モチベーションはなぜ湧くのかに関する5つの理論
本稿のテーマはモチベーションです。
モチベーションは仕事でも勉強でも大切なもので、
やらないことは多いけどなかなかモチベーションが湧かないなんてことも多いですよね。
モチベーションを高めようと思ったら、モチベーションが湧く仕組みを理解することが大切です。
実はモチベーションが湧いてくる仕組みには様々な理論が提案されているんですね。
本稿では、その中でも主要な5つの理論を簡単に紹介します。
モチベーションを高めるテクニックもいいですが、その本質にあるモチベーションの仕組みを探っていきましょう。
①期待と価値理論
期待と価値理論がどのような考えかというと
- モチベーションは成功できる見込みがあるときに高まる
- だけど期待だけではダメで、そのタスクに価値を感じている必要もある
というものです。
成功の見込みは
- 達成基準(ゴール)
- セルフコンセプト
自分はそのタスクの分野にどれだけの能力を感じているか。
例えば、運動は得意など - 難易度
そのタスクの難易度がどのくらいか。
の3つの要素で構成されるということです。
つまり、適切な難易度のゴールで、自分の能力は十分だと感じているときに成功の見込みは高まるわけですね。
タスクの価値は
- タスクの重要性
- タスクへの関心の強さ
- かかるコスト
- 得られるもの、有益さ
の4つで構成されます。
成功の見込みがあっても価値のないタスクはモチベーションは湧きませんし、
逆に価値があっても成功できる見込みがないときもやろうとは思えませんよね。
成功の見込みと価値の両方を感じたときにモチベーションが高くなる!
という考えが見込みと価値の理論です
②帰属理論
帰属理論は
- 人は起きた出来事の結果を解釈して自分と結びつける
- 過去の出来事の解釈が将来の行動のモチベーションを左右する
というものです。具体的な例を挙げると、
英語のテストでいい点とった
→いい点取れたのは自分の努力のおかげで自分は英語が得意なんだと解釈する
→将来英語の勉強をもっとやるようになる(英語へのモチベーションが高まる)
というような感じ。
出来事の解釈の仕方には3つのポイントがあるとのこと。
①出来事の原因が自分にあるか?
例えば、試合に負けたときに、自分がミスしたせいで負けたのか、チームメイトのミスで負けたのかといったこと。良いことにしろ悪いことにしろ、出来事の原因が自分にあるかでどう解釈するのかが大きく変わります。
②その出来事は原因は変わりうるのか?
例えば、原因が努力不足なら努力すれば結果を変えられます。一方で原因が自分の性格だとしたら急に変えるのは難しいですよね。努力不足の場合には次はもっと頑張ろうと思えるかもしれませんが、変えられない原因の場合には諦めモードになってしまってモチベーションが湧かないということにもなりえます。
③その出来事の原因はコントロールできるのか?
例えば、出来事の原因が他人の行動であったり運であった場合には自分に変えられません。そんなときにはしょうがなかったという解釈で済ますことができます。
つまり
自分で努力して掴み取った成功体験が、将来のモチベーションになる。
逆に成功体験でも他人のおかげだったら解釈が変わって将来のモチベーションにはならないかもしれない。
ということですね。
③社会的認知理論
社会的認知理論は
- 人は個々の行動だけでなく社会的な相互作用からも学ぶ
という考えで、例えば他人の行動を見て学習するといったことですね。
モチベーションに関して社会的認知理論で重要なのが自己効力感という考えです。
自己効力感とは、自分ならうまくこの状況を対処できるという自分の能力に対する自信のようなものです。
自己効力感が高ければ行動に踏み出しやすいので、モチベーションも高まりやすいということですね。
この自己効力感が自分の行動だけでなく社会的な相互作用で高まるもので、
自己効力感は以下のことで高められると考えられているんですね。
- 達成経験(自分の成功経験)
- 代理経験(他人の成功経験)
- 言語的説得(励ましの言葉など)
- 生理的情緒高揚(薬物などで気分が高まること)
- 想像的体験(成功体験を想像すること)
- 承認(他人から認めてもらえること)
ということで、社会的認知理論では
モチベーションは個人的な行動や意識だけでなく社会的な相互作用でも高まる
というふうに考えているわけですね。
④マインドセット
マインドセットがどのような考えかというと
- 成長を重視する人と結果を重視する人の2タイプがいる
- この2タイプでモチベーションの持ち方が異なる
ということです。
成長を重視する人は
- 人の知性や能力は変えられると思っている
- 成功は努力からくるものと考えている
- スキルアップや成長を目標にする
- より困難なタスクに取り組む
- 失敗を学習の機会と捉える
という傾向を持つ人のことです。
一方で結果を重視するタイプの人は
- 人の知性や能力は変えられないと思っている
- 成功は才能から来るものと考えている
- 自分の能力を他人に認めてもらうことを目標にする
- 失敗はその人に能力がないからと考える
- 失敗を嫌い、困難なタスクを避ける
という傾向を持つ人です。
結果重視の人は一度つまずくと諦めてしまいがちなのに対して、
成長重視の人は成長の機会と捉えてモチベーションを維持して努力し続けることができるんですね。
つまり、学習のモチベーションを維持するには
結果でなく成長が重要!
能力は努力次第で変えていける!
と考えるマインドセットを手に入れることが大切ということですね。
⑤自己決定論
自己決定論は
- 誰かに決められて強制されるのではなく、自分で決めた目標の方がモチベーションは高くなる
というような考えです。
お金や報酬、強制力などの外から来るモチベーションでなく、
自分が好きだからという内面からくるモチベーションが大切ということですね。
自己決定論の重要な3つの構成要素は
①自律
自分の行動を自分で決めること。
あるいは他人と決めたことでも、自分で心からやりたいと思っていること。
②自信(自己効力感)
自分の能力に自信を持つこと。困難な状況でも自分ならできると思えること。
③人間関係
他人から理解されてサポートされているという感覚であったり、チームに所属しているというような安心感
これらの3つが内面からくるモチベーションを作るのに大切ということです。
まとめ
本稿ではモチベーションに関する5つの理論を簡単に紹介しました。
ポイントをまとめると
- 見込みと価値
成功できる見込みとタスクに価値を感じていることが大切 - 帰属理論
過去の出来事の解釈が将来の行動を変える
自分の努力で成功を掴み取った経験などが大切 - 社会的認知理論
社会的な相互作用も大切
他人の成功経験や承認、励ましの言葉もモチベーションを高めてくれる - 成長マインドセット
結果でなく成長を重視することが大切 - 自己決定論
自分で心からやりたいと思えることが大切
ということですね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
Motivation to learn: an overview of contemporary theories