リスクのある決断とやめる決断をするための心理学の豆知識
本稿はいい決断をするための心理学の豆知識2つを紹介したいと思います。
一つ目はリスクのある決断をするときに役立つ知識
二つ目は続けるのか止めるのかの決断のときに役立つ知識
の2つです。
それでは1つ目からいきましょう。
リスクのある決断と感情
リスクのある決断をするときには成功したときの結果を失敗したときの結果を天秤にかけますよね。
例えば、新しい仕事に転職しようかと考えるときには
成功したときの結果:年収が上がる、もっと働きがいのある仕事ができる
失敗したときの結果:年収が下がってしまう、残業が多くなってしまう
などです。
このような決断をするときには失敗のコストと成功で得られる利益を比べれば、良い決断ができるわけです。
しかし、実際には論理的な計算で冷静に決断できるという人は少なく、感情面が決断に大きく作用しますよね。
先の例で言えば
年収が上がるもっと楽しい仕事がしたいという高揚感で転職を決断する人や
逆に年収が下がるかもしれないという恐怖で転職がなかなかできない人
がいるわけです。
好奇心と恐怖心が決断をどう変える?
好奇心は決断の先のポジティブな結果と強く結びつく感情で、
恐怖心は逆にネガティブな結果と結びつく感情です。
この好奇心と恐怖心がどのように決断に影響を与えるのかを調べてくれた研究(*1)によると
- 好奇心が強い人ほど決断時にポジティブな結果の方を強く感じる
→ポジティブを追い求める決断をしやすい - 恐怖心が強い人ほど決断時にネガティブな結果の方を強く感じる
→ネガティブを回避する決断をしやすい
ということなんですね。
さらにこの研究では恐怖を感じる映像を見た後で決断の傾向がどう変わるのかも調べていて、
- 恐怖を感じるとネガティブな結果が起きる可能性をより高く感じた
- 恐怖を感じるとネガティブな結果のコストもより大きく感じていた
とのこと。
ということで決断をする際には、恐怖心からネガティブな結果を過剰に感じて、
失敗を回避することを重視してしまっていないかを考えると良さそうですね。
続けるか止めるかの決断と埋没費用(サンクコスト)
埋没費用(サンクコスト)とはこれまでに投入してきた時間やお金などの費用のことで、実は人には埋没費用があるとその行動を続けてしまうバイアスがあるんですね。
例えば、ダイエットしてるけどすでに買ってしまったポテチはもったいないから食べてしまうとか、残り20%まできた仕事をもう必要なくなったとしてもせっかくだから完成させたいっていう感じのこと。
埋没費用のバイアスにひっかかると、止めるタイミングを間違えて無駄にお金や時間を投入し続けてしまう危険があるんですね。
どんな人が埋没費用に引っかからないのか?
埋没費用のバイアスに引っかからずに、うまくやめるか続けるかの決断をできる人がどんな人かを調べてくれた研究(*2)によると
- 過去の出来事に引きずられずに自分の考えや行動を変えられる人は埋没費用に引っかかりにくい
- 逆に過去の出来事をくよくよ考えがちで考えや行動をあまり変えない人は埋没費用に引っかかりやすい
ということです。
まあ言われてみると当たりませかもしれませんが、どんどん行動や考えを変えていける人の方が、過去にこだわらないので埋没費用にも引っかかりにくいんですね。
埋没費用に引っかからないために
続いてどうすれば埋没費用の罠を避けることができるのか?についてある研究(*3)で面白い結果が出ていました。
この結果によると、
- 続けるかやめるかを決断する状況において、改善のために何をするべきかを考えてもらうことはあまり意味がなかった
- 続けるかやめるかを決断する状況において、感じていることや考えを書き出してもらった人はうまくやめる決断をする確率が上がった
ということなんですね。
やっぱり頑張って続けるほど感情的にやめたくない気持ちが強くなることもありますから、埋没費用の罠を避けるためには、そのときに自分が感じている感情面もしっかりと見てあげることが大切みたいですね。
まとめ
本稿では決断をうまくするための心理学について知識を紹介しました。
ポイントをまとめると
- リスクのある決断をするときは、恐怖心から失敗の回避を重視しすぎないようにする
- 続けるかやめるかの判断では埋没費用の罠に引っかからないように、感情や考えを書き出すとよい
- 埋没費用の罠は自分の行動や考えを変えていける人ほど引っかかりにくい
ということですね。
大きな決断ほど感情も深く絡んできますから、こうした心理学の知識を活かしていけるともっといい決断ができるのではないでしょうか。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1: Motivationally selective risk judgments: Do fear and curiosity boost the boons or the banes?
*2: Who throws good money after bad? Action vs. state orientation moderates the sunk cost fallacy
*3: What Were They Thinking? Reducing Sunk-Cost Bias in a Life- Span Sample
自分の考えや行動を