健康へのモチベーションを高める指導方法。18個の戦略で最も効果があるものとは?
モチベーションを高める方法を調べると、多くの種類があって
- 目標を設定する
- 報酬を用意する
- 周りの人のサポートを得る
などなど、これ以外にもたくさんの方法があります。
そうなると「本当に効果がある方法はどれか?」が気になるところで、バース大学ら研究(*1)が、自己決定論というモチベーションモデルに基づいて分析してくれていました。
そこで本稿では、この研究を参考に効果的なモチベーションの上げ方についてお話ししたいとも思います。
モチベーションを高める18戦略
この研究では、自己決定論というモチベーションの理論を参考にしていて、この理論ではモチベーションの形成には次の3つの要素が必要だと言われています。
- 自律(自分で主体的に取り組むこと)
- 有能感(自分の能力に自信を持つこと)
- 関係(サポートしてくれる人の存在など)
この理論に基けば、様々なモチベーションの向上方法は、これらの3つの要素のどれかを高めてくれているわけですね。
それで、この研究はどんなモチベーションの上げ方が効果的なのかを調べるために、74件の研究をメタ分析でまとめています。
これらの研究は74件のモチベーションの向上方法を18個の戦略に分類して、どの戦略が効果的だったのかを分析してくれているんですね。ちなみに実験の内容としてはダイエットなどの健康へのモチベーションを取り上げていています。
モチベーションの18の戦略
18個の戦略は次の通りに分類となっています。
自律を上げる戦略
- 選択
やり方などの選択肢を与えて自分で好きなものに決めてもらう - 考え方を認める
指導者が参加者の考え方を理解してあげるための時間を作る - 理論的な説明
なぜその方法が良いかの理論的な説明をする - 言葉遣い
参加者がコントロールされていると思わないように、指導者は言葉遣いを気を付ける - 内発的目標
参加者が自分にあった目標を自分で決める - ストラクチャー
ゴールの設定や行動の計画を用意する - 責任感
参加者は自分の責任で行うということを強調する - 理由を探す
なぜやるのかの理由を参加者自身に探させる - モチベーションをあげる面談
指導者との面談でモチベーションを鼓舞する
有能感をあげる戦略
- プロセスを重視する
最終結果だけでなく一歩一歩プロセスをこなしていることに注目する - 難易度の最適化
タスクの難易度を適度なものにカスタマイズする - フィードバック
改善点などのフィードバックを与える - 情報提供
目標達成のために有益な情報を与える - 障害の特定
目標達成の障害を指導者が一緒に探してくれる - サポート
他人からのサポートと応援を与える
関係を向上する戦略
- 関わり合い
指導者がお互いの理解の時間を作って信頼関係を築く - ソーシャル・サポート
家族や友達の支援をもらうことを勧める - グループで協力
グループを作って協力して目標達成を目指す
どの戦略が効果的なのか?
それで研究の結果として、まず全体の傾向として
- 自律を上げる戦略が一番モチベーションが上がった (g=0.81)
- 有能感を上げる戦略もモチベーションを上げた (g=0.63)
ただし、子供には有能感の向上は効果が薄かった - 関係を上げる戦略はあまり効果はなかった(g=0.28)
ということ。
一番効果の高かった自律ということで、自分でコントロールしている感覚を持たせてあげることが大切ということですね。例えば、指導者の言う通りにやらせるとなると、自分でコントロールしている感覚はなくなってしまいます。なので、目標や方法を自分自身で決めさせてあげたり、指導者はその人の考え方を理解してあげることが大切になるということですね。
具体的な戦略は?
それで18個の戦略でどれが良かったのかというと
- 一番自律心を向上させたのは言葉使い戦略(コントロール的な言葉を使わない)だった
- 最終的に一番モチベーションが向上したのは、論理的な説明戦略だった
ということ。
逆にモチベーションを下げてしまった戦略もあって
- 関わり合いを強くする戦略は、自律心を低下させてしまった
- グループで協力戦略は、有能感を低下させてしまった
- ストラクチャー戦略と情報提供戦略も、自律心にとってマイナスだった
ということ。
なので全体をまとめると「一番重要なのは自律感を持って主体的に取り組むことで、他人は下手に干渉しない方が良い」という感じですね。
まとめ
本稿では「モチベーションを上げる指導の効果的な戦略」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- モチベーションを上げるには自律感を持たせることが最も大事
- 大人の場合には有能感を持たせることも効果あり
- 特に相手の自律心を妨げないように、コントロール的な言葉を使わないように注意しよう。
- 理論的な説明もモチベーションを上げるためには大切
ということです。
目標設定や選択を与えるなどの戦略もある中で、コントロール的な言葉を使わないという戦略が最も自律心をあげる効果があるというのは意外ですね。仕事で部下を指導するときにも、子供をしつけるときにも、コントロール的な言葉は使わないように気をつけたいですね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]