パフォーマンスを高める期待の力!ピグマリオン効果をうまく使うには?
本稿のテーマは「期待の力」の心理学です。
良い期待を持つことは、良いパフォーマンスにつながる!
ということで、本稿ではこの期待の力を使って組織のパフォーマンスを高めることができるのか?という問題をピグマリオン効果という教育心理学で発見された効果を軸に説明していきたいと思います。
期待とパフォーマンス
期待にはいい意味でも悪い意味でも人のパフォーマンスを作用します。
良い意味では、高い目標であっても、行けるという期待があれば、それがモチベーションとなって目標の達成率を高めてくれます。もっともっとと自分に期待していけばグイグイと伸びていくわけですね。
逆に悪い意味では、期待は人に限界を与えたり、行動を減らしてしまうようなことも起こり得ます。例えば、人は100mを10秒以内で走れないという壁を作ってしまうと、それが悪い期待となってなかなか壁を越えられなくなってしまいますし、自分はどうせ成功できないと悪い期待を持ってしまうと行動が減ってしまいます。
要するにポジティブな期待はパフォーマンスを高めてくれて、ネガティブな期待はパフォーマンスを下げてしまうわけですね。
ピグマリオン効果とは?
そしてこの期待の力は自分の中だけでなく、他者との関係の中でも力を発揮することが発見されていて、ピグマリオン効果と呼ばれています。なんか可愛い名前ですね(笑)
これがどんな効果なのかというと、他者からの期待を受けることでも、その人のパフォーマンスは向上する効果のことです。
例えば、教師にこの生徒は優秀だと期待された人は、実際に成績が向上したりするんですね。
なぜこんなことが起こるのかというと、
教師の期待が高まる
→教師のその生徒への接し方が変わる
→生徒は教師の期待を受けて、自分自身への期待も高まる
→生徒は自分の期待に沿って行動を変える
というように、教師の期待→教師の行動→生徒の期待→生徒の行動と波及していくことで様々ないい効果が得られるからなんですね。
もう少し具体的にいうと、
- 生徒への期待から教師の接し方が変わる
→より難しい課題を出すなどして成績が向上する - 生徒自身が自分への期待を高める
→自分は優秀なんだと自信を持つことでモチベーションが高まり、より勉強に身が入るようになって成績が向上する - 生徒が自分の期待に沿って行動を変える
→次第に自分から勉強したり積極的に質問するようになったりして成績が向上する
というような感じ。こうして考えると期待の力ってなかなかすごいですね。
もちろん「こいつはダメな生徒だ」という悪い期待は、逆に悪い効果が満載なので注意が必要というわけです。
組織のパフォーマンスとピグマリオン
先ほどピグマリオン効果を教師と生徒を例に説明しましたが、この効果はもっと他の場面でも有効で
- 上司と部下
- コーチとスポーツ選手
- 親と子供
など役立つ場面は様々です。
そこで本稿では仕事の場面でのピグマリオン効果について注目し、ピグマリオン効果は組織のパフォーマンスを上げてくれるのかについて考えていきたいと思います。
その参考になるのがブラッドフォード大学の研究(*1)です。
この研究では244人の救援活動従事者を対象に調査をしています。救援活動従事者は発展途上国などに出向いて、現地のスタッフと協力して救援活動を行うので
- 救援活動従事者の現地スタッフへの期待
- 救援活動従事者の現地の仕事環境への期待
がどのように行動やパフォーマンスに関係するのかを分析したんですね。
そしてその結果として分かったのが
- 現地スタッフの人も一緒に成長してうまく仕事をこなしていけるという期待が高い人は、現地スタッフとより親密になろうとする行動が多く、結果として組織のパフォーマンスも高かった
- ただしストレスの高い状況だと、救援活動従事者が現地スタッフを励ましたりするポジティブな行動が減ってしまって、組織のパフォーマンスは低下してしまった。
ということ。部下や同僚に期待することは組織のパフォーマンスを高めてくれるみたいですが、ストレスには要注意ということですね。
まとめ
本稿ではピグマリオン効果を軸に、期待の力で組織のパフォーマンスを高める方法について説明しました。
ポイントをまとめると
- 良い期待は周りにも波及して良いパフォーマンスを生む!
- 逆に悪い期待はパフォーマンスを下げてしまう!
- ストレスが高いと良い期待は持てなくなってしまうので注意!
ということですね。
良い期待の効果で組織のパフォーマンスを高めるためには
- 仕事のストレスを減らす。またはストレスに対処するスキルを高める。
- 人間関係のスキルを強化する
- 良い期待を持つことが組織のパフォーマンスを高めることを意識して、一緒に成長してくことを心がける
- 逆に悪い期待は組織のパフォーマンスを下げてしまうことを留意し、一部を見てあいつはダメだと決めつけたり誤解はしないようにする
といったことができそうですね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1: Beyond Pygmalion effect: the role of managerial perception