HIITはボリュームを増やすほど、抗炎症やBDNFの健康効果が高まるのか?
運動をしたいけど、時間がない。
この悩みを解決してくれるのがHIIT(高強度インターバルトレーニング)です。
HIITが何か?というと、
- 最大心拍数の85%以上を発揮するような高強度の運動
- 数十秒の運動時間と数十秒の休憩時間を交互に何セットか行う
という特徴のトレーニング方法になります。
例えば、30秒の全力疾走と30秒の休憩を交互に8セット繰り返すとかがベタな方法。合計時間はたったの8分。なんとこれだけの運動でも健康効果はあって
- 運動後に20分ほど脂肪が燃焼し続ける(アフターバーン)
- 体の炎症が軽減される
- BDNF(脳由来神経成長因子)が増えて、脳が成長する
などなど、コスパが最強の運動とも言えるでしょう。
本稿で注目するのは、「HIITは短時間で健康に良いもの、それじゃあHIITを長くやればもっと健康にいいのか?」という点です。サンパウロ州立大学の研究(*1)を参考に、この疑問について調べていきましょう。
HIITのボリュームと健康効果
サンパウロ州立大学の実験では
- 全力ダッシュ1分と休憩1分のHIIT
を行うのですが、この時に参加者は2つのグループに分けられています。
- HIIT1.25グループ
合計で1.25km走るまでHIITを続けるグループ。
セット数でいうと大体5〜6セットで、時間では休憩と合わせて10分ほど。 - HIIT2.50グループ
合計で2.50km走るまでHIITを続けるグループ。
セット数でいうと大体11〜12セットで、時間では休憩と合わせて20分ほど。
2つのグループで運動のボリュームは2倍の差がついているので、この差が健康効果に影響するのかを調べたんですね。この研究が注目した健康効果として
- 抗炎症効果
(血中の抗炎症物質であるIL-6、IL-10、MCP-1を測定) - 脳の成長効果
(BDNFの量を測定)
の2つを測定しています。
ちなみに、慢性炎症と言って、食事や睡眠、運動などの生活習慣が乱れている人は、体内でじわじわと慢性的な炎症が起こってしまっています。慢性炎症は様々な生活習慣病の原因となる悪いやつで、HIITで炎症を抑えることができるのはとても大切な健康効果の一つだと言えます。
結果1:HIITのボリュームと健康効果
早速、HIITの運動距離の違いによる抗炎症効果の差を見てみると、
- IL-6はどちらの運動距離でも同じように向上していた
- MCP-1はどちらの運動距離でも同じように向上していた
- IL-10だけは運動距離が長い方が大きく向上していた
ということ。
一部の抗炎症物質は運動量が多い方が良いと言う結果になっていますが、基本的にはHIITのボリュームは少なめでも十分な抗炎症効果は得られると考えて良いでしょう。
結果2:HIITのボリュームと脳の成長効果
続いて、HIITの運動距離の違いによる脳の成長効果の差を見てみると、
- BDNFはどちらの運動距離でもほぼ同じくらい向上していた
ということ。
抗炎症効果と同じで、脳の成長にもHIITのボリュームはあまり関係ないという結果になっています。これはありがたいですね。
ちなみに他の研究結果では、たった1分の全力運動でもBDNFが向上した結果もあるということ。HIITは運動の種類を問わないのも良いのもいいところです。家でもできる1分間全力バーピーとかなら、習慣として続ける自信が湧くのではないでしょうか。
まとめ
本稿では「HIITのボリュームと健康効果」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 一部の抗炎症効果はHIITのボリュームが多い方が効果が高くなる
- しかし、HIITのボリュームが少なくても他の抗炎症効果やBDNFの向上効果は十分に効果が得られる
ということですね。
もちろんHIITの効果はこの2つ以外ではないので、それらがボリュームの影響を受けることはあるかもしれないです。しかし、HIITが少量でも健康効果がグッと高いのは間違いないので、時間がない人でも少しずつ取り入れてみると良いでしょう。
また、やってみるとわかるのですが、HIITは強度が高いのでやってみると結構辛いものです。なので、8セットとかをやろうとすると結構心理的なハードルが高くなって、鋼のメンタルがないと習慣として定着しづらくなってしまうかもしれません。そんなときは、とりあえず1セットだけは頑張ろうを習慣として続けることをオススメします。
[参考文献]