睡眠不足で体の炎症はどこまで進んでしまうのか?に関する研究
本稿ではカリフォルニア大学の研究(*1)を参考に
- 様々な病気の原因になってしまう炎症が、睡眠不足によってどこまで進んでしまうのか?
についてみてきたいと思います。
そもそも炎症って何?
炎症とは体の不調を直そうと免疫が働く現象のことで、例えば怪我をしたときに赤く腫れ上がってたりするのも免疫が働いて体を守ろうとしてくれているからです。
怪我のように急性の炎症であれば数日で収まるので良いのですが、慢性炎症という軽度の炎症がずっと続くタイプの炎症が問題となることがあります。不健康な生活習慣をしていると、常に軽度の炎症で免疫が働き続けてしまって、これが心臓病や糖尿病、アレルギーなどの様々な病気の原因になってしまうんですね。さらに、炎症は老化を進めるとも言われていますので、できれば炎症を抑えていきたいところです。
それで炎症の研究では、血液を調べることで炎症の度合いを測っていて、CRP、IL-6、TNFなどの炎症性の物質の量を調べています。実際にこれらの物質が多い人ほど、心臓血管の病気や高血圧、肥満などの症状が多いこともわかっているんですね。
睡眠時間と炎症
それで、カリフォルニア大学の研究(*1)が
- 睡眠障害や睡眠時間でどれだけ炎症が進んでしまうのか?
についてメタ分析でまとめてくれています。
この研究では、72件の研究をメタ分析してくれていて
- 睡眠障害がある人は炎症性物質(CRP、IL-6、TNF)が多いのか?
- 睡眠時間が短い人は炎症性物質(CRP、IL-6、TNF)が多いのか?
- 睡眠時間が長い人は炎症性物質(CRP、IL-6、TNF)が多いのか?
ということを分析してくれているんですね。
結果①:睡眠障害と炎症
最初に睡眠障害と炎症性物質の関係の分析結果がどうだったのかというと、
- 睡眠障害を抱えている人ほど、CRPとIL-6が高かった
(CRP:ES=.12、IL-6:ES=0.20)
ということ。
つまり、不眠症などの睡眠障害の人ほど炎症は進んでしまっているということですね。なので、夜になかなか寝付けなかったり、夜中に何度も起きてしまったりと、睡眠に問題を感じている人は、炎症が進んでしまっている可能性があるので注意が必要そうですね。
結果②:睡眠時間と炎症
続いて睡眠時間と炎症の関係です。この研究では7〜8時間を適切な睡眠時間としていて、7時間未満を睡眠不足、8時間以上を睡眠過多としています。
それで結果がどうなったのかというと、
- 睡眠不足(7時間未満)の人は、CRPは有意に高かった
(CRP::ES=.09) - 睡眠過多(8時間以上)の人は、CRPとIL-6が有意に高かった
(CRP:ES=.17、IL-6:ES=0.11)
ということ。
意外なことに、睡眠が足りないよりも寝すぎる方が炎症は進んでしまうという面白い結果が得られています。
実は同じような結果は全死因死亡率でも得られているようで、睡眠不足だと+12%だけ死亡リスクが高まるのに対して、睡眠過多では+30%も死亡リスクが高まるということです。睡眠不足よりも睡眠過多の方がずっと健康に悪いんですね。
結果③:短期的な睡眠不足
最後に、昨日夜遅くまで起きていて3時間しか眠れなかったみたいな、一時的な睡眠不足が炎症にどのように作用するのかもメタ分析してくれていて、
- 1日〜数日くらいの睡眠不足では、CRPもIL-6も有意に向上はしない
ということが分かっています。
なので、睡眠不足が習慣になってしまうと炎症は進んでしまうみたいですが、たまにハメを外して夜遅くまで起きてしまうくらいは、炎症にはそこまで影響はしないようですね。
まとめ
本稿では「睡眠不足と炎症」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 睡眠障害だと炎症は進んでしまう
- 睡眠不足だと少し炎症は進んでしまう
- 睡眠過多は睡眠不足以上に炎症が進んでしまう
- 1日〜数日くらいの睡眠不足なら炎症は進まない
ということですね。
健康のためには質の良い睡眠をしっかりと取ることが大切ですが、睡眠過多にならないように、睡眠時間は8時間以内に抑えましょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献 ]