自分と似たものを好きになるが、意外と大きな決断にも影響しているかもしれないという研究
人は自分と似ている人や場所、物を好きになる傾向があります。例えば、自分と同じ出身地の人に交換を持ちやすかったり、自分が小さい頃に過ごしていた場所に似ている場所を好きになりやすかったりという感じです。
これは「潜在的なエゴイズム」といって、人は基本的には自分のことを好きで、その自分のアイデンティティを思い出させてくれるものを無意識のうちに好んでいるんですね。
そして、この潜在的なエゴイズムは色々な場面で発揮されているのですが、モンゴメリー大学の研究では
- 自分と名前が似ているみたいな小さな潜在的なエゴイズムでも、引越し先や職業選択などの人生の大きな選択に影響を与えているのでは?
ということが調査されていました。
自分の名前と住所
まず最初にこの研究ではアメリカを対象に、人は州や町の名前が自分の名前に近い地域に好んで住む傾向があるのでは?ということを調べてくれています。例えば、Jacksonvilleという都市にはJackという名前の人の他の地域よりも多いのか?、といったことを色々な州や街で調べたわけですね。
その結果を見てみると
- 人は自分の名前と似た州や街に住んでいる傾向が確かにあった
(Jacksonvilleに住むJackさんは、平均値288人に対して436人いた) - 人は自分の名前と似た州や街に引っ越す傾向があった
- 各地域で似た名前の人は他の地域の平均よりも38%ほど多かった
ということ。
確かに自分の名前と似た地域を好きになる傾向があるようですね。その効果の大きさは比較的小さいものですが、統計的に有意ということで、名前が地域に似ているという小さな共通点が、自分の住む場所という大きな決断に多少の影響を与えている可能性があるわけですね。
ちなみに、他にも分かっていることがあって
- 女性の方が、自分と同じ名前の地域を好む傾向が強かった
- 珍しい苗字の人ほど、自分の名前と同じ地域を好む傾向が強かった
- 自分の誕生日の数字が含まれる地域名を好む傾向もあった
というこ傾向もあるということです。珍しい名前はそれが自分のアイデンティティにより強く結びついていると考えられるので、自分と似た名前を好きになる傾向も強かったのかもしれませんね。
自分の名前と職業
次のこの研究では、自分の名前と似た職業名を選びやすいのか?について調べています。例えば、Dentist(歯医者)にはDenisやDennyといった名前の人が多いのかと?、いった感じですね。
その結果としては、
- Dentist(歯医者)にはDenで始める名前の人が若干多かった
- Lawyer(弁護士)にはLaで始まる名前の人が若干多かった
- Geoscientist(地質学者 )にはGeorgeまたはGeoffreyが42%多かった
- Hardware Store(家具屋)にはHで始まる人がRで始まる人よりも80%多かった
- Roofing Company(屋根会社)にはRで始める人がHで始まる人よりも70%多かった
- Cで始まる会社のオーナーは、Chで始まる名前の人がShで始まる名前の人よりも23%多かった
- Sで始まる会社のオーナーは、Shで始まる名前の人がChで始まる名前の人よりも39%多かった
ということ。
名前と住む地域の傾向と同じで、どの職業でもその職業名と似ている名前の人が多いという傾向が確認されています。もちろん「自分はDennyだから、名前が似ているDentistになろう」と職業を決める人はいないと思うので、小さい頃に自分と名前の似ているDentistに少し興味を持ったとか、気づかないうちにどこかで小さな影響を受けているのかもしれませんね。
まとめ
本稿では「潜在的なエゴイズム」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 人は自分と似ている人や場所、物を好きになる傾向がある
- 名前が似ている程度の小さな共通点でも、住む場所や職業などの大きな決断に多少の影響を与える可能性もある
ということですね。
今回の研究はなかなか面白い関係に気づかせてくれる研究でしたね。もちろん自分と似たものを好きになる傾向が悪いわけではありません。あくまで人は無意識のうちにこんな影響を受けているんだな〜という感じで頭の片隅にでも置いていただければ幸いです。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Why Susie sells seashells by the seashore: Implicit egotism and major life decision