マインドワンダリングは簡単なタスクと難しいタスクのどちらで起きやすいのか?
マインドワンダリングとは、行なっているタスクと関係ないことが頭に浮かんでしまうことです。例えば、仕事中に「今日のお昼は何を食べようかな〜」とか考えちゃっている状態ですね。
マインドワンダリングは自分の意識の外で起きてしまうものなので、コントロールすることも難しいです。つまらない講義を聞いているときなんかは、どうしても集中力が散漫になって関係ないことを考えてしまうものですよね。
そこで、マインドワンダリングがどんなときに起きやすいのかを把握しておくことは大切で、メンフィス大学の研究(*1)では、
- マインドワンダリングは簡単なタスクと、難しいタスクのどちらで起きやすいのか?
について実験してくれていました。本稿ではこの研究を参考に、マインドワンダリングを考慮してタスク管理をうまく行なっていく方法について学んでいきましょう。
マインドワンダリングとタスクの難易度
マインドワンダリングが簡単なタスクと難しいタスクのどちらで起きやすいのかについては、2通りの考え方があります。
- ①簡単なタスクの方が起きやすいという考え
簡単なタスクは使用する頭のキャパシティが少ないので、余ったキャパシティを使って頭が関係ないことを色々と考え出してしまうという説。例えば、ほとんど自動的にできるような単純作業でマインドワンダリングが起きてしまうのはこちらの考えですね。
- ②難しいタスクの方が起きやすいという考え
難しいタスクでは、複雑な情報を頭の中で処理して解釈しなければいけないのですが、難易度が高すぎるとうまく解釈ができずに、頭の中が「?」と思考停止してマインドワンダリングが起きてしまうという説。やたら難しい講義を聞いたときに全然頭に入ってこなくてマインドワンダリングが起きてしまうのがこちらの考えですね。
もちろん、どちらか一方だけが正しいというわけではなく、ちょうど良い中間の難易度でマインドワンダリングが起きにくいということも考えられます。
文章の解読タスクの実験
メンフィス大学の研究(*1)では、文章の解読タスクを使用して、タスクの難易度とマインドワンダリングの起きやすさを実験しています。このタスクでは
- 簡単な文章4つ
(頭の中ですんなりと理解ができるレベル) - 難しい文章4つ
(文章の意味やつながりがすぐに理解できないレベル)
の合計8つの文章を読んでもらい、文章の理解度テスト合計36問に答えてもらっています。各文章を読み終わった後では、その文章をよんでいるときにマインドワンダリングが起きなかったか?についても答えてもらって、マインドワンダリングの頻度の測定もしています。
そして、これらの測定値から
- 簡単な文章と難しい文章のどちらでマインドワンダリングは起きやすいのか?
- マインドワンダリングが起きたときに、文章の理解度はどのくらい低下してしまうのか?
を分析しています。
結果1:簡単な文章 vs 難しい文章
まず、簡単な文章と難しい文章のどちらでマインドワンダリングが起きやすかったのかというと、
- 難しい文章の方がマインドワンダリングが1.24倍起きやすかった
という結果が得られています。
難しい文章は、ぱっと見ただけでは文章のつながりやその意味が分からないレベルの難易度になっているので、それだけ難しいとマインドワンダリングも起きやすくなってしまうようです。
ちなみに、簡単な文章でもマインドワンダリングは36%の割合で起きてしまっているので、簡単なタスクでマインドワンダリングが起きるという考えも間違いではなさそうです。
結果2:マインドワンダリングと文章の理解度
マインドワンダリングが発生したときに文章の理解度テストのスコアがどのように変わったのかが次のグラフです。
白い棒グラフがマインドワンダリングがなかった場合の理解度、
黒い棒グラフがマインドワンダリングがあった場合の理解度を示してます。
左の2本が簡単なタスクの理解度の比較で、右の2本が難しいタスクの理解度の比較になっていて
- 簡単なタスクでは、マインドワンダリングが発生しても、理解度テストの点数はほとんど落ちなかった
- 難しいタスクでは、マインドワンダリングが発生したときに、理解度テストの点数が有意に落ちてしまった
という面白い結果になっています。
なので、マインドワンダリングで特に悪影響があるのは、難しいタスクで理解が追い付かずに注意散漫になって他のことを考えてしまうケースということですね。
これはタスク管理にも活かすことができて、例えば勉強で難しい本を読まなければいけないときは、疲れがなく十分に集中できる状態で行った方が効率が良いでしょう。一方で英単語の復習のような簡単なタスクは、電車の中や疲れがたまったときなど100%集中ができない状態でも良さそうです。
まとめ
本稿では「マインドワンダリングとタスクの難易度」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- マインドワンダリングは簡単なタスクでも起きるが、すんなり解釈できない難しいタスクの方が1.24倍起きやすい
- マインドワンダリングが起きると、簡単なタスクの理解度は変わらずキープできるが、難しいタスクの理解度は有意に低下してしまう
ということですね。
午前中に集中して難しいタスクを行なって、午後はマインドワンダリングしながらでも簡単なタスクをこなすとかの工夫をすると良いでしょう。できる見込みがある簡単なタスクから手を出したい気持ちを抑えて、集中できるときはしっかりと難しいタスクに挑戦していきましょう。
また、人によってタスクとの相性や好き嫌いによってもマインドワンダリングが起きやすい起きにくいがあると思うので、それらも考慮してタスク管理ができると効率がグッと上がるでしょう。
[参考文献]