つらいHIITを楽しめるようにVRゲームにしてみた研究
多くの人にとって運動は辛い、つまらない、やりたくないものになってしまっていて、運動が健康にいいことが分かっていてもなかなか習慣として続かないものです。
そこで運動に楽しさの要素を加えるためにはゲームが有効で、普段は運動をしない人でもWii Fitやリングフィットアドベンチャーのようなフィットネスゲームにハマったという人も多いでしょう。
それでオークランド大学の研究が、運動のゲーム化に注目していて
- HIIT(高強度インターバルトレーニング)もゲーム化したら楽しめるのでは?
ということを実験してくれていました。
HIITとゲーム化
HIITとは高強度の運動と休憩を交互に繰り返すタイプの運動で、20秒全力運動して10秒休憩を繰り返すようなトレーニング方法のことです。HIITは心拍数を限界近くまで追い込むので、心拍能力が鍛えられたり、アフターバーンによる脂肪の燃焼効果も高いなど、様々なメリットのある運動なんですね。
しかし、HIITにもデメリットがあって、それが限界近くまで追い込む運動のきつさです。HIITには良い効果が満載でも、きつすぎてなかなか続けられる人が少ないんですね。そこで、オークランド大学の研究では、HIITをゲームにして楽しくしようとしてくれたわけです。
それで、このゲームが意外と良くできていて
- VR(バーチャルリアリティ)を使っている
- プレイヤーが現実世界でボートを漕ぐと、それに合わせてゲーム画面が前進する
- ボートを進めて前に次々と現れるリングをくぐることで、スコアを稼いでいくゲーム性がある
- HIITの要素を取り入れるために全力で漕ぐ期間と、休憩の期間が交互になっている
- フロー状態に入りやすくするように、ちょうど良い難易度が設定されるようになっていて、自分の心拍数などの情報が画面にフィードバックとして映し出されている
といった感じ。
そしてこのゲームがもう一つ力を入れているのが音楽で、
- 音楽の強度やテンポが、プレイヤーの漕ぐスピードに合わせて調整される
という仕組みが取り入れられています。実は、テンポが速い音楽を聴くと、運動のテンポも上がるという研究があるので、このゲームでは音楽も使ってボートを漕ぐのサポートしているわけですね。
結果
それでこの研究では次の4つの形式でHIITをやってもらっています
- ゲーム+音楽でHIIT
- ゲームのみでHIIT
- 音楽のみでHIIT
- ゲームも音楽もなしでHIIT
最後のゲームも音楽もなしのグループでは、ただ全力で漕ぐのと休憩の切り替えの指示のみがされることになります。
それで、これらの4つの方法で、運動の楽しさや辛さは次の表のようになりました。
ゲーム+音楽 | ゲーム | 音楽 | なし | |
運動の楽しさ | 5.4 | 3.8 | 3.4 | 2.9 |
運動の努力 | 5.4 | 3.8 | 3.4 | 2.9 |
運動のプレッシャー | 2.8 | 2.2 | 2.1 | 3.2 |
運動のつらさ | 13 | 12.1 | 11.4 | 14.8 |
この表から分かるのは
- ゲームと音楽のどちらを取り入れても、運動の楽しさが高まり、運動の辛さは軽減できる
- 特にゲームと音楽を合わせると運動の楽しさが大きく向上する
- 運動の辛さを軽減するだけなら音楽の方が効果は高い
ということ。HIITのようなかなり辛い運動であってもゲームは楽しさを与えてくれるということですね。しかし。まだHIITのゲームは身近にないと思うので、HIITを楽しみたい人はとりあえずテンポの速い音楽を聴くのが良さそうですね。
ちなみに運動のパフォーマンスの測定結果を見ても
- 音楽を取り入れた場合には、ボートを漕ぐパワーとスピードが少し向上していた
という結果も得られています。
なので、音楽はHIITの辛さを軽減するだけでなく、HIITのパフォーマンスも少し向上してくれるということですね。
まとめ
本稿では「HIITはゲームで楽しめるようになるのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- HIITにゲームと音楽を取り入れれば、運動が楽しくなるし、辛さも軽減される
- 音楽だけでも効果があるので、HIITをやるときにはとりあえずテンポの速い音楽を聴くようにすると良い
ということです。
私もHIITをすることがありますが、その辛さから始めるまでが億劫になってしまいます。どんなに運動の効果が高くても、続かなければ意味がないので、まずは音楽やゲームを使って運動を楽しむことを目指してみると良いでしょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : HIIT With Hits – Using Music and Gameplay to Induce HIIT in Exergames