セルフトークで自己コントロールも上手くなるのか?の研究
セルフトークとは自分自身に話しかけることで、スポーツの世界でよく使われるものです。マラソン中に「まだまだいける」と自分自身を励ましたり、バスケットボールで「左手は添えるだけ」みたいに技術的な注意点を自分で呟いたりと言った感じですね。このとき実際に声に出してもいいですし、心の中で呟くだけでもOKです。
スポーツでセルフトークをすることには、粘り強さを向上させたりしてパフォーマンスアップにつながることがわかっていますが、このセルフトークを自己コントロールに応用できないかを調べてくれたのがミネソタ大学の研究(*1)です。
例えば、ダイエット中にケーキを目の前にしているときに「俺はケーキを食べたいのか?」といったセルフトークをすれば、自制心が取り戻せて適切な選択ができるのではないかということですね。
本稿ではこの研究を参考に、誘惑に打ち勝つセルフトークについて学んでいきましょう。
セルフトークと自己コントロール
この研究ではセルフトークとして2種類の方法を使っています。
- 一人称のセルフトーク
「私は何がしたいのか?」と主語を”私”でセルフトークをする - 遠距離のセルフトーク
「(自分の名前)は何がしたいのか?」と主語を”自分の名前”でセルフトークする。例えば、自分の名前が太郎なら「太郎は何がしたいのか?」という感じ。
遠距離のセルフトークでは、主語を自分の名前にすることで、第三者の客観的な視点から自分を見つめることができるわけですね。この視点の違いによって選択肢の見え方がだいぶ変わってくるもので、例えば目の前にケーキがある場合には、主観的な視点に立つと「ケーキは美味しいから食べたい」という気持ちが先行してしまいますが、客観的な視点に立つと「ケーキはカロリーが高いから食べない方いいよ」と他人にアドバイスするときのような見方ができるようになります。
さらにこの研究では事前に健康への意識が高まっているかどうかでも、セルフトークの影響は変わることも想定していて、
- 事前に健康に関する動画を見た場合
- 事前に健康に関係ない広告動画を見た場合
の2通りの場合で、セルフトークの効果が変わるのかも検証しています。
具体的な実験方法としては
- 244人の参加者に健康に関する動画か、健康に関係ない動画のどちらかを見てもらう
- 健康に良い食品と健康に悪い(けど美味しい)食品のどちらを選ぶかの選択問題を、一人称のセルフトークで20回、遠距離のセルフトークで20回行ってもらう
という感じになっています。さらに、この研究では参加者が今ダイエット中かどうかも答えてもらって、分析の対象データとして活用しています。
結果
早速結果を見てみると、
- ダイエット中の人は事前に健康に関する動画を見た場合にのみ、遠距離のセルフトークで健康に良い食品を選ぶ回数が増えた
- ダイエット中でない人は事前に見た動画の種類に関わらず、遠距離のセルフトークで健康に良い食品を選ぶ回数が増えた
ということ。
つまり、基本的には遠距離のセルフトークで自己コントロールがうまくなることが確認されていて、ダイエット中なら健康意識を高める活動もプラスして行うと良いということですね。ダイエット中の人は、カロリー制限をしている分だけ、一層不健康な食品の誘惑が強くなるので、セルフトークに加えて健康意識を高めることが必要なのかもしれませんね。
まとめ
本稿では「セルフトークでセルフコントロールが向上するのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 客観的な視点に立つ遠距離のセルフトークで、セルフコントロール能力は向上する
- ダイエット中である場合は、遠距離のセルフトークに加えて、動画を見るなどして健康意識を向上させると良い
ということですね。
遠距離のセルフトークは、食べ物の誘惑に負けそうなときに「(自分の名前)は何がしたいのか?」と問いかけるだけの簡単なテクニックなので、それで良い選択が増えるのであれば嬉しい限りですね。
食べ物の誘惑以外にも、ネットフリックスを見すぎているときや、運動をサボりそうな時など、自己コントロールが必要なときはセルフトークで自分が何をするべきかを問いただしてみる良いかもしれませんね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Distanced Self-Talk Enhances Goal Pursuit to Eat Healthier