長期的にも幸福感が高いという結果でした。余暇に好きな活動を増やせることが効いています。
関連して面白いのが時間を時給換算することの影響を調べた研究です。自分の時給を計算して時間をお金に換算する癖がつくと、楽しい活動をしても「もったいない」と感じて幸福感が得られなくなります。楽しむときは時給を考えない。メリハリの問題です。
5. 幸せを直接追いかけない
これはこのテーマで一番反直感的な結論かもしれません。幸せの追求を調べた記事によると、幸せを追い求めるほど逆に不幸になり、うつの症状も増えます。
代わりに有効なのが、ポジティブな行動や環境を増やすことを優先することでした。「幸せになりたい」は漠然としていて行動に落ちませんが、「ポジティブな出来事を増やす」なら具体的です。嫌な環境や人間関係と距離を置くことも、この中に含まれます。
ただし国ごとの違いを調べた研究には続きがあります。この「幸せのパラドックス」が起きるのは個人主義の国で、集団主義の国では起きません。つまり自分だけの幸せを追うほど不幸になり、周りの人を含めた幸せを追うほど幸せになれるということです。
6. 感謝と親切は、手軽なわりに効果が確認されている
感謝の効果を調べたメタ分析の結論はシンプルでした。感謝の気持ちを高めると幸福感も高まる。そして相手に直接伝えなくても、書き出すだけで同じ効果があります。
親切も同様です。親切と幸福感の研究によると、昔行った親切を思い出すだけでも、実際に親切をするのと同じくらい幸福感が上がりました。研究では5分間書き出すだけの手法が使われています。数が増えるほど効果も大きくなります。
逆方向もあります。不親切の影響を調べた研究では、他人に不親切にすると自律感・有能感・関係性という心の3大欲求が低下し、その結果として幸福感まで下がることが示されました。
人を許すことも、人生の意義を高めることがわかっています。
7. ポジティブは「強さ」ではなく「頻度」
ポジティブ感情の研究が示したのは、幸福を決めるのはポジティブな感情の頻度であって、強さは関係ないということでした。理由は3つ挙げられています。
- 人はポジティブの頻度で幸福を判断するから
- 感情の強さを意図的に高めるのは難しいが、頻度なら増やせるから
- 強さを求めると、逆に少しのことでは感動できなくなってしまうから
大きな喜びを1回より、小さな喜びを何回も。こちらのほうが設計しやすい目標でもあります。
8. 体・自然・食事
- 運動:運動量が多いほど人生の満足度は上がる。ただし高ストレス時には、運動を楽しめていないと効果が消える。種目は自分が楽しめるもので選ぶ
- 運動の副次効果:運動をする人は、運動の後にポジティブな出来事が起こりやすい
- 自然:大事なのは自然の中で過ごす時間の長さではなく、自然を感じるちょっとした体験。意識を向けるかどうかで差が出る
- 食事:朝食を毎日食べる人、野菜とフルーツを多く食べる人のほうが幸福感が高い
- お菓子と野菜の比較:お菓子が特別に幸福感が高いわけではなく、食べる頻度を考えると野菜から幸福を得ている人が一番多い
9. SNSとテレビ:通説とは逆でした
「SNSは幸福度を下げる」はよく聞く話ですが、長期的に調査した研究の結果は違いました。
- SNSやインターネットが長期的な幸福感やうつ傾向に与える影響は、ほぼゼロ
- 一方でテレビの視聴は、若干の幸福感の低下につながる
テレビの影響を調べた研究が理由を説明しています。テレビは物欲を刺激して物質主義を強め、裕福さを強調するので自分を下に見てしまう。その結果として不幸になる、という流れです。
ただしSNSも、サービスによって性質が違います。4つのSNSを比較した研究によると、Facebookは他人との比較を生みやすくマイナスになりがち、InstagramとTwitterは積極的に使えば交流が増えてプラス、TikTokは交流も比較も増えないので影響なし、という結果でした。
10. 自分に優しくする
セルフ・コンパッションのメタ分析では、自分への優しさが高い人ほど幸福感が高いことが示されています。特徴的なのは効き方で、ポジティブな感情を高める効果よりも、ネガティブな感情を抑えたり人生の意義や満足感を高める効果のほうが強いという点でした。
完璧主義になると自己批判が増え、思考がネガティブに傾きます。ポジティブ心理学とマインドフルネスを組み合わせた研究では、この2つの合わせ技で持続的に幸福感を高められることも確認されています。
まとめ:効果が大きい順に
- 1. 環境ではなく行動を変える 環境で得た幸福は慣れて消える
- 2. ポジティブな出来事の頻度を増やす 強さではなく回数
- 3. 感謝と親切 書き出すだけ、思い出すだけでも効く。いちばん手軽
- 4. お金は額より使い方 自分に合うことと、親しい人のために
- 5. お金より時間を優先する 楽しむときに時給を計算しない
- 6. 幸せを直接追わない 自分だけの幸せを追うほど遠ざかる
- 7. 体を動かす、自然を感じる、野菜を食べる 地味だが確実
- 8. 自分に優しくする 自己批判はネガティブを増やすだけ
収入を増やすことも、引っ越すことも、ここには入っていません。研究が一致して指しているのは、もっと地味で、今日から変えられるほうでした。
※本記事は学術研究の紹介であり、医療上の助言ではありません。気分の落ち込みが続く場合は専門家にご相談ください。研究結果は特定の条件下で得られたものであり、すべての人に同じ効果を保証するものではありません。