未完了のタスクを抱えるほど、集中力も幸福感も低下してしまうという研究
本稿のテーマは「未完了のタスクとフロー状態」です。
多くの仕事を抱え過ぎて、なかなか手が回らないという人も多いのではないでしょうか。
そこで本稿では
- フローとは何か
- 未完了のタスクはフロー状態を阻害するのか
- 未完了のタスクにどう対処すればフローを増やせるのか
についてお話ししていきたいと思います。
フローとは何か?
フローとは一つのタスクに没頭している高い集中状態のことです。フローに状態になると気がついたらあっという間に時間が経過していたという感覚を感じることもあります。
フロー状態は様々なタスクで入ることができて、勉強やスポーツ、あるいはゲームでもフローを感じることができます。面白いのはフローは休暇時間の活動よりも仕事中に感じる人が多いことが研究により分かっていることですね。
もちろん、仕事中のフローは良いことで、
- 仕事のパフォーマンスが向上する
- 仕事への満足感や幸福感が向上する
といった効果があるため、できるだけフローは増やしたいわけです。
しかし、フローへの入りやすさはストレスの影響を受けることが分かっています。ストレス時に感じる不安や怒りで頭の中が散漫になると、フローに集中状態が途切れてしまうわけですね。
このストレスの原因の一つになってしまうのが「未完了のタスク」です。やらなければいけないのに手がついていない仕事を多く抱えてしまうと、それがプレッシャーになって頭から離れなくなってしまいます。
そこで、未完了のタスクに注目したドイツの研究(*1)があって、この研究では
- 未完了のタスクは本当にフローを阻害するのか?
- 未完了のタスクが仕事の幸福感を低下させてしまうのではないか?
ということを調べてくれていますので、その中身を見てみましょう。
未完了のタスクとフロー
この研究では、93人の従業員の2週間の仕事を分析して、未完了のタスクが仕事中のフロー状態や幸福感にどの様に影響するのかを調べてくれています。
その結果として、未完了のタスクとフローの関係が次のグラフのようになっていることがわかりました。
横軸が未完了のタスクで、縦軸がフローを表していて、
未完了のタスクが増えるにつれて、曲線が低下していることから
- 未完了のタスクが少ないうちはフローはほとんど低下しない
- ある一定以上未完了なタスクが増えると、フローは大きく下がり始める
ということがわかります。適度なストレスは仕事のパフォーマンスを上げてくれることが分かっているように、未完了のタスクも適度な量であればフローは低下させないみたいですね。
次に、仕事の幸福感については
- フローが増えるほど幸福感は増える(r=0.35)
- 未完了のタスクが増えるほど幸福感が低下する(r=−0.25)
ということが分かっています。フローが幸福感を上げてくれるわけですが、未完了のタスクはそのフローを減らしてしまうので、間接的に幸福感も低下してしまうわけですね。
ちなみに、この研究ではもう一つ実験を行っていて、そちらの実験では
- 仕事で未完了なタスクが多いと、仕事が終了した後の個人的な活動でもフローも低下してしまった
ということが分かっています。仕事でストレスを抱えると、それが仕事が終わっても頭からは離れないようですね。
この研究で分かったことをまとめると
- 未完了のタスクを抱えるほどフローも幸福感も低下してしまう
- ただし未完了のタスクが少ないうちはフローの低下も少ない
- 未完了のタスクのストレスは仕事が終わっても継続してしまう
ということですね。
未完了のタスクにどう対処すればいいのか?
最後に、未完了のタスクへの対処法をいくつか紹介したいと思います。
①すぐに終わることすぐやる
未完了のタスクを溜めない一番の方法はすぐに終わる仕事は先延ばしをせずにすぐに終わらせることです。
②大きなタスクは分割する
大きなタスクは心理的なハードルが高くなってなかなか手が付けにくくなってしまいます。そうすると、大きな仕事を抱えているという見通しのない漠然とした不安を抱えてしまいます。なので、大きなタスクは具体的な行動レベルの手がつけやすいサブタスクに分割して、実行力をあげましょう。
③スケジュールに入れる
そのタスクをいつやるのかを決めておくことは、今はやらなくていいという安心感をくれるため、未完了のタスクのストレスを軽減してくれます。また、いつやるのかを明確に決めていないとズルズルと先延ばしをしてしまうものなので、それを防ぐためにもスケジュールに前もって入れておきましょう
まとめ
本稿では「未完了のタスクとフロー」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 未完了のタスクは一定以上に増えると、ストレスとなってフローや幸福感を低下させてしまう!
- 未完了のタスクのストレスは仕事以外の活動にも影響してしまう
ということですね。
日常生活の中で仕事のことが頭から離れない人は、未完了のタスクを抱えすぎなのかもしれません。パレートの法則によれば、本当に大切な2割の仕事が成果の8割を占めています。この2割の仕事でフローの最大の集中力が発揮できるように、未完了のタスクをうまく管理できればいいですね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1: Thieves of Flow: How Unfinished Tasks at Work are Related to Flow Experience and Wellbeing