最近の日本は個人主義の国なのか?集団主義の国なのか?
沈没船のジョークをご存知でしょうか?
沈没しかけている船で、ボートが足りない状況。不安がっている乗客を海に飛び込ませるためには、どんな言葉をかければいいのか?
アメリカ人には「飛び込めばヒーローになれますよ」
イギリス人には「紳士ならこういうときに飛び込むものです」
ドイツ人には「飛び込むのが規則になっています」
国民性によってかけるべき言葉は違います。
それでは、日本人はどうか?
日本人には「周りの人もみんな飛び込んでますよ」
周りの目を気にする日本人の国民性を捉えたおもしろジョークですね。
しかし、国の文化も時代とともに変わるもの。かつての日本が集団主義だったのは間違いありませんが、経済が発展し、西洋の文化が多く取り入れられた現代では、日本の集団主義の文化も変わりつつあるかもしれません。
そこで本稿では、
- 日本は時代の変化とともに個人主義になっているのか?
について、京都大学の研究(*1)を見てみましょう。
現代の日本の個人主義なのか?
結論から言うと、
- 日本は年々個人主義が強まっている
と言えます。
それにはいくつもの根拠があって、
- 経済が大きく成長した
経済的な豊かは個人主義を加速させる要因となり得ます。経済が豊かになるほど選択肢が増えて一人でも自由に生きられるようになるからですね。日本は1950年あたりから急激な経済成長を遂げているので、これが個人主義の追い風となっている事が考えられます
- 離婚率が高まって、世帯の人数が減った
1947年から2015年の間で、離婚率は8.5%から35.6%に高まっています。さらに、1世帯の人数も1953年から2015年の間で平均5人から平均2.5人に減っています。核家族が増えたり、出生率が低下したりで、生活の基盤となる集団がどんどんと小さくなっているわけですね。ちなみに個人主義大国のアメリカの離婚率は50.1%で、半分は離婚する見たいです。
- 赤ちゃんの名前が多様になっている(さらに、犬の名前も多様になっている!)
赤ちゃんの名前の多様性もその国の個人主義と相関することがわかっています。日本の赤ちゃんの名前の統計を見てみると、特別な読み方の個性的な名前が近年増えている事がわかっています。例えば、”海”とかいて”マリン”と読むみたいな感じ。同様にペットの犬につける名前を見ても、個性的な名前が増えているんですね。
- 新聞の言葉が個人主義寄りになっている
1875年から2015年までの新聞で使われている言葉の統計をとると、”私たち”や”みんな”といった集団主義的な代名詞が減って、”私”や”自分”といった個人主義的な代名詞が増えている。さらには、”個人”や”独自”といった個人主義寄りの単語の出現頻度も増えている事がわかっています。
- 社会の価値観が個人主義になってきている
昔の日本では”従順”な良い子であることが好まれたのに対して、現代では”自立すること”が重視されるようになっています。さらには、家族よりも仕事を選ぶ人が増えているなど、個人主義的な考えが加速していることが分かっています。
というような感じで、いくつもの側面から日本で個人主義が強まっていることが確認されています。
日本の集団主義は消えたのか?
それでは、日本は完全に個人主義になって、集団主義は消えてしまったのかというと、そうではありません。自分の生活を振り返っても、まだまだ周りの目を気にしている国民性が残っている場面がいくつも思い浮かぶのではないでしょうか。
今の日本は個人主義と集団主義が両方とも存在している状態。そして、ときにはこの2つの摩擦を起こして、問題となってしまうんですね。
例えば、
- 日本で独立して成功しようという人は、友達の数を減らして、幸福感の低下を招いてしまう。(アメリカでは、独立して成功しようとしても、友達は減らないし、幸福感も低下しない)
- 日本でユニークさを大切にする人は、収入や人生の満足感、人間関係の満足感が低い傾向がある。
という事がわかっています。
つまり、今の日本でどんな事が起きているのかをまとめると、
- 日本では個人主義が強まっていて、自立することや自由であることの価値が高まっている。しかし、集団主義も残っていて、個性的な人ほど人間関係の輪を乱すと考えられて、敬遠されてしまう。
ということですね。
まとめ
本稿では「今の日本は個人主義なのか?集団主義なのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 日本は段々と個人主義が強まってきている!
- しかし、集団主義も根強く残っていて、個人を押し出す人は集団の輪を乱す人だと思われていまいがち。その結果として友達が減ったり、幸福感が低下してしまうこともある。
ということです。
文化は時代とともに変わっていくもの。仕事にしても生活にしても、その進化の方向性を知って、新しい文化に適応していくことが大切なのかもしれませんね。
[参考文献]